「こぼれ話」 ペーパードライバーがやって来た! | フリーランス・ドライバーという働き方

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~入ってみないと分からない業界のお話~

配送の内勤をやっていると、いろんなドライバーさんが面接に来ます。

今回は、ペーパードライバーが来たお話です。

 

ペーパードライバーA君は知人のつてで入ってきた23才の若者でした。

おとなしい性格で、今までの職場でうまく馴染めなかったようです。

 

配送の仕事は基本的に1人でやりますから、人と協力するチームワークプレーではありません。

 

これなら、変な人間関係に煩わされることなく、気を楽にして仕事ができるだろうということでした。

 

若いし、力もありそうなA君。見かけからして真面目そうです。

これは大丈夫だろうな、と思いました。でも、ペーパードライバーだと言います。

今までレンタカーで、数度運転して出かけたくらいのようです。

 

でも、若者だし2~3日運転していればすぐに感覚を取り戻すだろうと思いました。

で、私が助手席に乗り試運転させました。ちょっとその辺を一回りね。

 

1分後、私の心の中は…

「俺の考えが甘かった!

若者でも運転の苦手なヤツもいるんだ(冷汗)!」

 

 

印象から言えば、運転免許取り立てのオバサン?いや仮免のオバサンか!

 

初見では、

・直線道路では40Km以上のスピードを出すのが怖い

・狭い道路では他の車とすれちがうのが怖い

・バックミラー、ドアミラーの確認がおろそか

・ブレーキングのタイミングが遅く、ヘタすると追突しそう

・左折時に車両感覚がつかめず、障害物があるとぶつけそう

・バックがままならず、車庫入れできない

などなど

 

配送の仕事は、別に車の運転が特別上手でなくてはいけない必要はありません。

普通に安全運転ができればいいだけです。

 

でも、道路わきに停車させたり、狭い道路を走ったり、切りかえしが必要なことも多いでしょう。普通に運転できれば当たり前なことなのですが、明らかにそれもできなさそうです。

 

この若者が、はたして配送の仕事ができるようになるのだろうか?

どうしよう…

 

 

 

特訓することにしました。

 

 

広く長い直線道路があるところで、50Km以上スピードを出す、大型店の駐車場でカラーコーンを立ててバックの車庫入れ練習、右折左折時の外輪内輪の差をつかむ練習など、毎日毎日およそ2週間。

 

 

ようやく運転自体は普通に近いレベルまで到達してきましたヽ(^。^)ノ

そして、ここからが本当のスタートです。

 

まず、比較的簡単な仕事であるお買い物便をやってもらいました。

スーパーでお客様が買い物をしたお荷物をお届けする仕事です。清算済なのでお金も扱いません。

 

お客様は、主にお年寄りが中心です。自分で持ち帰るのが大変な場合に依頼される仕事だからです。

 

A君は力があるので、荷物を持つのはまったく問題ありません。

最初はぎこちなかったお客様への応対も徐々に慣れるにつれ、表情もにこやかにスムーズになっていきました。

 

1ヶ月ほどの間、この仕事で、配達先の番地がイレギュラーな場合の探すコツなど、配送の基礎の基礎をつけてもらいました。

 

 

次の関門は「宅配」です。

 

 

配送の仕事は、いろいろな案件がありますが、1人前のドライバーとして案件をまかせるには、目安として「宅配」でコンスタントに1日100件は配達できる力量が必要になります。

 

そこで宅配で本当の意味での配送の基礎を身につけようというわけです。

 

 

最初の1週間は苦労したようです。

周りは自分よりも20も30も年上のベテランさんばかりだったでしょう。

どうして自分はこんなに要領が悪く、配達数がこなせないんだろうと思ったでしょう。

 

実際、「自分は配送に向いていないんじゃないか」と何度も思ったようです。

 

もちろん、我々会社の人間みんなで、やり方やコツを教え、励ましました。そして、徐々に徐々に、配達数も上がるようになってきました。

 

もともと力もあるし、体力もある若者です。

3ヶ月後に、平均100個の壁をポンと飛び越えました。

 

4ヶ月、5か月目はかるく50万円を超える売り上げをあげました。

若干23才の新人が、月収50万もらえる仕事って、そうそう転がっているものではありません。

 

本人も、自分に自信が出てきたようで、表情も晴れやかになっています。

 

その後は一時的に別の仕事に就いて、骨休めかつ経験値を積んでいますが、来月からまた宅配の仕事に戻って、ガッツリと稼ぐ気でいます。

 

よくやったA君!

君はペーパードライバーから這い上がった希望の星だ!