「たっくん寝かせてくるね」
隆二が隆臣を抱っこしたまま移動しようとすると、臣が立ち上がった。
「俺が寝かせてくるから、お前はゆっくりしてていいよ」
「そう?じゃ、お願いしよっかな」
隆二の手から隆臣を受けとると、またグズりだした。
「ん…やーら、まぁだ、あしょぶの…」
「いつまでたっても甘えた坊主…」
半分夢の中にいる隆臣を臣がまぁるく抱いて、あやしながら子供部屋に連れていった。
「臣ちゃんも慣れたもんやな」
「まぁるく抱っこすると、お母さんのお腹の中にいる時に近い体勢になって安心するんだって」
「臣ちゃんがそう言ってたんか?」
「そうだよ、自分で調べて実際に子育てにも応用してる」
「さっき隆二に掛けた言葉といい、臣ちゃんも随分角がとれてきたなぁ」
「不器用だけど、元々優しい気遣いができる男だもんね」
「守るものができると長所に磨きがかかるんだよ、きっとね」
隆二と健二郎の会話を聞いていた直人がポツンと言った。
「あ、俺たち席外した方がいいですか?」
「せやな、直己さんと直人さん二人っきりの方がエエでしょ?」
「そうしてくれるか?悪いな」
直己が答えた。
「じゃあ向こうの部屋にいるんで、終わったら声掛けて下さい」
隆二と健二郎は酒とツマミを持って出ていった。
「で、直己が聞きたいことってなに?」
「彼女と知り合って今日まで、何かおかしいなって思ったことはないか?」
つづく