リビングに行き両親と語り合うのは11月1日マリブル叔父様ご夫妻に

誕生したカエデンタッキー王子とアイリーヌ王女のお披露目から約3週間が

経っておりました

両親にとっては何故か心が騒ぎ出しフランソワの身の上に何か起こったのか

心配になり始めました

それを察知したのかフランソワは両親に心配をかけてはいけないと笑顔を絶やさず

愉しい話や失敗談などを話し始めたのでした

久し振りの母親が入れるコーヒーと美味しいケーキを頂きながら毎日が冒険のようで

愉しい学生生活であると強調しながら皆様の優しさに感謝をしている事を伝えたのです

暖炉には真っ赤に燃える石炭の炎がメラメラと優しく迎えてくれているようで

フランソワは今夜実家に来て良かったと

改めて感じました

両親の強い愛情に包まれている

我が身の幸せを心から

感じ取る事が出来ました

ルワンさんの優しさを再認識した

フランソワは明日午後10時の

迎えが来るまで

勉強を止めて両親と一緒に過そうと決めました

念の為に教科書を数冊持参したフランソワでしたが実家の香りに包まれた事で

病んだ心はどこかへ飛んで行った様に心も落ち着き心拍数も通常に戻り

いつもの愉しいフランソワに戻っていたのでした

両親と語り合う面白さに時折大笑いをしながら暖炉の温もりが

心の中までも暖めてくれたようです

気付けば午後11時半を過ぎておりました

『フランソワ 勉強しなくても良いのかなぁ こんな時間になってしまったが』

『パパ 僕今夜だけは勉強をしません せっかく愉しい時間ですから楽しみます』

『そうよ フランソワあれだけ勉強して来たのですから明日帰るまでは自由に

過したら良いわ ママは嬉しいわ 今夜のサプライズは最高のお土産よぉ』

『大学の話を聞かせて貰ったが寄宿舎は学部毎に振り分けられているのかな』

『勿論です 食堂だけは一緒に食べる大学生だけのホールがありますよ』

『お食事内容はどうなのかしら』

『ママ 食べ盛りの学生達ですから種類はたくさんありお肉料理セット

魚セット 野菜は大盛で好きな量だけ頂けるのです 朝食 昼食 夕食と

3食ありますのでトレーに入れられたお料理を渡して頂き足りなさそうならば

パンやパスタや野菜は自由に追加出来るのです』

『マァ愉しそうね 美味しいのですか』

『勿論美味しいですよ 本格的な資格を持ったシェフ達が腕を振るって

作っておりますから 毎日楽しみなのです デザートも毎日違った

美味しいケーキが置いてありますよ クッキーもですよ』

『それらが総て無料なのは大きいですね マリブルの手法は素晴らしいものです

立派な寄宿舎もあり温泉プールもあるなんて幸せな学生達ですね 

入学するために勉強を死ぬほど頑張った甲斐はありますね 

だからこそ優秀な学生が集まるのですから未来は明るい展望が見えて来ますね 

フランソワも大変だろうが身体に気を付けて多いに学生時代を謳歌して欲しいよ 

男子校だから規律も乱れないだろうし素晴らしい大学ですね』

『あなた先にシャワー浴びて参りますわ フランソワは大丈夫ですか』

『もう少しパパと話していますからお先にどうぞ ママ』

マリーエは二階へ上がって行きました

残ったフランソワに突然父が話しだしたのです

『フランソワ もう足の傷は大丈夫なのですか 

義足は痛くは無いのかい』

『パパ ありがとう 

もう大丈夫です 

ご心配をお掛けしてしまい

申し訳御座いませんでした

医師に成ろうとする僕が

傷に気付かずに部活の練習にプールで泳いだ事でそこから細菌が

入ってしまい僕の失態です 

義足が合わなくなっていたのでしょう
 
これからは気を付けます あの時はご心配お掛けいたしました』

『気を付けなさい ハンディーを持っている事を忘れてはいけないよ 

隠すことは却って不幸を招く事も有るのですから 

フランソワ何か心配事などが有ればいつでもパパに電話を掛けなさい 

教師ですからね 応える事は可能ですよ』

レオノールは笑顔を浮かべながらフランソワに優しく伝えました

その言葉を聞いたフランソワは一瞬心が揺らぎましたが笑顔を作り

王国での生活の愉しさに満足している事を伝えると急に落ち着きが無くなり

父親にシャワーを浴びて来る事を伝え急いで2階にある自室の長いスロープを

歩きだしました

何故か父親に総て見透かされているような気持ちになったフランソワは

急いでスロープを歩きながら窓から見えるネオンの光や外灯の明かりが

とても懐かしく見えたのでした

フランソワは自室に入る前に下を覗くと父は紙面に向かって

何か書いている様で御座いました

久し振りの部屋にフランソワは暫し佇み見渡してから

急いでバスルームに入りました

バスルームの中には着替えと厚めのガウンが綺麗に並べてありました

先程母親が先に上がって来た時にすぐに用意してくれていたのだと

感じたフランソワは母親の優しさに涙がこぼれて参りました



                               ・・・つづく