こんなに超有名な山野草なので、いろいろな書物に詳しく解説がされています。

 でそれらから書きためたものがあるので、今年出会って写真に撮ったものと整理しました。今年は場所と時期(猛暑で花の時期もずれている)がぴったりでした。

 湿原の木道でもいっぱい見れました。

 

 

 「トリカブト」です。  漢字では「鳥兜」です。

 キンポウゲ科、トリカブト属の多年草です。

 

 そもそもトリカブト属は北半球の各地に300種ほどあり、日本にも約40種もあるので、日本はトリカブトでも大国です。 トリカブトの花を見て名前をすぐに同定できる人は「天才」に見えます。よく似ていて図鑑でも分かりません。解剖しないとダメです。科捜研レベルです。

 

 

 この花も秋の定番ですが、一番記憶に残っているのは以前に加賀の白山へ行ったときにその登山道を見事に飾っていたトリカブトが強烈で今も鮮明に覚えています。

足元にはキノコがいっぱいで、猛毒ロードでした。あの時はヘビにもあったし・・(⇒山で出会った不思議な人々に書きました)

 その次は、東北の山々でのトリカブト、焼石岳、秋田駒ヶ岳、鳥海山、森吉山などですけど・・・

 まぁ、北アルプスでも上信越国境で、八ッでも、奥秩父でも・どこでも会えます。

 

 

 ここからは、自分のメモとヤマケイの「日本の高山植物」からの引用が多くなります。この図鑑に掲載されているのは「エゾホソバトリカブト」、「ヒダカトリカブト」、「ダイセツトリカブト」、「ウスバトリカブト」、「リシリブシ」、「セイヤブシ」、「タカネトリカブト」、「リョウハクトリカブト」、「ハクバブシ」、「ナンタイブシ」、「ホソバトリカブト」、「オオサワトリカブト」、「ヤチトリカブト」、「キタダケトリカブト」、「ミヤマトリカブト」、「ミョウコウトリカブト」、「キタザワブシ」、「エゾノレイジンソウ」、「オオレイジンソウ」などがあります。

 

 

 トリカブトの仲間は日本各地にいっぱいです。

 詳しい分類などは、ヤマケイ「日本の高山植物」にあります。

 日本のトリカブト属は青紫色のトリカブト亜属と、淡黄色や淡紅紫色の花のレイジンソウ亜属があるそうです。

 このレイジンソウ属を独立の属として扱う見解もあるそうです。

 今年は「アズマレイジンソウ」についてアップしました。

 

 

 何といってもこの「猛毒」をもっいるのでトリカブト属は有名です。

漢方では「烏頭(うず)」とか「付子(ぶし)」というのはトリカブト属の根を減毒したもので様々な薬効があります。 

 上から下まで全草有毒です。

 毒はアコニチン系のアルカロイドで、「アコニチン」とか「メサコニチン」「ヒパコニチン」などです。

 

 

 花の無い時期、春の葉の出る時期に山菜と思い食べると大変です。

 みんな大好きな「毒草」の代表取締役です。

 特に、「日本三大毒草」の勲章をもっています。ちなみに他のは「ドクゼリ」と「ドクウツギ」だそうです。でも他の2つはそんなに騒がれません。 

 なので、三大毒草の中の親分格です。

 推理小説でも使われ有名になったり、昔、毒矢に塗って敵や獣に射ったとも言われています。

 

 

 植物の多くに毒があります。もちろん毒にも色々な種類がありますが、アルカロイド系のものが多いように思います。そして、毒の使い方では、ヒトにとって「薬」になっていることも多いのです。そして、ソワソワ、ドキドキ・・でもみんなこの毒が大好きなようです。

 

 

 この花、もとは江戸時代に薬用として連れて来られました。

 漢方の「附子」で、薬効は鎮痛・強心・抗リュウマチ・・

 舌や唇が痺れ、次には手足がしびれ、さらに嘔吐、腹痛、下痢、血圧低下・・

 そして心臓麻痺や呼吸不全に陥るようです。 怖っ・・・。

 

 

 トリカブト属の複雑さはこの各部の形、大きさがその生育環境の違いで変化があり、かなり狭いエリアの中でも特徴ある変化を見せるものがあるそうです。また、種間での交雑も多くますます分かりにくくなっているそうです。

 

 

 葉っぱは掌状に大きく5~7つくらいに裂けています。葉の主脈がくっきりと見えています。 葉の両面や葉柄に屈毛があります。

 葉っぱにも特徴があります。この切れ込みの具合で判別する場合もありますが、いずれも個体差や変種が多くプロ並みでないとなかなか難しいようです。

 

 

 

 花の構造は複雑です。

 外見では、花びらのように見えるのは「萼」です。 萼片が5つです。

 トリカブトの名前のもっとも象徴するのが一番上の兜のような「頂萼片」です。この頂萼片」の中に雄しべと雌しべがあります。

 雄しべはたくさんあり、雌しべは3つです。 

 雌しべは3つが多いのですが、4、5もあるらしいです。

 

 

 そもそも、日本のトリカブトは紫色が多いのですが、白や黄色、ピンクあるそうです。山では青紫以外は見た覚えがありません。

 

 本来の花びらも2つ残っています。雄しべや雌しべのもっと奥にあり、今の役目は「蜜を出す」器官になっています。 まだ進化の最中なのかもしれません。 

 近くでたまたま咲いているのがあり、ラッキー。

 思いっきりアップで撮りました。 

 

 

 花は複雑怪奇な構造なので、これもはり図鑑の説明を引用するしかありません。

 この花で一番目立つのが青紫色のいかにも花弁のように見えるものですが、キンポウゲ科らしく、これは萼片です。でも、花びらはその中にしっかりありますが、外からは見えません。これがまず不思議です。花びらは虫たちを呼ぶのに大切な役目をもっていますが、それをわざわざ隠して、5枚の萼片で包んでいるのです。一番上にあるのが頂萼片でカブト状の独特の形です。この頂萼片の下に円形~倒卵形の側萼片が2つあり、さらにその下に小さめの下萼片が2つ突き出ています。

 

 

 花弁は中に2つあり、花弁の先は蜜をもっている「距」があり、花弁というのと「蜜弁」とも呼ばれるそうです。

 花弁の基部には雄しべの集まりがあり、その先は反り返っています。雌しべは雄しべの中に隠れています。

 

 

 新しい情報はないのか・・と探しました。

 書棚のなかから「フィールドウオッチング」の8巻組があり、その2巻目に「トリカブト」がありました。

 担当した著者は門田裕一先生です。(著作の当時は国立科学博物館・植物研究部研究官) 出版は平成2年です。有名な北隆館が出版社です。

 その内容をそのまま書き留めました。

『トリカブトの生活史・附子の形成』

 トリカブトの根(=烏頭、母根)はちょっと太目のニンジンのような形をしている。春になるとこの根から花茎を伸ばし、それと同時に親の根の横に側根(=附子、子根)をつくり始める。秋になって花が咲く頃、附子の形成が終わる。そしてこの頃、母根は枯れ死してしまう。

 

 

 約40種ある日本産のトリカブトのうち、ある種類では、茎の下部の葉腋にむかご(無性芽)をつくるものもある。この場合は、本来腋生の花序になるはずのものが何らかの原因でむかごになってしまったものである。このようにトリカブトの仲間は栄養的(無性的)な繁殖を行う。

 また一方でトリカブトは、有性生殖にもとづく種子による生殖も行っている。この結果できた種子は、本来は小さいのだが、風散布に適した大型の翼を持っている。種子の発芽率は地域によって偏りがあり、日本海側地域の山岳に分布する種類、例えばミヤマトリカブト、ミョウコウトリカブト、ハクバブシではトリカブト群落に多数の実生が見出されるのに対して、太平洋側地域の山岳では、ホソバトリカブトやキタザワブシのように、大規模な群落があるにもかかわらず実生がまったく見出されない。このことの原因はまだよく分かっていない。

 

 

『典型的な虫媒花』

 トリカブトの1つの花の中には、数多くの雄しべと3~5本の雌しべがある。たくさんの雄しべは螺旋状に配列しているが、外側から内側に向けて順番に熟していく。

・・中略・・トリカブトの花は雄性先熟である。・・・

 トリカブトの花は遠くからよく目立つ青紫色の花である。実はみの青紫色の部分は花弁ではなく、萼片である。本当の花弁はかぶと状の上萼片の中に隠されていて、ちょうどタツノオトシゴのような形をしている。花弁には距という部分があり、そこに蜜が分泌される。

 

 

 トリカブトの花を訪れる昆虫は主としてマルハナバチの仲間である。マルハナバチは昆虫の中でも進化したグループで、口器がストローのようになっていて、蜜を吸うのに適した形をしている。トリカブトの花に訪れたマルハナバチは、雄しべと雌しべの塊を足場にして、背伸びしながら口吻を距にさしこむ。次に訪花したトリカブトで同じような吸蜜の姿勢をとると、マルハナバチの体についた花粉が雌しべの柱頭に運ばれるという仕組みになっている。  後は省略です。

 

 

 

 

 

 今年は9月にアズマレイジンソウを書いていますが・・・

 

 具体的なトリカブトを3つ。

 最初は「オクトリカブト」です。

 で、これは花がちょっと小さいタイプの「オクトリカブト」のようです。

 漢字では「奥鳥兜」です。

 

 

 この「オク」とは、陸奥(みちのく)の奥のことだそうです。

 北海道~本州中部以北の渓流沿い、湿気のある林内などで暮らしています。

 

 

 茎は直立するかやや斜上して80~180cmにもなります。

 茎の下部には毛がないが、中程から上には曲がった毛が生えます。この毛の有無で他との区別すめポイントにもなります。 なんとも微妙です。

 

 

 葉っぱはやや厚みがあり、円心形で5つに中裂します。

 さらに裂片には洗い鋸歯があります。

 葉の両面の脈上や葉柄には 曲がった毛が生えます。

 花にも外面に曲がった毛があります。

 

 

 全体の色の濃淡やグラデーションも多少変化があるようです。

 カブトになっている上萼片には黄色の模様も入ります。

 

 

 

 

 二つ目は

 「ヤマトリカブト」です。  漢字では「山鳥兜」です。

 くらしているのは本州中部以北で山地の山林内です。

 

 

 草丈は80~150cmくらい、茎の中程につく葉は円心形で深く3~5裂して、その裂片は披針形や卵状披針形です。縁には粗鋸歯があります。

 

 

 オクトリカブトの変種で、青紫色の花の外側には曲がった毛が生え、内側にも曲がった毛とまっすぐな毛が生えています。

 

 

 葉っぱは互生して付きます。3~5に裂ける円形掌状です。

 切れ込みの浅いもの、深いものといろいろのようです。 

 

 

 

 

 3つ目として

 「ハナトリカブト」です。 漢字では「花鳥兜」です。 

 このトリカブトは中国が故郷で、園芸用に作られた品種です。

 でも毒は一級、特Aです。別名が「カブトギク」や「カラ(唐)トリカブト」です。

 

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 このハナトリカブトの葉は質が厚く光沢があります。そして深く3裂しています。

茎先に総状花序で、青紫色の花をたくさん咲かせます。

 

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 葉っぱは互生して付きます。3~5に裂ける円形掌状です。切れ込みの浅いもの、深いものといろいろのようです。

 

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 この花弁は大いに変身して、いまや「蜜腺」としての役割を担っているそうです。

 そして、毒の徹底度は以前、「オクトリカブト」の時にも書きましたが、花粉にも、この蜜にも毒入りです。

 

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 まぁ、毒のことは忘れて今回は花の鑑賞です。