簡単に人の尊厳が奪われる世の中だ…。
「手で切れます」と書いてあるのに、
パッケージを手で切る事が出来なかった俺は、
挫折してハサミで手首を切った方が良いのか、
袋を切るのが正解なのか、一瞬迷った。
人は、人の尊厳を奪うのが得意だ。
いつだってそれが最高の退屈しのぎ。
それを娯楽にしてきた社会と歴史、文化がある。
先日、たかし君には、
飲み屋で知り合った二十代の女から、
「携帯を落として壊れたので、二万円をください」
と、ラインが来たそうだ。
おそらく、この子は、
人の尊厳というものを知らずに、
奪われ続けて生きてきたのだろう。
流石のたかし君も、この申し出が、
エッチな事が出来る投資に値するか悩んだようだ。
その結果、
二十代の女三人と、バーベーQをする事になった☆
何故か、相手の胸の大きさだけが先行して伝えられる。
「相手はFカップとHカップがいる。Fカップだからフェニックスと呼ぼう♪」
と、たかし君はやる気満々だ。
「Hカップは水着で泳ぐって言っているし、男を持ち帰る気らしいぞぉ!」
と、キャンプに行く子供のように意気揚々だ。
かくして、おっさんと小娘の戦いが始まる。
簡単に人の尊厳が奪われる世の中だ…。
俺は今日、見ず知らずの二十代の女の為に、
バーベーQ用の肉を買いに行った。
「良い肉が食べたい」
「眼鏡をかけたおっさんが好きだから、眼鏡をかけてきて欲しい」
それが対戦相手の要求だ。
かたや、たかし君は、
「俺の名前は呼ぶな。相手にばれるとやばい。偽名を使う。
俺とお前はその日初めて会った感じでいこう。
…両腕をもがれてもリングに上がる気分だぜ」
と、謎のハンディマッチに挑むつもりで闘志を燃やす。
俺の心は…。
毎日、変わるものが、
上下する株価と更新されるエロ動画だけだと思っていた。
明日の自分に何を期待して良いのか?
理不尽を飲み込んで神経を擦り減らし、
人の尊厳を失いながら大人になっていく。
失ったものの代わりが、大人の余裕?
俺には虚無だ。
大人になって気付いた事、
それは、
セッ○スをすると意外と疲れるという事だ★