2018年9月  石川 三平

予期せぬ事が起こるもんだ。

① 原稿を執筆している今、筆者は左手首をコルセットで固め、三角巾でつるしている。一昨日北陸に義母の見舞いに行った帰り、旧友の命日だったので線香を上げに自宅に立ち寄った。帰り、玄関の階段を踏み外し転んでしまった。左で身体をカバーしたが痛打してしまった。どこかの老人が自宅で転んだとの新聞報道のようだ。一晩冷やしたが、痛みがとれないので、翌朝、女房と病院へ。レントゲン検査の後整形外科診察、「左手首にヒビ骨折です」と。コルセットをし三角巾で吊るされた。極めて不自由である。日ごろの運動不足の賜物である。

② 7月の酷暑の中、何を考えたのか一歩も外へ出ず、クーラーのもと「物理学」に専念した。筆者は早稲田大学政経・政治の出、物理は専門外。門外漢。しかし昔から興味があり物理の本は読み続けている。今回はアインシュタイン物理学と量子物理学。特にダークマターに迫りたかった。アインシュタイン物理は「時空が歪む」世界、数学方程式に宇宙項を加える。人間が捉えられる物質の最高速度は光の秒速30万キロ。一方量子物理学は10-10の世界。素粒子の世界である。光は波であると同時に粒子で質量がある。ハイゼンベルグの不確定性原理により位置を特定できない。ここがアインシュタインが納得できなかった点。これで宇宙が急速拡大していることが分からなかった。近代天文学技術は急速進歩。物理学の基本は鉛筆舐め舐めの理論と検証、加え観測実証の2つが揃わないと認められない。ダークマター観測はまもなくだが、論理的には宇宙の理論上のエネルギー総量がダークマター、ダークエネルギーの存在を証明しているという。驚いたのは、こんな門外漢の筆者でも100冊以上も物理学の文献を読み続けると「一般の理解」を超える範疇に達したということだ。好きこそものの上手なり。

◆新聞販売店企業の経営は今年の夏は酷暑をも通り越している。もはや成り立たないに近い。減り続ける折込収入、同新聞売り上げ。経営内容をみると下がらないのは新聞原価だけ。小手先の販売経費管理の削減だけでは追いつくはずもなく、遂にキャッシュフローを追う状況に陥った。某系をみると、8月月末の納金(11月予定の賞与積立金の半額戻し)はなんとかクリアできるが、9月5日の拡材費引き落としが迫る。もっと怖いのは9月中旬の従業員への給与支払い。無理だろう。最後は9月の本社納金。店主は自分の給与はもちろん通常の返済金も払えない。でも押し紙納金代だけは取られている。これが現実、本社の社員さんは自分の身に同じことが起こりえないと考えているひとばかりだが、その危機は直前に迫っている。

◆某新聞社の販売局のK君。彼とは20代後半から北陸支社で担当員を4年以上共にし、社宅も隣、通勤も彼の車でしていた仲間である。筆者の周辺で「あんなに辛口の三平さんだが、妙にK君のことは悪く言わない」との評が多いのは、筆者が彼を知り過ぎていることと、筆者の女房が彼と同郷でかつ彼の出身高校の後輩であるというのが理由だ。とは言っても販売店がここまで苦境に陥っているのになんの策もないのか、彼の頭の中を「物理学的」に考えてみた。

彼も文系である。物理学的思考とは「当たり前に見える存在すら疑問に考えること」である。彼の視覚になにが見えているのか。近年、ダークマターと同時に測定できそうで測定できていない力として「重力波」がある。力には素粒子レベルで働く「強い力」「弱い力」そして「電磁波力」、極めて小さい「重力波」である。ダークマター考察を進めていくと「次元」という問題にぶつかる。次元越えはこの「重力波」を通してしか測定できない。現在はその「重力波」すら測定できないので、3次元世界に住む我々には存在すると言われている「5次元世界」のことはわからないはず。だが彼は5次元世界がみえて3次元世界にいる我々の行動がママ事遊びに見えているのではないか、と思えてきた。あそこまで「なんにもしない」のは3次元では特筆ものだ。同じく何も考えていないと言われている担当員人種。今時「回収」という言葉を乱発し、予定されたことのみこなせば、25日に高給が振り込まれ、お店に離縁されてもノウノウと生きる担当員さん、「今、就活したらどうなるのでしょう」。売り手市場なのに誰も買わないでしょう。