◆もちろん新聞販売店商売を安易に考えているわけではない。中国、インドの台頭を目の当たりにして、今、「仕事の質の変化が問われる」時になって改めて考えた。新聞社入社時から気になっていたこと。周りの大手企業を見ると、売り上げが兆単位(EX、家電量販店のヤマダ電機ですら2兆円を超える)なのに新聞社は大手連結でも最大4000億。世間の大手企業は株式会社で自社株が上場して公開されて直接金融。新聞社はほとんど非公開。新聞社は中小企業ではないのか。自身のことだが、大学卒業時「お前、留学してMBAを目指さないか」と言われたことがあるが、世間(一流会社や今や悪口の対象の官僚の中)ではリーダーがMBA(経営学修士)を持っている人は大勢いる。だが新聞社内での保持者はほとんど聞いたことがない(いても稀)。なのに「世間に対して威張っている」という印象。先輩の象徴的な言「新聞社社員は入社時は優秀な奴もいるが、40歳になるとダメな奴が多い」。MBA保持者やTOEFL900点保持者がいいと言っているのではない。現在では企業は仕事の「質」を問われる競争にさらされており、そうした「資格」はすでにコモディティ化(一般化、当たり前化)しており特別扱いされない、という。でも30年以上前から新聞社はそれすらもないのである。

◆こうした新聞社と取引してきた販売店は当然の如くのように「進化」できていない。もちろん販売店主の中に、MBAやTOEFL900点保持者がいるのも聞いたことがない。今、販売店経営が急激に悪化した状態にある中、「たかが新聞社の窓口係りでしかすぎない担当員(数少ないが、中にはしっかり自分のビジョンを持っている人もいるにはいるが)の言に右往左往しているように見えるのは僕だけか。キチット商売している代表者として自信がないせいでは、と危惧している。経営サイド(バランスシート)からみると「残紙は経費」。あくまで新聞販売店の商売の観点で捉えなければならない。昨今の販売店主さんと話すと、自店の経営(バランスシート)の話になると、よく理解していない様子で話が進まない方が多い。それでいて本社政策は雄弁に批判されるが、経営上の建設的な意見は聞こえない。あてがい扶持の商売ではない。自分は自店経営をこうしたいんだ、という意志、主張、設計図はどうしたんだろう。点検は「自分の日常生活」にある。

◆「新聞販売店は人的集約産業」である。この仕事のポイントは全てこれにある。もっと絞れば「配達」。即ちお客様に直接届けられるデリバリー機能である。それも最低早朝と夕方。これに他者には絶対に負けないシステムを持たなければならない。ここに不安があると先に進めない。ここが商売の素(他者が安易にできない)。人的集約である、とうのは人だから常に不安要素がある、のをいかに安全(将来も)しておくかだ。「質」を確保したうえで、常時安定(増減を極端にゼロにし、入りを用意する)化する、そして「質(お客様満足度)」をさらに追及すること。これのポイントに生活、神経を集中しなければならない。ここが相当甘い方が多い。受け皿の「社会保険」や「地方税の源泉」がないのは論外。従業員に「仕事はいいかげんでいいよ」と言っているようなものだ。営業(今、拡張といわれる)でお客様に感謝されることは稀だが、お届けして拒否されることはなく感謝されることが多いのを思い起こせばわかるだろう。今後の新聞販売店の存亡は「デリバリー特化」である究極は「ラストワンマイル」(お客様への最後の一マイルを制する)だと考える。管理区域は別としても「根源となる配達区域を50部単位」としている店がある。社会保険加入週20時間の話まで出ている中、パート従業員配達が大切になる。彼らへの収入奨励は2区域、3区域の配達となる。これが部当たり賃金だと「なんでもお届け」が当然可能。支障はない。

◆新聞業界に安住しているうちに、世の中は大きく変化、前進している。本当に気を付けなければならないのは「コモディティでは商売、競争にならない」ということだ。企業主なら「誰でもできる仕事に多い賃金を払いたくない」のは理解できるだろう。前述のMBA資格やTOEFL900点保持者は世界では溢れ、この資格では特別採用されることが、実は無くなっているのだ。企業間競争に生き残るための有為な特殊能力を持つ者だけが、かつての高レベル生活を営める。近年、東大卒、国立大学院卒のフリーターが多く出現している。新聞販売店主もある意味「既得権者」。批判する官僚組織となんらかわらない生活。本来、厳しい競争に打ち勝つべく「デリバリー特化のために神経をすり減らす生活」をしているか検証して欲しい。ラストワンマイル(究極はお客様の信用を得て、お金『小口現金』を届ける業務までできる)へ販売店を脱皮できる努力生活をしている者以外、収入や生活レベル向上を嘆く資格はない時代だ。現場の本質を見抜け。易しいことを難しくしている。易しくすることに特化。人々は易しいことをすることは得意だ。ポイントは「人々にいかに気持ちよく動いていただける」かだ。業界人は「誉める」ことをレベルアップのスキルとすべきではないか。

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