南下軍 | a frog in November

a frog in November

11月のかえる

作詞・高橋武濟 作曲・簗瀬成一

壱 

たゞに血を盛る瓶ならば  五尺の男児要なきも
高打つ心臓(むね)の陣太鼓  霊(たま)の響きを伝へつつ
不滅の真理戦闘に  進めと鳴るを如何にせん

弐 

嵐狂へば雪降れば  いよよ燃え立つ意気の火に
血は逆まきて溢れきて  陣鼓響きて北海の
「健児脾肉を嘆ぜしが」  ついに南下の時到る

参 

花は御室か嵐山  人三春の行楽に
現もあらで迷ふ時  西洛陽の薄霞
霞にまがふ砂煙  蹴立てて進む南下軍

(http://ryuujinn.vis.ne.jp/Ryoukasyuu/Sikou-K/004148o.htm,より)

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なんとも勇ましい歌である.たぶん,現代では難解だろうな.私の出身高校で歌われていた応援歌のひとつ,南下軍,である.

南下,というからには,出発の拠点は北にある.私の高校は市街地の北の端にあり,かつて,“北高”,と呼ばれていた.よって,進攻は南下だったのだろう.

この歌は我が母校のオリジナルではない.上のサイトにもあるが,旧制四高(金沢大学の前身)の応援歌を拝借したものだ.四高では,三高(京都大学の前身)との定期戦でこれを歌ったらしい.確かに京都の雅な風情を蹴散らそうという意気も歌詞に取り込まれている.

この歌は,漫画家・清原なつのの作品,ゴジラサンド日和,にも登場する.失恋した少女をなぐさめるじーさんが(おそらく金沢での)青春を懐古するシーンだ:

$a frog in November

作者の清原さんも金沢大学薬学部の出身で,在学中に,りぼん,でデビューしている.実質的なデビュー作,花岡ちゃんの夏休み,を読んだ時は,一部の隙もないセンスの良いギャグと登場人物の知性的なセリフに,とんでもない新人が現れたものだ,と思った.清原さんはその後,研究者としての生活と漫画家を兼ねることとなり,多作ではないが,最近でも,千利休,とか,筒井康隆原作の例の七瀬3部作第1弾,家族八景,をモノにしている.まあ,一般受けするタイプからはほど遠い俗世を離れた感じではあるが.

ちなみに,知らなかったのだが,上記サイトによると,南下軍には以下のような4番があるそうだ:

四 

平和はいづれ偸安(とうあん)の  秒時(しばし)の夢に憧るる
「痴人始めてよく説かん」  丈夫武夫(ますらたけお)は今日の春
花よりもなほ華かに  輝く戦功(いさお)立てんかな

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我が母校では4番は歌われたことはなく,歌詞集に掲載されてもいなかった.

痴人,というような言葉に差別的響きがあるためか,戦功,に軍国主義的な意味合いが感じられたためか,あるいは,単に長過ぎるので4番を省略したのか.いろいろ考えられるが理由は不明である.

なお,4番は歌ったことがなく,読み方が分からない箇所があったので,以下のサイトをも参照した(このサイト,Macではデフォルトでは読めず,エンコーディングし直さなきゃならないんだけどね):

http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/tadani.html