着替えを済ませたフランソワは松葉杖をついて急いで階下へ降りて行きました

キッチンからは美味しそうな香りが漂い父は静かに本を読んでおり

フランソワには気付いておりませんでした

『おはよう御座います』

フランソワはわざと大きな声を出しました

その声に驚いた父はフランソワを見て『おはよう 良く眠れたのかな』と

小声で話しました

それにつられてフランソワも小声で父の眼を見つめ『寝すぎました』と伝えると

突然父が笑い出したのです

その笑い声につられて

フランソワも笑い出し

その声を聴いた母親が

キッチンから出て参りました

『どうなさったの あなた達』

『いやぁ なんでもないさ 急におかしくなって笑ってしまったのだよ 

なぁフランソワ』

『はい 理由はありません ママ おはよう御座います』

『おはよう フランソワ良い目覚めでしたか』

『勿論 小鳥達が起こしに参りますので今朝は早く起きてしまい

二度寝をしてしまいました ごめんなさい』

『別に謝る事は無いわ 今日は日曜日ですもの 

朝食が出来ましたからキッチンへ来てくださいね』

『はい』

その時レコードが同じ所を回転して居る事に気付いたフランソワは

蓄音機の針を上げて戻しました

『パパ 次の曲は何をかけますか』

『そうだなぁ 白鳥の歌をかけようかな 

別荘にもそろそろいつもの白鳥達が池に飛んでくる頃だからね』

フランソワはなれた手つきでレコード盤を丁寧にカバーにしまい

棚に入れて代わりに白鳥の歌を探して蓄音機にかけて針を手馴れたしぐさで

レコード盤に載せるとキッチンへ向かいました

久し振りの母親の手料理に何故か嬉しさが込み上げ目頭が熱くなりました

朝食を済ませた一家は山歩きをするための完璧な防寒対策を施し階下で

待つことに成っておりました

フランソワの着替えは総て母親が揃えてベッドの上に置いてあり

フランソワは急いで着替えながら母の愛情に感謝を致しました

階下に降りると既に父親がリビングで座って待っておりました

『パパ 遅くなりました』

『別に時間が決まってはいないのだから謝らなくても良いんじゃないのかな』

『はい ありがとう御座います』

その時階段から母親がおりてくる音が聞こえました

二人は音のする方に視線を移すと真っ赤な防寒着に

ブラックのパンツスタイルの母親の姿が見えました

『ママ とても可愛いですね』

『まあぁ ありがとう 遅くなりましたわね では参りましょう』

親子三人は母親を真ん中にして別荘に向かう事に致しました

愉しい会話が弾む中行き交う人々に挨拶を交わしながら駅前を通り過ぎ

森の入り口に近づきました

行き交う人々はハイカーの人々でリュックサックを背負い森の中では

あちらこちらから話し声や笑い声が聞こえて参りました

整備された道路には

落葉樹が風に飛ばされて

宙を舞っております

立派な市街地となっ

たリオンを訪れる観光客も増大し

フランソワの家は市街地の中心に成っておりました

叔父様の私財を使って変貌したリオンはフェラン山に行く観光客の

スポットとして駅もフランソワの家の近くに造られこのリオン駅で乗り換えて

フェラン山のアネット湖までモノレールに乗車して行くのです

今は冬の時期のためアネット湖行きのモノレールは運行休止中で御座いますが

ホテルで働く執事達は食料品を毎日新鮮な野菜や肉等を載せて到着する

モノレールに受け取りに行ったり王国に帰宅したりとモノレールは

実際には毎日動いております

その為に冬の時期でも動かせるようにモノレールは長い建物がアネット湖まで

続いているのです

両脇にはガラス窓が取り付けられ左右の景色を眺めながら

湖までの時間を有意義に満喫出来るように作られたのです

冬の時期でもアネット湖には行けるのですがアネット湖では積雪があり

危険が伴うために今の時期は休んでいるのです



                                 ・・・つづく