山谷で生きるおじさんたちの支えとなり、
おじさんたちと共に生きる仲間となり、
おじさんたちが安心できる居場所でありたい。
そんな私達が支援している「おじさん」たちを多くの方に知っていただきたいと思い、「おじさん100人リレー」としてご紹介させていただきます。
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おじさんVol.1
クローバー名人 丸茂さん(仮名、65歳)
丸茂さんは東京の下町生まれ。高校を卒業後に仕事を始め、繊維街、中華料理屋、印刷会社などで働いてきたが、仕事にはとてもつらい思い出がたくさんある。不当な労働条件で仕事を続けられなくなることもあった。人に裏切られたり人を信じられなくなることもあった。
「悪いことしかない。どんないいコトしても。」と丸茂さん。「猫もこんなになってしまった。」とテントで世話をしている猫に頬釣りをしている。猫のクロちゃんとは、5年前からのつきあい。クロちゃんは最近河川敷のテラスで自転車にひかれ、まともに歩くことが出来なくなってしまった。クロちゃんは通行人に対して怯えた目をしているが、おじさんにはとても懐いている。
丸茂さんは長い間東京の実家を離れて仕事をしていた。そのため実家に戻った時には既に他の人が住んでいた。母は丸茂さんが若い頃に病気で他界し、父や兄弟の連絡先はわからないまま今に至る。
丸茂さんは路上生活を初めて約17年。
山谷に来る前は上野で路上生活をしていた。河川敷でのテント生活は風が強いこと、2ヶ月に1度は刈り込みによって荷物をまとめる必要があることが大変だという。公園の掃き掃除の仕事をしているが、毎日仕事が得られるわけではないため収入はわずか。それでも丸茂さんはいつも淡々とした口調で、穏やかに話をしてくれる。
「食べなくても全然大丈夫だから。寝ないでも大丈夫。だからね、“奇人、変人”ってみんな言うんだよ。」と誇り気な顔で笑う丸茂さん。
「猫に500円、自分には100円。」わずかな収入は、自分のためでなく、自分と共に生きる仲間へ使われる。
丸茂さんの周りには、友だちが遊びにくるみたいに動物が近寄ってくる。丸茂さんはいつも楽しそうに動物の話をしてくれる。
「ほら、今喋ったよ。“おかえり”って何でも真似するんだ。最近喋らなかったからどうしたかと思ってた。」と話すのは近所のアパートで飼われているオウムのこと。
「ちいさいのにやりたいのに、おっきいのがぜーんぶ食べちゃう。」
大きなハトが餌を全部食べてしまうので、小さなスズメがご飯を食べれないと心配している。
丸茂さんと会話をしていると、生き物すべてに対しての気遣いや優しさを感じて平和な気持ちになれる。
「どんなに良い事しても、みんな悪いことで返ってくる。でも動物は裏切らないから。」と丸茂さん。将来の希望について聞くと、「犬を飼いたい。」と話してくれた。
丸茂さんは、四つ葉のクローバーを集めて素敵な作品を作っている。人に会うと、名刺代わりのようにクローバーの作品をプレゼントしてくれる。「1000枚集まったら作るんだ。」と摘んだクローバーを1枚1枚丁寧に挟んだ本を見せてくれた。
「昔はお酒が楽しみなこともあったけれど、今はクローバーを集めることが楽しみ。」1年で千枚集めることも難しい四つ葉のクローバーを、丸茂さんは5年間で1万枚集めたそうだ。
インタビュー後、丸茂さんがクローバーを集めに行くとのこと。テントから河川沿いに歩いて15分、土手の斜面にはクローバーが生い茂っている。クローバーは4つ葉だけでなく、6つ葉や7つ葉などもある。大きい葉のものもあれば小さいものもある。丸い形のものがあれば尖っているものもある。
丸茂さんが手にしたクローバーには、穴が開いていた。クローバーを指さしながら、「これは虫が食べたんだよ。全部の葉っぱにきれいに穴が開いているでしょ。」と、クローバーの1つ1つ、すべてが違っていて、すべてに良さがあることを教えてくれた。
クローバーの作品を「本当は障害者にあげたいんだ。」と言って、丸茂さんは穴の開いたクローバーを丁寧に本に挟んだ。
●丸茂さんからの読者のみなさんへのメッセージ
丸茂さんに、メッセージをお願いすると、得意な絵を描いてくれた。
ヨークシャテリアの絵の意味を聞くと、「幸せの『よつ葉』と『よーく』」とを重ねているのだと。
良いことがありますように。
『元気で頑張ろうよ!』と、丸茂さんからのメッセージです。
インタビューを終えて、丸茂さんからまた勇気をいただいた。
丸茂さん、どうもありがとうございました!
(※掲載内容について、おじさんの了承を得ております。)
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☆ おじさんへ応援メッセージを届けます ☆
ブログのコメント欄にて、おじさんへの応援メッセージをお願いします。
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