途中から石畳の階段は結構身体に消耗をきたしきつい物で御座います

まだかまだかと頂上を目指して歩いて来た道程は多少軽く考えて来た

フランソワの心をばっさりと切りつけ相当きつい坂道であり階段でした

山に対して軽んじてはいけない事に大いに気付かされたフランソワは

先頭を行く父の声を耳に致しました

『着いたぞぉ  おおぉ 素晴らしい景色だ』

その声にフランソワは早く階段を上がろうと想うばかりで足が言う事を

聞いてくれません

『フランソワー ゆっくりと昇って来なさい 景色は逃げませんよ』

父の優しさがフランソワの胸を突きました

『ありがとう パパ もう少しですから』

こう言うのが精一杯で御座いました

目の前の視界が広がり始め最後の一歩を登った瞬間360度の世界が御褒美として

フランソワの瞳の中に飛び込んで参りました

頂上は寒く東西南北から吹き付ける風が

何故か泣いて聞こえて来たのです

パノラマの世界は素晴らしいと

主観では思いながらも

現実足の疲労度合いは

限界である事に気付いた

フランソワは周囲を見渡し

椅子になるものを探し始めた頃

両親はパノラマ世界に釘付けで

後ろからクリスおじさんの声が聞こえたフランソワは後ろを振り向きました

おじさんはニコニコしながら椅子の確保をしてくれ手を振って招いているようです

急いで椅子の場所に辿り着いたフランソワは達成感と疲労度合いの反比例に

終始うつむいてしまいました

心拍数は高く成っており息切れが容赦なく続き足の痛みも襲って参ります

16歳の自分がこの中の人々の中では一番若者だと感じつつも座ったままで

周囲を見渡すのが精一杯で御座いました

暫らくしてから母が傍に来て笑顔でフランソワの顔を見つめながら

背中側に回り込みました

『フランソワ 良く頑張りましたね 足が痛そうでしたが大丈夫なの』

『はい 少し休憩すれば治ります』

『それなら良かったわ 後ろから見ていて辛そうでしたが何処まで登れるのか

見守っておりましたのよ』

『お気遣いありがとう御座います クリスおじさんもアカネールおばさんも観に行って下さい』

『大丈夫ですかお坊ちゃま』

『少し休憩してから皆様の所に行きますので御安心を・・』

『では行ってまいります』

おじさんがおばさんの手をつないだ姿に微笑ましい姿を重ねて嬉しく感じた

フランソワは休に元気が涌いて来て気力に負けては行けないと立ち上がり

そのまま両親達の所に行きつきました

『遅く成っちゃってごめんなさい』

『もう少し座っていれば良かったのに

 階段だから相当疲れたと思いますよ

パパもやっと辿り着いたのです

最近は山には随分行っていなかったので

倒れそうでした 

山を軽んじては行けないと再認識したばかりです』

フランソワは父親と同じ考えに嬉しく成りましたが所詮自分は若いのだから

もっと元気良く歩けなければ成らないはずだと反省しておりましたが

過去幾度も登ったタンポラ山ですが右ひざ下を失ってからは初めての登山でした

四方の絶景を見たフランソワは自力で登った事で美しさが倍増して眼に

入り込んで参りました

素晴らしいレンヌの風景と遠くには海に染み込む太陽の光を反射し鏡と化した

美しい風景は限りなく光り輝いておりました

西側にはフェラン山の純白の北壁が見え雪化粧を整えた山は美しい姿を

誇示するかのように白く光り輝いております

まるで人が住んで居る事を忘れるような凛とした山並みの余りの美しさに

言葉が凍るほどに清らかで静寂な遠感現象の聖域のように感じたフランソワは

やはり不思議な国だと言われているフェラン王国の威厳を観たような精神感応的

思考観念を同時に感じ取れた様な気持ちになり感慨に浸っておりました。




                                ・・・つづく