◆何故か面従腹背(社から見ると従順)な体質の新聞販売店主達の最近の姿を見ていると、頭を上げるどころか、下を向いたまま怒りに震えているように見える。震災対応のまずさゆえの政府批判は盛況だが、新聞販売業の世界もとんでもない被害を被っているのに本社の対応スタンスは逆行していると思えるもので、店主で納得している者は皆無に近い。一部の社は部数の大台回復という名目だけの根拠もないことを言い出し、まるで販売店の現状を見ようともしない。販売店の現実は、① お金=折り込みは90%まで回復したが、部あたり100円、3000部の店で30万の前年マイナスで、店主の給料は取れていない。② 従業員給与は大きく下がり、賞与はゼロ、人不足状況が始まり店主本人が500部も配っている店まで出現している。今、募集しようとしても全く集まらない。従業員登録数を見ても明らか。③ なのに自店回収率は高い。従業員の切り取りが横行しているのに店主がそれに目をつぶり、加えての止め数の改竄に担当員が気づかない。④ 担当員が「担当員日程」と言ってプロセールスや「お客さん騙しのハガキ作戦」SPを押し付ける⑤ 毎年続く紹介カード作戦(内容は現読のグループ店回しカード、社員の爆カードが大半と言われている)を増減に無理やり入れさせようとされる。店主にとって四面楚歌状況で、お金の手当ても限界に近づき「こんなの商売じゃないや」となってしまった。

◆従業員賞与の支払い実態はどうなっているのか。A系は昨年度の取引制度改定時、賞与積立は補助制度とともに無くなっている。店の独自積立でも支払方式を求めているが、実際はごく一部しか払われていない様子。Y系は震災後、お店の資金不足補てんと称し4月に一般賞与を振り替えたが、そのお金はほとんど納金に充てられ、夏季賞与時には皆無。後の営業賞与時、国税からの注意を受けて営業賞与の支払い明細提出を販売店に義務付けた。ある店主と話している時、担当員と会う機会があったので質問した。「営業賞与の支払い明細を出せというのは理解できるのですが、一般賞与の支払い明細を求めていないのは何故ですか」。担当員は無言で下を向いてしまった。某地区の店主に賞与の支払い実態を尋ねたところ、「震災以前から賞与は毎月の給料に2万円上乗せで支払、賞与時は何もありません」というものだった。日本でも一般社会では、今回の震災時に当たり「賞与は企業のその期の利益配分」という気風が出ているが、販売店はそれを先取りしたものとは到底思えない。まして今回の営業賞与の支払い明細を出せとの依頼に応じ出すとすれば、改竄書類提出となり、これこそ違法行為を勧めていることになる。

◆こんな状態では従業員に自分で防衛策を講じるように勧めていることになる。数字は上がっているので担当員は見過ごしているようだが、自店回収率の急激に上昇しているように見えることが問題なのだ。中には100%を超える店もあるという。でも結果はちっとも増えていない。従業員の数が減り、賃金ダウン、賞与なし、社会保険、休日も不完備。どこに自店回収率アップの要素があるのか。

現場を長くやっていて自店回収は相当環境を整備した優秀な店主の店でも80%がいいとこ。それ以上強制すると爆・切り取りという求めていない非が現れ、彼が飛んだ時、大きな残紙となってしまうことが多い。「お客様が支払ってくれるお金の総数と仕入部数×定価の差」が残紙である商売法則を今一度思い起こしてほしい。担当員の押しセールスを買いたくない(買えない)から、従業員の切り取りになるカードにも見て見ぬふりをする。担当員はわからないから「止め数を改竄する」。非が非を呼ぶとんでもない悪循環を断ち切らなければならない。

◆新聞販売店主は今、自分の商売の先が見えないことに苦しんでいる。情報を国民に届ける仕事、ということを第一義に挙げてこの道に入ってきた人はいない。頑張ったらいい商売だというモチベーションを持って入ってきた人達がほとんどだろう。学歴はないが、頑張って紙を増やし、地域の人達ともいい交流ができ、従業員にも喜んでもらい夢を共に語る。自分も家族も世間並以上の生活ができると考えてきた人達。今、上記のようなことばかりせざるを得ないことに大いに疑問を持っているだろう。全く当初考えていたことと違う。何を目指せばいいのだろう。店主の中にはいつ見切りをつけるべきかまで考えている人もいるとまで聞く。その答えは「自由増減」

「共配」「複合・合配化」にあると考える。小泉改革は支持しないが当時の「改革には痛みが伴う」という言には賛同する。読売担当員の現役時代、時期をしめさない突然の、短期間での地区替えには驚いていたが、後で務台さんは「部長・担当員を長く置くと店との癒着ができ紙が残る」とどんどん人事異動をしたのだと聞き納得した。務台さんの教えを我々は忘れていないか、と問う。

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