蚕糸日記 -さんしにっき--蚕鍵

これ、なんだと思いますか。
わかる方は、かなりマニアか、ご年配の方とご推察もうしあげます。

実は、このお家で昔使っていた養蚕道具です。
上簇の籠を引っかけておいたものだそうです。

そして、この間の「お蚕さまのきもの展」では、思わぬ活躍。
着物を提げる鍵として利用しました。
これに気付いた方は、わたしが知る限り、わずかお二人。

お一人は、お世話になっている今井さんのところのおじいさん、
「かいこ鍵使ってるんかい」と声を掛けてくださいました。
その時、初めて名称を知りました。

もうお一人は、こちらのお家から嫁がれた娘さん。
それが、とっても懐かしそうになさるんです。
実はお蚕さん以外に、この鍵を使って家族中の着物を虫干しなさっていたそうなのです。
この偶然、とってもうれしくなりました。

この鍵、手でつくったもののようです。
どのように曲げたのでしょう。わたしには到底つくれません。
曲線が、とてもうつくしいなと思います。
このライン、ちゃんと意味があるのですよね。
計算されたうつくしさというか、必然的形。
機能美という言葉がありますね。
つくった方は、そんなことを思って形にしたのかは分からないけれど、
デザインとは、こういうことなのでしょうね。