「ナポリタン…美味しい!」
「これホントに臣が作ったの?店で出てくるやつじゃん」
まりあと直人がパスタを絶賛する中、臣が隆二の方に視線を向けると、口周りをオレンジ色に染めてモゴモゴ頬張っている。
「想い出の味なんで、店まで行ってレシピ教わったんです」
「そうなんですね、本格的」
「相手はすっかり忘れてますけど」
隆二の隣で子供用の椅子に踏ん反り返って、隆臣も口の周りがドロドロになってる。
「そっくり親子め」
「ん?臣、なんか言った?…あ〜あ!たっくんお口周りにいっぱいついてるよ💦」
「お前もだよ」
「おとーしゃん!しゅーぷないの?」
「え?スープ食べたいのか?隆臣」
「おやしゃい沢山のがいい!」
「あ!私作ります!」
まりあが席を立った。
「え?いいの?パスタ冷めちゃうよ」
臣が見上げて言うと、まりあはニコッと笑顔で返した。
「キッチンお借りしますね。すぐに出来るのでパスタは後でチンさせて下さい」
「OK、ラップしとくね!ありがと」
まりあはキッチンに立ち、素早く調理を始めた。
「いいんですかね?お願いして」
臣が直人に尋ねると、直人はまりあを見ながら答えた。
「その方が色々気も紛れるんじゃないかな?」
「そっか…」
「それに俺もまりあの手料理食べてみたいし」
「付き合ってるんですか?」
「うん、今ははっきり言えないけど、大切な人だよ」
「うちは気兼ねいらないんで、いつまでも使って下さい」
「ありがとね、ここなら安心だよ」
「ところでさ、さっきの想い出の味って…」
「共有する相手が気づいてないんで、もういいっす」
臣が隆二の方を振り向くと、ほぼ完食して水を飲んでいる。
隆臣の姿が見えない。
「あれ?いつのまに…どこ行った?」
「たっくん?先生のとこだよ」
リビングの続きにあるキッチンを見ると、食べこぼしを受けるアンパンマンの食事用エプロンをつけたまま、口をオレンジに染めた隆臣がまりあの横に立っている。
「ありゃ!自分で脚台持っていって、ちゃっかり隣で立ってるよ」
「たっくん、もっとちっさい頃は大人しかったのに、活発になってきたね」
「動物園デビューの頃からいろんな人に出会って、一気に成長したみたいです」
「隆臣くん、お口にいっぱいついてるよ。待ってね」
まりあが近くにあったティッシュを数枚とって、隆臣の口についたソースを綺麗に拭いた。
「しぇんせい、ありがと♫」
「まりあって呼んでね、隆臣くん」
「いーの?しぇんせいでしょ?おねーしゃん」
「それは保育園だけでいいよ」
「まりあ」
「はい!」
「しゅーぷまだぁ?」
「もうすぐできるから待ってね」
「もう呼び捨てにしてる…」
臣は笑ってキッチンの二人を見ている。
「たっくん最強だな 笑」
「すいません💦」
「それより相方の世話」
「え?…あー!隆二、こっち向け」
「ん?どした…」
臣もティッシュを数枚取って、隆二の口元を拭いた。
「ついてた?サンキュー」
「…あれ?前にもこんなシーンなかったっけ?」
「もういい、思い出さなくても」
臣は最後に指で隆二の口元を拭い、手についたソースをチュっと舐めた。
その様子を見ていた直人が軽く溜息をついた。
「やれやれ…まりあが二人のイチャラブに当てられないか、それだけが心配だよ」
つづく
動物園デビューはこちらからどうぞ↓↓↓