小鳥達の鳴き声で目覚めたフランソワはいつもよりも多い小鳥達の

鳴き声に気付きました

早速パンの支度をして窓を開けますとカラスやキツツキまでもいるでは

御座いませんか

たくさんの小鳥達は久し振りのフランソワに逢いたくて集まったのでした

『おはよう 皆さん何故僕が帰って居る事を知ったのですか』

小鳥やカラスまでも話しだすので

セキセイインコから聞く事に致しました

『おはよう セキセイインコさん

僕の帰宅は誰からきいたのですか』

『キツツキさんがホテル前で

見かけたそうです』

『キツツキさん 

あの時間は外が真っ暗なのに

良く僕だと分かりましたね』

『私の家はホテル前の木立の中にあるのです 

巣穴にいるときフランソワ様の『ありがとう御座いました』と言う声が

響いてまいりましたので急いで覗きますと自動車に乗られる所で御座いました 

嬉しくてお名前をお呼びしたのですが聴こえなかったようで明日逢える事が

嬉しくて早朝に起きだし皆に伝えたのです

皆大喜びで嬉しがっておりましたが余に早くお家へ伺うと失礼だと思い

時間を合わせて皆で来たのです』

『気遣ってもらいありがとう 皆に逢えて嬉しいよ 

今からパンを並べるからそこで待っていてね 

前より台が幅広く成りましたね』

『お父上は私達がたくさん来るので台を大きくしてくださったのです』

『そうでしたか パパが毎朝パンを並べて下さるのですね』

『そうなのです みんなお腹一杯になって森に帰るのです 

ありがたいと思っています』

フランソワは久し振りの同じ顔ぶれの仲間達との再会に嬉しくて

フェラン山の話を聞かせて上げました

小鳥達はパンをついばみながら初めて聞く山の話しに聴き入っております

白鷲がいつも来る事や北壁には雪が積もりアネット湖より上の方は

雪が降って居る事を初めて知った小鳥達は遠い山を眺めながら

フランソワの話しに聴き入っておりました

『全部食べてくれてありがとう 

今夜学校へ戻るのでまた暫らく逢えなくなるのがさみしいな 

またクリスマス休暇には帰るからそれまで楽しみに待っているよ

じゃぁ また逢う日まで元気でいてね』

『ありがとう御座います』小鳥達は一斉にお礼を述べると

まだ薄暗い空に向かって嬉しそうに飛んで行きました

暫らく飛び去った空を見つめながら

うっすらと大空に浮かぶフェラン山を

眺めると今の時間は軍人達が集合して

先頭の雪を吹き飛ばす除雪車の後に並んで

山道を走っている頃だと思い出しました

学生達の歩く道と王国の民達の道を5班に別れて歩きやすくして

くださるのですから軍人達にはいつも感謝の思いを持っておりました

体力づくりも兼ねての毎朝の訓練は大変だろうとフランソワは思い出しながら

厳しい訓練と鍛錬によって王国を護って下さる真心に手を合わせたフランソワでした

窓を閉めてから暖炉に少しだけスコップで石炭を投げ入れたフランソワは

またベッドの中に滑り込みもう少し寝る事に致しました

日曜日の朝は時間がゆっくりと進む様な気分になったフランソワは

いつの間にか軽い息遣いが聴こえだし気持ち良さそうに眠りの世界へと

引き込まれ沈んで行きました

どのくらい寝ていたのか美味しそうな香りで覚醒したフランソワは

東側の窓に差し込む明るい陽射しを浴び眩しさに一瞬眼を閉じてしまいましたが

フランソワはすぐに起き出し着替えを始めました

リビングからは父の好きなシューベルト作曲《冬の旅》のメロディーが

美味しい香りを乗せて聴こえて参りました

優雅な朝のいつもの風景が甦り休日には必ず聴こえて来るのが我が家の恒例で

御座いました

気付けば幼い頃より蓄音機の前で音楽を聴かされていたフランソワは

音楽が聴こえると今日は休日だと気付きはしゃいだ事を思い出しておりました

フランソワの好きな楽曲はシューベルトの《美しき水車小屋の娘》で

お家の水車小屋の中で良く鼻歌を歌っておりました

今思い起こせば音楽や歌劇を数え切れないほど観劇したり聴いてこられた事の幸福感が

今になって呼び起こされたようで両親の教育は決して強制ではなく自然に情操教育として

身についていた事に気付かされました




                            ・・・つづく