両親も学校の詳しい話は始めての事でありフランソワの愛嬌を交えた話しに

わくわくしながら愉しそうに聞いておりました

暫らくしてからアカネールおばさんが退席し4人で愉しい話は続いておりました

フランソワは学校のことやお城の様子を交え乾いた口にコーヒーを含ませて

熱く語り

特にマリブル叔父様と叔母様やカエデンタッキー王子様とアイリーヌ王女様の

お話にはいっそうの喜びを込めて話しました

『フェラン山での生活は私達レンヌ市での生活よりも遥かに進歩している事に

驚きました 爺はリヨンにはもう10年ぐらいは帰郷しておりません 

この時期に休暇を頂き何故かリヨンに帰ってこようと思いつきましたわ 

親戚にも逢いに行きたいと思います 何かそう思いましたら心が騒ぎ出しました 

わははははぁ』

クリスおじさんはよほど嬉しかったのか本心から笑っております

それにつられた

フランソワ達も笑顔になり

まぶしい太陽が射し込む

リビングには光の反射で

大理石の床も光り輝いております

大理石の床もマリブルによって床暖房が施されそのお湯が循環して

キッチンの洗い物に使えるようにしてくださった事が寒さの中で

助かっていると強調したおじさんもまた涙目になっていました

広いリビングには2基の暖炉が御座いますが

今ではマキ割りもすることなく石炭がホテルから毎週届けられ

夫婦の寝室の暖炉には石炭を使い毎日温かく過させて頂いている事に

感謝をされておりました

フランソワはマリブル叔父様のお優しさを改めて認識させられ

恵まれた環境の下で通学し過せる事に深い慈悲を感じた時間でもありました

その時アカネールおばさんがリビングへ入って来て昼食用のサンドイッチが

出来上がった事を伝えると父親がアカネールおばさんに礼を言いました

『では今日はクリスさんとアカネールさんも一緒に山歩きをしますよ』

『えっ 本当ですか 嬉しいですよ僕は』

『事前に伝えていたのですよ では急いで支度をして出掛けましょう』

『熊は出ないでしょうね おじさん』

『あはははぁ 熊はこの森に入れないようにホテル側に添った

川の向こうに在るフェラン山の境界線上に頑丈な鉄条が張り巡らせて

ありますので以前のようにレンヌには熊や動物が入れないように成っております 

これもマリブル様のお考えで御座います 

人も迷ってフェラン山に入り込めないような対策をされたのですよ 

勿論タンポラ山にも人間と動物社会の境界線が出来ていて安心な散策経路に

成っていたのです これもホテルマンから聞きました』

『お父様 叔父様は素晴らしい方だと再認識致しました 

僕も始めて聞くお話ですから内心は熊が来ないか心配だったのです』

『それよりもお坊ちゃまにツリーハウスを見ていただきたいのです

爺とメナリオットで素晴らしいハウスを作りなおしましたので是非

見て頂きたいのです 今日のお昼はハウスでお食事を致します
 
外では寒う御座いますので楽しみにして下さいませ』

『それは楽しみですね じゃぁ 出掛けましょう』

『では家の戸締りと暖炉の処置をしてからすぐに参りますので

少しだけお待ちください』

管理人は家中の鍵の点検や暖炉の始末を終えると戻って参りました

それから5人は防寒着を来てリュックを背負った父とおじさんは先に出てしまい

慌てて追いかけました

アカネールおばさんは家に鍵をかけてそれから表の門扉にも大きな錠前をつけ

その鍵を夫であるクリスに渡しました

クリスは鍵をリュックに中にしまい皆で歩き始めました

先ずはホテルの周囲を回った事が御座いませんでしたのでそれから行くことに

致しました

久し振りのホテルには大勢の人の出入りが在り繁栄している喜びをかみしめ

広い周囲の風景を楽しみながら森の中は

ひときわ寒い風が吹き渡り落葉樹の枯葉の

しゃりしゃりとした

軽やかな音を楽しみながら

道無き道を歩いては

木漏れ日の差す

美しい木立の中で森林浴をしながら

気付けば身体は熱くなっておりました

フランソワは念の為に杖を持参していて山道で雑草茂る中を歩くために

杖を突きながらバランスを取り軽やかに歩いております

時折静寂な森の中で5人の話し声は響き渡り笑い声が木立を揺する様な

勢い溢れた一行はタンポラ山の遊歩道にやっと辿り着き落ち葉を踏締め

石畳を歩きだしました

行き交う人達に《こんにちはー》と声を掛けあいながら応えて下さる

《こんにちは》に気持ちも爽やかな気分を頂きタンポラ山の頂上に向かいました


                                ・・・つづく