★昨日も仲間から電話をいただいた。「どうしたんですか。親分の原稿を指針にしようと待っているのに原稿がアップされていません。我々は本当に困っています。意見を早くください」というもの。もう一人は「三平さん、地震酔いらしい。いつも強気の彼が。少しいじめてやれと話している」と。実は本当。地面が揺れるという事態が理解を越え、精神がやられていたのです。主治医のところへ行き「胃カメラ、心電図、胸部レントゲン、採血、問診」と全て調べてもらい「異常なし」という言葉をもらってからやっと少しずつ動き始めたという具合。本当に情けない。原稿を書くどころか、大好きな読書もできない状態でした。読者の皆様には合わす顔もありません。今日から活動を再開いたします。

◆新聞社も新聞販売店も本当の意味で独立しなければならない

 この間も情報だけは入って来ており、業界の状況は理解できている。東日本大震災は東北関東の皆さんに巨大な被害をもたらしたが、新聞業界にもとんでもない災いをもたらした。その規模はそれぞれの経営基盤を震撼させるほどのものである。震災当月の3月は緊急事態対応というもので、新聞発行をいかに、輸送をいかに、配達をいかに、というものが優先であり、販売店の原価納付についても各社当然の緊急処置で乗り切った。世の中で行われた「人間が生きるための最低の援助」に準じるものといえよう。新聞界における最大の被害はTV広告の自粛に見えたように広告クライアントの被害ゆえの極端な縮小である。紙面広告も折込広告も全くの「ゼロ」という日々が続いた。販売店サイドでいえば「ラフにいえば首都圏一般紙取り扱い平均部数約3,500部で350万円の現金収入減」。驚嘆。業界の中でいた我々は「あまりにも広告収入に頼っていた経営体質に反省しなければならない」。新聞業会は再販制に保護されており全国購読料は一律。新聞社は販売店から新聞代原価をいただいているし、販売店はお客様から購読料というお金をいただいている。これが新聞企業にとってのインフラというものであるはずだ。販売店はこのお客様からいただく購読料を基幹にするも、販売店が持つ独自機能をベースに「商売としての経営を安定的なもの資する改質」をつくり出さなければならない。新聞社も電子版という新商品を出していくものの、新聞という紙の商品が一定の基本収入源であるということは間違いなく、新聞原価をいただいているということに感謝するとともに、社内の水ぶくれした体質改善が不可避である。販売店からの原価収入に頼りすぎている現状はウェブ化の進行(自らは電子版という新商品、明らかに販売店扱いの紙の新聞と競合する)は朝日・読売・日経の編集部門の統合をも見据えた体制へとの転換も必要ではないかと考える。人件費の大幅カットの切っ掛けであるが、決して紙面内容の低下にはならない。被災避難地区に紙の新聞が届くことが重要だが、その場での他紙との読み比べは必要ではない。相互に完全、全面的依存では将来の経営基盤確立に禍根を残すことになる。「相互、良好の取引相手として尊重する形態」を望みたい。

新聞社の4月度の奨励は事態認識が逆=間違っている

 新聞販売店が今、早急に解決しなければならないと考えているのは「お金=経営」の問題である。前述の「一店、一月、約350万円の減収」はおいそれとは解決できない。まず確保しなければならないのは「配達確保=給料の確保」であり、次の「事業継続の確保=納金の確保」である。4月度の販売店支援と名目して打ち出された各社の奨励はその意図を疑わざるをえない。本当に販売店が必要なのか、大切に考えているのか。この期に拡張奨励や拡材補助金という新聞拡張にもっと励め、を意図するとしか思えない政策はとても販売店がいま置かれている状況、店主の気持ちを理解したものではない。某社が賞与の振り替えを一ヶ月早めたと威張っているが、それは従業員の賞与給与であり「彼らに賞与を払わず、納金に充当せよ」と言わんばかりに聞こえる。早めたとし、実際の支払い時期になったらどうするのか。現状聞こえてくるのは、販売店の自廃の申し出の声であり、新聞社の経営陣には届いていない「販売店の後任者の枯渇」の声である。今、拡張合戦の激化を求める発行社の思惑は社会からは全く認められないものであることは明白だ。新聞社が今、一番考えなければならないのは「現実どんどん増えている無読対策」あり、このことはウェブ版(電子新聞)では解決にならないことはすでに明白であり、彼らはさらに甘くないことを知るべきである。

販売店は今どう動くべきか

 大震災による日本経済は大ダメージを受けており、回復には相当の時間を要す。急ぎ350万円の回復を願っても無理。まず意識をどこに置くべきかだが、それは「本年後半に前年一ヶ月▲100万円」に経営基準を置くことだろう。そこまで経営体質の変更が求められる。これまでの年度余剰金支出はやむを得ない。一部新聞社が貸付金斡旋をしているが、できるだけ避けたい。(国金は販売店向けに新規融資はダメとしたらしい)震災でも有名になった言葉だが「情報公開」は従業員との共同体意識を共有するためには必然で、「経営内容の従業員との共有」ができていない販売店は今回は苦しい。緊急に従業員と折込のゼロ化に伴う痛みを共有した上で、次のテーマを柱とすべし。

① 絶対に現在の紙売り上げを減らさないでくれ。君たちの給料は所長が守る。

② 拡材をいかに減らすか店内にその環境を創ろう。お客様へは「私たちも日本社会の一員として商売(あきない)を一生懸命やっています」と記したチラシを提示。

③ 地元店主会を開こう。ASAも痛んでいる。共同配達も視野に入れて話し合いをもとう。こんな時にも労務難が始まる。都内では外国人が国外に去り、配達に支障をきたしている店が出ている。

④ バランスシートをもう一度穴があくほどみて、経費支出の見直しをしていただきたい。紙売り上げを維持するため、どうしても外交団を必要とする場合もある。その経費には何を充当するのかも考えなければならない。安易に今回の発行社の補助に飛びついてはならない。併せて現場担当社員には良識を持つ者もいる。かねてから信頼関係を築いている人とは相談するのもいいだろう。

◆ それでも業界の淘汰が進むことは避けられない

 今提示した策を早急に実施したとしても、新聞社においても新聞販売店においても以前通り全部が安全に継続いていくとは考えずらい。例えば、いまだに原発事故で苦しむ福島県。新聞社で考えると県紙の2紙の経営。数万の紙を切ったと聞く。それに伴う販売店からいただいていた新聞原価、加えての紙面広告収入の落ち込みは月間数億にも達するだろう。通常の数十パーセントの落ち込みに耐える体力があるのだろうか。日本国家も国内の産業別に資金注入をするだろうが、それまで耐えられるかどうか。とても心配である。全国紙にあっても首都圏の企業の広告出稿の極端な落ち込みが新聞社、販売店を続き襲っている。今月、今の販売店の現状は前年同月70%と予想される数字だ。月末の最終は前年▲25%~30%と予測している。安易に従業員給与経費減(いわゆるリストラ)は絶対にしてはいけない。経営者としての逃げの手法であり、次、現実の回避でしかなく、最悪といえよう。それは店経営を放棄するに等しい。それをしないそれ以外の手法を講じる。従業員との共同意識共有には情報公開が絶対であるが、いままでしてこなかった店は苦しい立場となる。現場での共同配達を強く主張しているが、実施されるとそのエリアで全部がいままで通りとはいかない。選別の基準はお金、人を中心とした強い財務体質である。それ以外のそして今回の危機を正当な方法で乗り切るすべ、方法のない経営者は退場も考えなければならない。新聞界以外の業種の企業では早々と手が打たれ始めている。小生の卑近な世界でもリストラと思えるような配置転換が行われている。労働市場はさらに厳しくなっていくだろう。何度も記して来たが、「新聞の世界は日本国の中で、決して外部世界と無関係の世界ではない」。新聞社、新聞販売店も今は本当に淘汰の世界にある。それほど今回の震災は厳しいものになっている。新聞界にとってその苦しみはまさに今から始まるものであると肝に銘じて欲しい。





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