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くそ暑い日が続く。
寒さには弱いが暑さにはさほどと思っていた猫ではあるが、この暑さはこたえているようだ。
妙におとなしく、うるさくまとわりつかなくなっている。
暑さのせいだけではなさそうだ。
どうやら、当方の体調の異変に気が付いてるようで、迷惑をかけたくないと思っているらしい。
当方を見る目つきに、そんな気持ちがあらわれている。
8月のわが飼い猫<みり>。
愛いやつである。
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8月1日。
がんセンターへ。
7月半ばのCT検査の結果をふまえて、今後の治療方針を確定するため外科のkY医師と面談する。
娘が同伴してくれた。
CT検査の結果、半年前に比べ、がんはゆるやかに増大している。
採血では、ひどかった糖尿病のHba1cの数値は劇的に改善されている。
それを見て、内科のKG医師が、抗がん剤治療もできなくはないと言ってくれたことを、主治医の外科のKY医師に伝え意見を聞く。
以下、KY医師の話。
やるとすれば1種類の抗がん剤を投与する<s1>療法になるが、これは、がんの進行を抑えることによる<延命>、がん細胞の進行を<緩和>することを目的とした治療法です。
この療法に関する国内外の治療成績、いわゆるエビデンスを見ると、がんの大きさが7割以下に減る薬効割合は31%、がんが進行しない期間の中央値は4か月。
薬効がなく、相変わらず進行が見られる場合は、治療は中止される。
当然のことながら、副作用というリスクも避けられない。
さらに、このデータは、80歳以下の患者を対象としたもので、当方のように、80代後半の人間に対するエビデンスは存在しない。
それでもということであれば、やってやれないことはないが、積極的におすすめはできない。
以上のような内容の話を、淡々と話してくれた。
当方が予想していたような話だった。
KY医師には、老体を痛めつける治療は受けない、月一度程度、経過観察のため通院し、これまで通りの放置療法でいきたいと話す。
それでよいとする。
当方の判断。
娘も同感してくれてるようだ。
だよね。
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脚力の衰えが目立つ以外、日常生活を送るのに格段の不都合を感じることはない。
不便を感じることなく、当たり前の生活を送っている。
しかし、腹中に<悪性新生物>が巣くっていることは確かなのだ。
そいつが、日々、少しずつ勢力を伸ばしている。
そのことは、きちんと理解しているつもりだが、このところふと思うのは、内科外科
の二人の医師は、現状打つ手なしと思っていて、まあ、その通りなのだが、そのことを
前提に話を進めている。
医師は、最悪を想定してものを言うので、どうしても厳しい物言いになるとわかっては
いるが、でもね、嘘でもいいから、一つぐらいはこちらの気持ちを明るくするようなポ
ジティブな話を聞かせてくれてもいいんじゃないか、なんて思ったりもする。
そうもいかないんだろうなあ。
ならば自分で何かを始めてみるか。
いわゆる民間療法なるものをいくつかトライし始めている。
娘が送ってくれたラジウムを染み込ませたベストを着用し、同じ効能を持つシーツの上
で寝る。
小豆ジュースを飲み、クエン酸を含んだ果物ジュースを毎日飲んでいる。
こちらは糖尿病対策だが、足踏み器を購入しせっせと踏み込んでいる。
がんが消え去るとはとても思えないが、からだに悪いことは何もなさそうだ。
みんなからだにいいことばかりではないか。
ほれ、鰯の頭も信心から、というではないか。
いろいろやることが楽しさになりつつあるようだ。
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「雀荘迎賓館 最後の夜」 大慈多聞 新潮社
「老いの深み」 黒井千次
を読む。
「雀荘―――」傑作です。
優れた麻雀小説であり、ビジネス書であり、就活応援書でもある。
こんな作家がいたんだ。
当方より5歳ほど年長の黒井千次さんの老境エッセイ。
当方が日々実感していることを書き記している。
よっ、ご同輩。
と、声をかけたくなる本。