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只今、座繰りの日々です。





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繭から糸が出ているところ。

群馬の座繰りの醍醐味の1つは、繭から糸を太くひきだすことです。
たとえば、210中という太さですと、繭70粒以上から出た繭糸をいっぺんにひきあげてゆきます。

製糸工場では、21中という規格の太さがあり、これは繭7粒前後から1本になっています。この21中の生糸を10本合わせると210中の太さになります。流通している着物に使われる生糸のほとんどがこちらのタイプです。

最終的に同じ太さの210中の絹糸でも、210中の太さにいっぺんにひきあげたモノと、21中を10本合わせて210中の太さにしたモノでは糸は全く違う表情を見せます。

この2種類の糸の違いをもう少し述べますと、わたしは以下の印象です。
いっぺんにひきあげるモノは、まとまりにムラがあります。太さにもムラがでます。ムラにより糸の光沢は機械製糸のモノに比べると落ちます。(光沢については、どの道具を使うかにもよるので絶対とは言えません。)このように言うと良くないように感じますが、そこが手でつくった糸の味にもなっています。太くひいた分、布にコシがあります。上州の玉糸(節糸)は、布にすると軽いと言われます。

細くひいて合わせることで太くするモノは、特に機械製糸の糸は繭糸がよくまとまっています。太さにムラはありません。糸に光沢があります。細やかで優美な絹糸になります。布にすると、重みがあります。

どっちが良くて、悪いというのではなく、好みだと思います。
織り手のかたは、お客さまがどんな地合いを求めていらっしゃるのか、それを把握して糸を吟味します。

わたしは、織り手のかたとお話をさせていただき、どんな風にすれば求めていらっしゃる糸になるのか、それを考えて座繰り糸をつくるのが仕事です。





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できた生糸を揚げ返しているところ。





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揚げ返し器の大枠からはずしたばかりの生糸です。
まだ、湿っています。座繰りでひきあげたときにのびた繊維を元に戻すために湿った状態ではずすのです。大先輩に教えていただいたやり方です。

製糸工場では、はずしたときには、生糸は乾いていてサラサラしています。大枠に生糸を巻き取りながら、同時に糸を乾かしてゆくのです。

見た目が似ていたとしても、工程の違いは、織ったモノに出てくると思います。





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先に述べたことのほかに、手回しの座繰り器を使ってつくる糸にも違いはあります。
ただ単に、つくり手が違うだけでも変わってきますが、地域によって・誰から習ったのか・どこの流れをくんだ製糸方法なのか・本人がどんな糸をつくりたいかなどです。