まだ入学して余り日が経たずに帰宅したフランソワには学生達に対する

後ろめたさもあり先程の父親の言葉に反応し逃げて来てしまった後悔も

あわせてもっと大人にならなければいけないと思いながらもあの学生の

卑怯ないたずらがフラッシュバックの様に脳裏を駆け巡りました

裸になったフランソワは温かいシャワーのお湯に打たれながら涙も一緒に

流してしまおうと顔を洗い出しました

そしてオリーブ石鹸を手の中に入れて泡を出しもう一度丁寧に顔を洗いだしました

その後いつものように頭を洗い身体を洗い手足も丁寧に洗い落としたフランソワは

綺麗に泡を流した様にさっぱりとした気持ちを

取り戻したのでした

母親がおいてくれた下着を付け

パジャマを着てから

暖かいガウンを背中に掛けて

松葉杖までも置いてある

気遣いに感謝したフランソワは

バスルームから出てすぐに

階下のリビングを覗きました

そこには父親の姿は無く母親がソファーに寄りかかっている姿が見えました

『ママー 杖まで置いてくれてありがとう御座いましたぁ』

その声に頭を上げたマリーエは微笑みながらフランソワの瞳を見つめ

『どう致しまして お坊ちゃま』

『何だよ それはぁ』

同時にフランソワと母親は大きな声で笑い出してしまいました

フランソワは杖を突きながら階下へおりて参りますとすぐに

母親に抱きつきました

優しく抱きながら頭が濡れている事に気付いた母親は傍にあるタオルを掴み

フランソワの頭の毛を拭き始めたのです

フランソワはその好意に敢えて何も言わずに黙って拭いて貰いました

ソファーに座って頭を拭いて貰いながら嬉しさが涌きあがりました

僕にはたくさんの友人や家族がいる 

こんな幸せ者は何処にもいないであろうと

確信したフランソワは今夜帰宅した事が良い結果に繋がるようで

嬉しくなったのでした

一人で笑い出したフランソワを見て母親も一緒に笑いながら

昔を思い出したようです

『フランソワ 

良くこんな風に

あなたの頭の毛を

拭きましたわ 

ママ思い出したわ

でもいつの間にかこんなに大きく成長したのね』

『ママ それは身長だけですよ 

退院時身体測定されたのですが身長が182センチになって居ましたよ』

『まぁ やはりそうなのね お父様をもうすぐ越すかもしれませんね』

『パパも叔父様も大きいですからそこまで大きく成れるでしょうか』

『卒業してからその身体測定の時の高さが182センチ卒業前の測定は

確か176センチでしたから6センチ伸びているのですもの

あなたはまだ16歳でしょまだまだ伸びますわよ 楽しみですね』

『お父様と叔父様は同じ位でしたね』

『パパは188センチでマリブルは189センチだと思うわよ』

『僕も部活動を頑張って体力筋力気力も付けて成長できるように努力します』

『中々言い事を言うように成りましたね』

上の方から父の声が聞こえてまいりました

『パパ 聴こえちゃいましたか ちょっとだけ恥ずかしいなぁ』

『何も恥ずかしい事など無いだろう 

先程の《体力筋力気力も付けて》は最高の言葉ですよ 驚いたなぁ 

やはり少しずつ成長するものなのですね パパも安心したよ

君なら色々な難問に行き着くたびにきっと乗り越えられる力を

神様が与えて下さったのです

これからも団体行動の中で生活して行くには

メンテル的に難問が立ちふさがっているものです

己に勝ってこそ乗り越えられるものだとパパはそう思いますよ』

『パパ ありがとう御座います 心身共に強くなります 見ていてください』

『いつだって見ているさぁ 

離れていてもいつもフランソワばかりを2人で心配しているのですから

何かあれば電話を掛けなさい』

『そうよ ベルが鳴るたびにフランソワかしらと楽しみにしているのよ』

『パパ ママありがとう御座います 安心して明日お山に帰れます』

『明日は久し振りに寒いだろうが管理人の家に行き ついでに山歩きをしないか』

『やったー ぼく嬉しいなぁ 3人で歩いて来ましょう』

『そうと決まったらもう時間が真夜中になります さぁ もう寝ましょう』

父親の号令で三人はフランソワと一緒にスロープを使って二階へ上がり

就寝する事に致しました




                               ・・・つづく