◆歳をとったせいか、夜中にトイレの為目を覚ますことがある。いつもはまたすぐ寝入ってしまうが、時として一服と称し小休止してしまうともうなかなか寝つかれない。過日もそんなことがあり、止むを得ずテレビを付けると見入ってしまった。アル・ゴア元米副大統領が提唱する地球温暖化防止問題をドキュメンタリー化した「不都合な真実」という映画が放映されていたのだ。環境経済学では「汚染者負担責任」という原則があるが、人の責任による自然破壊の影響がこれもウェブと同じくボーダレスとなり他国、全世界に広まりつつある。日本人の我々には、日本海側に流れ着く大量のゴミ(多くはハングル文字記載)、黄河流域の砂漠化による黄砂現象など記憶に新しい。国際公法の不備によりいまだ責任の所在ははっきりしていない。

◆最大の原因は「モラル・ハザード」である。新聞業界にも相い通じる問題がある。残紙・押し紙である。森林伐採による自然破壊もさることながら、これは販売店をはじめとするそれに携わる人々の生活をも破壊しているといわざるを得ない。折込の急落により、あえて積むことに利益が無くなり、益があるのは発行社のみである。これが作為的なものであれば広告や折込のクライアントから、これは詐欺ともいわれるものであり、業界内の人達に「汚染原因の責任は誰にあるのか」と問われても必然である。自由増減の放棄=「紙を切らない社とそれを受け入れる店」、それが汚染原因であることは明白。

◆リーマン・ショックの処理を巡り、モラル・ハザードが問われた。結果、「大きすぎて潰せない」「大きすぎて変身できない」処理に世論が反発したことがあった。この業界は大きすぎるのか、そんなことはない。売り上げ規模でみれば大手家電量販店の半分以下。一社でみれば一兆に満たない。新聞業界は米でもその存廃が問われているが、そこには残紙・押し紙問題はない。米新聞社の株式はほとんど公開されている。そのためリーマン・ショック時株価が急落し、会社の時価評価・資産が半減した。これは紙新聞離れ以上に、市民が新聞社の価値を半減で評価したということである。新聞がウェブだけに負けたのではないことも知らなければならない。

◆モラル取り戻しをリードするはずの新聞界が「汚染原因」であることは許されないはずだ。日本の新聞界も岐路にあることは米新聞界を見ればわかる。ウェブ版を併せ持ち、紙との両立戦略も見えているが、これもその先消費者がどう評価するかは見えていない。ビジネスモデルの改変の必要性は業界人も認識しているが、人任せ状態である。アル・ゴアは勇気ある行動をとったと評価する。「青い鳥症候群(ジャンポール)が蔓延している。「夢を持たないで、自分にできることだけをする」⇒希望的観測はやめよ。自分が自己主張して行動せよということしかない。

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