今日は、養蚕番外編です。

ton-cara さんとの出会いがきっかけで、今年から養蚕のワークショップ(以下WS)を始めた当館。参加くださったみなさんと作業をしていて、自分が研修を受けていたときのことを思い出すことが増えました。そこで、その頃のことをちょっこと書きたいと思います。

 

わたしが養蚕農家さんで研修を受けたのは2007年の晩秋蚕から、翌年の春・晩秋蚕期の3シーズンでした。そのときから数えると、養蚕は今年でちょうど10年目になります。

 

 

 

 

 

 

場所は群馬県榛東村。研修を受け入れてくださったのは80代のご夫婦でした。こちらは兼業農家で、もう少し若かりし頃は、お父さんが勤めに出ながら1〜2箱の蚕を飼育していました。お父さんは出勤前に畑で桑を収穫、昼間はお母さんが蚕の面倒を見ていました。人手が必要なときは、嫁いだ娘さんが手伝いに来ていました。

 

繭の値が良かった頃は、少しでも飼えば、それなりの副収入になったので、サラリーマンの家でも農地があれば飼ったのです。わたしが養蚕を知った頃は、そうした家はほとんど無くなっていたと思いますので、このご夫婦の営みはとても興味深いものでした。教わった作業は、いつかまとめたいと思っています。

 

そして、この農家の養蚕は、わたしにとって丁度良い規模でした。自分一人でも持続可能な飼育がわたしのテーマでしたから、手製の飼育台や家庭用ストーブを使って工夫した飼育法は、独立してからも多いに役立ちました。今後研修される方へのアドバイスとしては、自分が独立したときにどれくらいの規模で参入したいか考えて、それに近い規模の農家を探すことです。

 

 

 

 

 

 

榛東村の桑畑です。霜が降りない場所なので、桑の仕立ては樹幹の高さが50cm以下の低い「根刈り」という方法です。

 

今回の養蚕WSでは、剪定鋏を初めて握る方がほとんどで、思ったように効率が上がらず、凹んでしまうという話がありました。それは当たり前のことで、直ぐにコツを掴む人は少ないです。何日かずっと桑を切って、やっと掴めてくるのだと思います。わたしも研修を始めた頃は、お父さんと2人で畑に出て、同時に桑を切り始めるのですが、わたしが作れるのは1束くらいで、お父さんはボンボン束を作って行くので、わたしは桑束をトラックまで運んで積む係でした。3シーズン目に、やっと「切るのが早くなってきた」と褒められて、嬉しかったことを覚えています。

 

 

 

 

 

 

記念に出しちゃえ。2008年の晩秋蚕に研修先のお父さん、お母さんとテレビ出演したときの写真です。NHKのお昼の生放送「ふるさと一番!」です。番組関係者の皆さんと「一番!」のポーズで記念撮影。旅人は河相我聞さんでした。

 

9年前、30代になったばかりのわたくしです。座繰りを生業にしたいと独立して3年目、養蚕も事業に取り入れたことで収入が激減、桑畑の管理に四苦八苦しました。研修を終えてからも、ご夫婦のところには出入りさせていただいて娘のように可愛がっていただきました。このご夫婦や、他にも当時お世話になった方が何人もあります。でも当時は自分のことで精いっぱいでした。後になるほど身に染みるご恩です。