窓から入る爽やかな風が部屋の中を吹き抜けて行きました
朝焼けを知らせる小鳥達の爽やかな鳴き声が聞こえ始めました
夢の中で小鳥達の声を聞きながらフランソワはまだ眠りの中で
ございました
両親は小鳥達の声で目覚め朝陽を浴びるためにお城の
最上階の窓辺に立っておりました
窓からは深い森が朝陽に照らされながら眠りの中から目覚めて行く
広大な風景は自然と調和しながら私達が生かされている実感を目の当たりに
する事が出来ました
午前１１時にリヨン駅を出発致します
完全に東の山から太陽が顔を出してから部屋へ戻った両親はまだ眠っている
フランソワを無理に起こす事に致しました
３人で早朝のアリネット湖に行こうときめていたのです
フランソワを起し三人で手を繋いで湖に向かいました
フランソワは嬉しくなり両親の手を解き走りだしました
早朝の森を分けて通る道は霧が出ていて白い靄の中を爽やかな風が
身体をすり抜けて行きました
『フランソワ そんなに走らなくとも時間はたっぷりとあるんだよ』
『わかってるよぉ ただ風が気持ち良いので走っているだけだよ』
『そんなに早く走ると熊がいるかも知れないから気をつけろよ』
フランソワはその言葉でぴたっと止まりました
後ろを振り向きまた両親の方に必死で走って参りました
『ごめんなさい パパ ぼく鈴を持っていないから』
『お父さんは ほら大きな鈴を持って来たよ』
それを聞いたフランソワは安心したようにまた両親と手をつなぎ
早めに歩き始めました
するとどうでしょうアリネット湖に着いた三人は驚きました
中ノ島は靄で全く見えませんでした
森に広がる靄の白さが情緒的に太陽の陽射しに映えて湖に
美しく映っておりました
鏡となったアリネット湖は靄と同時に明け行く空の色で
埋め尽くされておりました
この幻想的な風景は絶対忘れる事は無いとフランソワは思いました
白鳥やフラミンゴには会えなかったフランソワでしたが
始めてみる美しい風景を観る事が出来た喜びで幸せでした
『さぁ 城へ帰るよー フランソワ』
『はーいわかりましたぁ』
フランソワは走って参りました
『パパ 熊さんにあわなくて良かったね』
『安心は禁物だよ 何時出るかも知れないんだよ』
それを聞いたフランソワは怖くなって急に静かになりました
両親の手をしっかりと掴み神妙に歩き始めました
早朝の風の爽やかさは特別な心地良さでございました
両親は仲良くお話をしておりますがフランソワの心は怯えておりました
早くお城の中に帰りたくなっておりました
靄が視界を遮断して怖さが倍増するのでした
やっと門扉の明りが見え始めました
フランソワはやっと落ち着きを取り戻しました
大きな門の中に入りロビーに着いた時何故かほっとしたフランソワでした
お部屋に入ったフランソワはアリネット湖の美しさについて両親に
一所懸命説明し始めました
余程印象的に映ったのでしょうか湖の美しさと靄の怖さも入りつつ
フラミンゴと白鳥には会えなかったけれどまた来たいと力説を
繰り返しておりました
両親は無理に起こして連れて行った事に大変満足しておりました
多少疲れたのでしょうか
ソファーに座っていたフランソワはいつの間にか眠っておりました
朝食にはまだ早い両親達もベッドに入り軽く寝る事に致しました
森林浴をした心地良さで直ぐに眠りに就きました
外では美しい鳥達のさえずりが森の中で響き渡っておりました
城内は静寂が保たれ穏やかな時が流れておりました
階下から朝食の香りが風に乗ってフランソワ達の部屋にも届きました
ちょうどその時眼が覚めたフランソワはおいしそうな匂いに
気付きました
両親を起こすと身支度を整えお部屋でお話をしながら執事の来るのを
待っておりました
その時お部屋のドアにノックが響きました
『はい どうぞ』とフランソワが応えました
『朝食の時間でございます おいで下さいませ』
『ありがとう 直ぐに参ります ご苦労様』
三人はダイニングへ参りました
御爺様達は既にお座りになっていらっしゃいました
『お待たせしてすみませんでした』
『やあ お早うフランソワ 森に出掛けたんだってなぁ
何も出なかったのかなぁ』
『お早うございます 朝両親に起こされて湖まで行って来ました』
『それはよかったわね 良い運動になりましたのね』
『さぁ 食事を始める事にしますよぉ』
いつものお祈りが始まりました
御爺様のお話はフランソワに解りやすいような説明をして下さる優しい
一面をお持ちの紳士でございました
お祈りが終るとお食事の温かいスープが運ばれて参りました
次から次へとお料理が運ばれ楽しいお話をしながら最後の
デザートと紅茶が運ばれて参りました
デザートはさくらんぼの実を潰してゼリーで固められその横には
アイスクリームが添えられてチョコレートで軽いタッチの線が
デザインされておりました
フランソワにはミルクティーが運ばれ御爺様御婆様達との最後の
お食事時間でございました
１１時の汽車で帰るフランソワ達でございます
ゆっくりと堪能しながら御爺様の楽しいお話をフランソワは達は
笑いながら聞いておりました
・・・つづく