◆9月納金のことを心配している。これが販売店主にとっての喫緊の課題だろうに、7月に入り某社が突然大震災を冒涜するようなとんでもない目標政策を発表したため、対抗紙まで巻き込み混乱の呈を見せ始めた。この夏、炎暑の中「古代中国帝国史」を片っ端から読みこんだが、その中で帝国崩壊の原因ともなったものに「宦官(去勢された皇帝の側近)政治」がある。政治に疎い若き、無能な皇帝に代わり政治を自分の私利私欲のために執行するという横暴が横行し、汚職が横行、民が苦しみ、結果各地で反乱が起き、軍事力で制圧しようとするも失敗し、帝国が崩壊する。中国史は過去この繰り返しであった。我々の見方も変えていかねばならない。日本人であれば、記憶にある世界地図は中心に日本が位置しているものであるが、世界の各国の家庭にある地図を見ると違和感を覚えるだろう。史観も同様で日本史だけの史観というものはない。中華史観も同じく周辺の民族からみれば横暴な史観であろう。近世にいち早く近代テクノロジーを確立した西洋が西洋史観を確立したために、これが普遍的なものになってしまったのは否めない。新聞の世界も史観的見方が必要であるが、朝日史観とか読売史観といった狭い史観にしか当事者はいられないようだが、せめて日本社会史観、消費者史観から眺めなければならないのではと思う。

◆某社が起こした振動はどう波及しているか。発行社社員の極端な店に対するカード生産要求となっている。その形態を特徴的にみるとY系では「拡張団の押し日程」。A系では「特別店内生産カード要求」。Y系では最近連続の社員、販売店総力による紹介カード運動というのが行われた。4年連続であり、各所から悲鳴が聞こえたものだ。今回は危機を感じた販売局幹部が部内でも強烈な圧力をかけたため、新聞代(お金)を揚げた自分が払わないと取っていただけないため、ほとんど全て自分が払うはめになり、夏季賞与は全てそれに消えた社員が大勢とも聞く。販売店は利口で数店のグループをつくり、そのグループ内で現読者を紹介。監査を逃れるためのシステムまで作られ、被害が無いように工作。数だけはちゃんと消化するというのが大半ではないか。こんな内容では販売店の紙の実質増にはなりえず、再びの無謀な政策となった。Y系はこんな調子だから、今回もセールス特拡中心。馬鹿の一つ覚えの如く拡張団、情開SPの特別作戦ばかり。止めをまとめて作っていると担当員も販売店主も知っている。知らぬは、、、。

◆今回のA系の「特別店カード増作戦」はひどい。A社は昨年の取引制度改定と合わせて団との取引形態も変更した。お店と団との取引に本社は介入しないというもの。団が犯すお客様とのトラブルから逃れようというもの。但し団カードをお店が購入した場合には一定の補助金が出ているらしい。そして今はお店がカード購入しようとして団投入を社に依頼しても、斡旋もせず、自分で探し依頼してください、となる。これは卑怯と言わざるをえない。そして今回は販売店に対して強くカード増を要求している。お店が自店力でカード確保するのを店力回収というが、A系の自店回収率は異常に高くなっている。最近聞いた言葉に「特別店回収カード」なるものがある。要はお店が精一杯揚げられる限界以上のカード生産なるものだ。簡単に言うと「店公認のテンプラカード」。机上で作られ、実態は無いか、縛り、お金をいただけるようなものではない。何故こんなことが起きるのか。本社があまりにもカード要求を強くするため、報告書上で彼らの満足を作る為。これがどんどん積み重なるとどうなるか。実配は全く増えないわけだから、止めごまかしで多少調整しても残紙がどんどん増えることになる。自分で自分の店の倒産を早める手法でしかない。最近「その場しのぎ症候群」という病気が日本中に蔓延しているが、新聞業界もその類に入る。新聞社担当員だけがかかっているのではない。

◆自給回収至上主義、聞こえはいいが、実際はどうだろう。3業務従事者から現実の声を聴いてみるといい。無読化は商品の劣化とともに確実に進行しており、販売店は増えなくとも減らないようにするので精一杯。実際最高に従業員を配置し、彼らに協力してもらっても自店回収率は80%が限界だろう。区域を受け持っているということは、守りやすいが攻めにくい。無読者への「試読紙作戦」を展開しても刈り取りしずらい。ここにスマートな営業マンの必要性が生じる。これを無理に従業員に強要すると、切り取りが始まる。彼らがお客様から新聞代をいただかず(最近のはやりは値引きらしい)自分の給料で店入金をするかたちだからすぐ限界がくる。彼らが辞めざるを得なくなり、従業員不足に陥る。専業が減り、一人の配達部数は厖大となり、営業どころではない。店主は店公認の切り取り顧客をつくりつじつまを合わせる。「店管理読者」というらしい。悪循環の始まりだ。

◆担当員は「嘘をついていないまともな店」を見抜く力がなければならない。現役時代「裏付けのない報告書の数字は信用しない」という僕の方針をみんな大変だけど守ってくれていた。今の従業員数、昨年同月の従業員数、個々の従業員の揚げカード数、先月実績、今回の計画、進行度これらをみれば、「頑張ります」の話よりよっぽど信用できる。そして決して無理をさせない。「一時の無理は将来の納金をダメにする」。こうして数字に裏付けされたデータを上司に説明すれば、上司の裏受けのない命令は突破できる。最近の地区会で配布される資料を見ていると、地区全体の数字のような不要な資料が多く、やたらと時間も長い。販売店に商売としてのモチベーションを喚起していただくのがメインテーマなのに販売店主からはそんな話は全く聞かない。それどころか逆の話を聞く。社員は「その場しのぎ」をやっていれば生き残れると思っているらしいが、世界史観からみればそんなことはない。社員も販売店主も宮刑(去勢される刑)にかかってはいまい。創業時、王将の歌のように「通天閣に灯がともる。俺の闘志がまた燃える」を思い出してほしい。

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