フェラン山にも美しい夕焼け雲が神々しいほどにくれない色に光り輝いております

太陽が山の頂上に今にも引き込まれて行く様でございます

真っ赤に燃える赤銅色の太陽は赤々と燃えながらフェラン山の中へと

引き込まれて行きました

くれない色の余韻を残し天空のキャンパスに桃色と黄金色を塗りつけて

次第に薄れ行く姿にフランソワは思わず今日味わった驚愕の事実を

この空と共に封印しようと心で思いました

その時階下から降りていらしたお爺様御婆様は礼装に着替えられ

奥ゆかしき風情を漂わせながらにこやかにフランソワの名を言いながら

近付いて来てくださいました

『フランソワ おめでとうもう幾つになりましたか』

『はい11歳になりました』
$お姫様のお散歩日記
『早いものだなぁ 時の流れと言うものは もう11歳ですか』

『もう直ぐ出発するそうですよ フランソワ忘れ物をしないようにね』

『はい さっき本をしまいましたので何もありません』

そこへ執事達が来て一礼しながら出発の知らせを伝えに来たのでした

玄関へ参りますと管理人は馬車を連れて前まで来ておりました

三人は馬車へ乗り込みドアが閉められました

外はまだ夕焼け空の余韻が残りまだ明るい道が見えておりました

馬車は静かに出発いたしました

外の道路に出た馬車は走り出しました

フランソワの家まで急いで10分ぐらいで到着致します

両親達は三人の来るのを楽しみにしているに違いないとひとり

ほくそえんでおりました

程なく到着した三人は歓待され中へ入りました

母に呼ばれたフランソワは急いで自分のお部屋に行き礼装に着替え始めました

階下からは楽しそうな笑い声が二階にも聞こえて参りました

その時です

外からノックの音が致しました

父親がドアを開けますとそこには弟マリブルの姿がありました

『兄上様 お久し振りでございます』

『やぁ 本当に久し振りだなぁ』と言って抱き合いました

『シュレーナさんお元気でしたか 御待ちしておりました』

マリブル達は広いリビングへと案内されると両親に気付いたマリブルは

走り寄って優しく抱き締めて挨拶を致しました

フランソワは先程より賑やかな声に気付き慌てて階下へ

降りて参りました

『マリブル伯父様ようこそいらっしゃいました 』

『逢いたかったよ フランソワお誕生日おめでとう』

『ありがとうございます シュレーナ様お逢い出来て嬉しゅうございます』
$お姫様のお散歩日記
『フランソワ様随分大人になられましたわねぇ 

おめでとうございます』

『ありがとうございます シュレーナ様』

フランソワは嬉しくて心がはじけ飛んでいるような快感を

覚えました

自分の為に遠くから来て下さった気持ちが

こんなにうれしい事だと気付きました

全員が揃ったところで直ぐに宴は始まりました

今日初めて管理人夫妻を招待し日頃の感謝を込めて

フランソワのお世話に父親は感謝を申し上げました

皆様からのプレゼントを受け取るフランソワの瞳はキラキラ

輝いておりました

楽しいお話でお腹を抱えて笑う父親を見てフランソワは嬉しくなりました

今までの父ではなく心の何かが変わったようで

陽気な父を見るようになったのは

あの時の奇跡の再会からでした

人は環境で性格も変わって行く事を学びました

お爺様御婆様達も嬉しそうに笑顔が耐えません

時には大きな声を出して大笑いをされるお爺様は豪快でございました

楽しい時間はあっと言う間に過ぎてしまいます

フランソワは明日学校がございますので午後10時に無理やり

寝かされてしまいました

もっと一緒に遊びたかったフランソワでしたが

いつの間にか深い眠りへと入って参りました

大人達は楽しそうに近況を語りながらマリブルの山の状況や

工事の進行具合を説明するマリブルの話に楽しそうに

聞き入っておりました

外では漆黒の闇の中でフクロウの鳴き声が聞こえて参りました

『今宵はそろそろお開きにしようじゃないか レオノール』

その時お爺様は少し遠慮がちにレオノールの顔を見つめ話しました

『お父様お母様 申し訳ございません 配慮に欠けてしまいました

お疲れになられた事と存じますがでは 皆様ごゆっくりお休み下さいませ』

一階のリビングで待機していたふたりの執事達が呼ばれました

それからお爺様御婆様マリブル夫妻は執事の乗って来た馬車で

別荘へと帰って行かれました

管理人夫妻もお爺様の執事が騎手となり管理人の馬車で

闇の中蹄の音を響かせながら消えて行かれました

しばらく時間が経った頃レオノール家はようやく電気が消され

漆黒の闇へと同化されて行きました



                                 ・・・つづく