正念場を迎えた米朝関係と安倍首相
平壌日記 PYONGYANG DIARY
平壌(ピョンヤン)市の高層マンション群(2019年10月15日撮影)
非常に残念なことだが、米国で朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との対決の歴史を終わらせることができるのはトランプ大統領だけだろう。オバマ前大統領が朝鮮との関係改善のために何もできなかったことを考えるならば、来年末の大統領選で民主党の候補者が勝利しても期待できそうにもない。
ただトランプも前回の大統領でのヒラリー・クリントンのように、まさかの敗北をする可能性はある。本格的な選挙戦に突入すれば、朝鮮との極めて困難かつデリケートな外交交渉をする余裕はなくなる。
それからすれば、遅くても年内に実務者協議を行ない、年明けには首脳会談を実現させる必要がある。もちろん、会っても大きな合意ができなければ意味はない。
朝鮮にとって今は、1948年の建国以来の最大の正念場である。米国との交渉が不発に終わったならば、2017年と同じ極めて厳しい対立関係に再び陥る可能性がある。朝鮮が、米国本土まで届く弾道ミサイルとそれに搭載できる小型核兵器を確実に完成させた今、極度の軍事的緊張状態になれば米軍の先制攻撃があり得るからだ。
昨年と今年の6回の取材で、朝鮮は国だけでなく国民も必死になって経済発展のために努力している姿を見た。だが、米国との戦争は誰も望んではいないものの、米国に屈するような道を選ばないのも確かだ。
米朝が合意点を探り、丁々発止の駆け引きを繰り広げているにもかかわらず、日本国内ではほとんど関心が持たれていない。日本も戦争に巻き込まれるかも知れないという2年前をすっかり忘れている。
安倍首相は韓国に対して、関係悪化の原因はすべて韓国にあり日本が妥協することはいささかもないという頑なな姿勢である。そして、重大な岐路にある朝鮮情勢に対して何の関与もしようとしていない。日本の支配から離れた朝鮮半島に対し、異常な冷淡さを続けてきた。それは安倍首相が、偏狭な歴史観に基づく外交をしているからだ。