中央に木製の長いテーブルが置かれ両脇に長いソファーが設置されたツリーハウスは

最高の出来栄えで御座いました

テーブルの上にはクッキーやチョコレート フランスパンまでも置いてあり

温かい紅茶を頂きながら楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行きます

フランソワは食後疲れた身体をベッドの中に横たわりいつの間にか

軽い寝息が聴こえてまいりました

子供時代から自分の庭のような

感覚のタンポラ山でしたが

事故で足を失い

杖を突かなければ

登る事の出来ない大変さを

初めて身を持って気付いたのでしょうか

フランソワの寝息はハイキングの大変さを物語っておりました

そんな我が子の姿を見つめながら母親マリーエは涙を拭いました

緩やかな山道ですが一部階段が少し急勾配であった事を心配していた母親でしたが

最後まで一人で無事下山出来た喜びに親として最高の安堵感で御座いました

スタート地点に無事到着した時のフランソワの顔には満足感が溢れた素晴らしい

凛とした顔になっていた事を思い出しつい涙が出てしまったのです

フランソワの最後まで諦めない集中力はいつ備わったのか親として嬉しい

瞬間でもありました

その時レオノールが話しだしました

『クリスさんアカネールさん今晩は父のホテルで食事を予約しております

時間は午後6時半から始めようと思います 今夜学校へ帰るフランソワです

皆で楽しい時間を過しましょう 

1階フロアーのカフェルームでお待ちしております

その時間にお待ちしておりますのでお越し下さい』

『それはありがとう御座いました 折角ですので甘んじてお受けさせて頂きます

アカネールも同じ考えだろうと思います なぁ アカネール』

『もったいない事で御座いますが大変嬉しゅう御座います 宜しくお願い致します』

『じゃぁ 決まりましたね ではフランソワを起こして一旦別荘へ戻り馬車で

家まで送って頂きたいと思います フランソワが疲れているでしょうから』

『勿論で御座います 送らせて頂きます お食事の時間までにお迎えも

させていただきます』

『ありがとう御座います 夕食にはホテルから車が迎えに来る事になっておりますので

クリスさん達はお二人でホテルへ直接起こし下さいませ お待ちしております』

『ありがとう御座います 爺も婆もこんなに嬉しい事は御座いません』

その後クリスとアカネールが先に戻り馬車でこのツリーハウスまで迎えに来ると言って

帰って行きました

マリーエは静かに眠り込んでいるフランソワを

そって優しく起こしました

『パパ ママ 

こんなに眠っていたのですね 

ごめんなさい 叔父さん達は』

『クリス達は先に帰り

もうすぐ馬車で迎えに来るでしょう 

それまで暖炉の始末とテーブルのお菓子をあの棚にしまいましょうか 

暖炉は私が消します』

『はい ではお菓子を片付けます 紅茶カップは何処に行きましたか』

『アカネールおばさんがバケツの中に入れて持ち帰りましたよ』

『パパ テーブルを拭くキッチンタオルは濡れた状態で棚の上に置いてありますよ』

レオノールは完璧な管理人夫妻に圧倒されました

さすが父上の執事だと感心してしまいました

暖炉の火を水で消して確認し窓を開けて空気を入れ替えたところでまたガラス戸に

総て鍵を掛け馬車の到着を待ちました

その時遠くから馬車の音が聞こえて来た事に気付いたフランソワは東側の窓から

見下ろし叔父さんの馬車が近づいて来るのを確認しました

フランソワは最初にドアを開けて木製のはしごをゆっくりと降りて行きました

外の木戸も開けて外へ出ると木立からはたくさんの小鳥達の声が聞こえて

参りました

冬木立も風を伴いざわめきながらフランソワの登場に喜んでいるようです

森の木立の間から木漏れ日の射す素晴らしい景色に感動しながら

おじさんの馬車がもうすぐ来る事を確認し上に居る両親に大きな声で伝えると

両親は急いで部屋の鍵を掛けはしごを降りて木戸から出て参りました

『わぁ 素敵 外の風の冷たさが爽やかに感じますわ あなた』

『そうだね 森の木漏れ日の美しさは最高のお土産ですね』

そこにクリスの馬車が到着し台座から降りて来たおじさんは

大きなバケツを持ってフランソワ達の前に立ちました

『お世話をお掛けします 上は暖炉の火を消して鍵を掛けて来ましたよ』

『ありがとう御座います コーヒーカップのセットを持って参りました

上に置いて来ますので少しお待ちください』

『では鍵をお渡します』

レオノールから鍵を受け取るとすぐにはしごを登り部屋の中に入ると

暫らくしてからまた降りて来て木戸の鍵も掛けて出て参りました

『綺麗にして頂きありがとう御座いました では皆様馬車にお乗り下さい』

クリスの声で三人は急いで馬車に乗り込むとクリスが馬車のドアを閉めてから

台座に乗り移り二頭立ての馬車はひづめの音を森の木立に聞かせながら

静かにゆっくりと走り出しました




                               ・・・つづく