中原中也にとっての故郷 | 上質なことばで名作を楽しもう

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            これが私の故里だ

            さやかに風も吹いてゐる

                 心置きなく泣かれよと

                 年増婦の低い声もする        『山羊の歌』 帰郷

 

 

だれしも故郷を持っている。

そして、それに対する思いは、時の経過と、積み重ねた経験とにより

様々でありましょう。

 

中也の書く故里からは、とてもじゃないが、浮かれた雰囲気は感じられ

ません。

 

私は故郷を遠く離れて生活したことが数年ありましたが、帰郷するたびに

ある種の安らぎを、少しだけ感じていました。

 

この詩の末尾にあるように、中也は故里から拒絶されるものを感じていた

のでしょうか。

それとも遠く離れた場所での苦労の日々を慰められているのでしょうか。

 

           あゝ おまへはなにをして来たのだと・・・・・・

           吹き来る風が私に云ふ