不審死事件の説明なし。官邸脱出に成功した木原誠二は、まだ“影の総理”を続けるつもりか? - まぐまぐニュース! (mag2.com)

 

2023.09.22  by 

 

岸田の“頼みの綱”。妻の元夫怪死隠蔽の木原誠二が影の総理ぶる亡国

妻の元夫が不審死した事件の捜査をめぐる疑惑で去就が注目された内閣官房副長官、木原誠二氏は、今月13日の内閣改造・党役員人事で副長官を退任し、自民党幹事長代理と政調会長特別補佐を兼務することになった。

この奇妙な人事は何を意味するのだろうか。幹事長の部下でもあり、政調会長の部下でもあるという立場。裏を返せば、木原氏にはどちらつかずの自由が与えられる。首相と党本部をつなぐという名目で、慣れ親しんだ官邸に出入りすることに文句を言われることもない。人知れず、岸田首相の“参謀”を続けられるかもしれないのだ。

茂木幹事長、萩生田政調会長、ともに首相の座を狙っている。つまり来年秋の総裁選で岸田首相のライバルになりうる存在だ。そのもとで木原氏は情報収集ができるのである。この人事、岸田首相にとっては、ウルトラC級のアイデアではなかっただろうか。

 

読売新聞オンラインによると、官房副長官をやめたいと切り出したのは木原氏だった。8月18日の日米韓首脳会談のために訪米する途上、政府専用機内で岸田首相に申し出た。

むろん、妻の元夫の不審死事件に関する週刊文春のキャンペーン報道が原因だ。官房副長官の仕事の一つであるメディア対応を避ける日々が続き、いずれは国会で野党から追及されるかもしれない。官邸にとどまれば、岸田首相に迷惑がかかるし、自分としても苦しい。そんな思いが強かったのだろう。

岸田首相は困惑した。なにしろ、木原氏は岸田首相が頼りとする「軍師」である。安倍元首相における今井尚哉秘書官のように、「影の総理」とさえ呼ばれる存在だ。次から次へと押し寄せる難題にオールラウンドに対応してくれる木原氏が周辺からいなくなることは、政権を運営するエンジンを失うようなものである。

米国との関係構築にも、木原氏の存在は欠かせない。木原氏は英語が堪能で、ラーム・エマニュエル駐日大使と頻繁に会い、昵懇の間柄になっているといわれる。エマニュエル氏は、ビル・クリントン政権で大統領上級顧問、オバマ政権で大統領首席補佐官をつとめ、米政界で「タフネゴシエーター」として知られる。バイデン大統領とは、電話一本で話をつけられる仲だという。

エマニュエル氏のことを「日本という地にあって、アメリカのリーダーシップを示している」と木原氏が評しているが、裏を返せば、エマニュエル氏と木原氏の密なコミュニケーションによって、日本の米国追従姿勢がより強まったともいえよう。米国やG7の対ロシア制裁にスピード感をもって同調し、大幅な防衛費増強に踏み切ったのは、その表れだ。

 

今年1月、岸田首相の切望する日米首脳会談が実現し、ホワイトハウスでバイデン大統領から手厚い歓迎を受けたのは記憶に新しい。その華々しい舞台をセットできたのも、木原氏とエマニュエル氏の連携がうまくいったからだ。

 

岸田・木原の利益を確保する方策としてひねり出された奥の手

日本の首相は米国に嫌われると短命に終わっている。岸田首相は明確な国家ビジョンが感じられない半面、長期政権を担いたい意欲は十分で、「バイデンのポチ」と揶揄されようが、意に介さない。その点では、エマニュエル大使と木原氏の良好な関係が岸田首相に安心感をもたらしているといえるだろう。

木原氏を官房副長官にとどめておくリスクと、“懐刀”を失うマイナスを、どう量るか。岸田首相は、その計算さえも、木原氏に任せたのではないだろうか。

木原氏が自民党政調会の副会長だった2018年、元夫の怪死事件をめぐり、警察の事情聴取を受けて帰る途中の妻に、「俺が手を回しておいたから心配するな」と話していた音声がタクシーのドライブレコーダーに残されている。そして、妻の事情聴取を担当した元刑事が「あれは自殺じゃない。事件なんですよ」と断言している。

しかし、警察庁と警視庁は事件性を否定し、捜査に幕を引いた。大手メディアもこの問題を大きく取り上げることはなく、とりわけテレビは完全なる沈黙を続けている。

 

このまま時が過ぎるのを待てば、文春砲もネタ切れになって問題は終息するかもしれない。岸田首相も木原氏もそう思いたかったに違いない。だが、内閣支持率の低迷に“木原疑惑”が影響しているのは明らかだった。

木原氏をこれからも変わらず“軍師”として抱えておきたい岸田首相と、メディアや野党の追及を受けやすい官房副長官というポストから脱出したい木原氏。二人の利益を確保する方策としてひねり出されたのが、幹事長と政調会長の補佐的役職を兼務するという奥の手ではなかっただろうか。

幹事長と政調会長の補佐というのは、実に曖昧な立場だ。だいいち、茂木幹事長や萩生田政調会長が、岸田首相と深く繋がっている木原氏にどんな指示を出せるというのか。

木原氏にとってなにより重要なことは、このポストには番記者がつかないことだ。官邸記者クラブからも、平河クラブからも自由になることができる。政治的存在感は失せるが、“木原疑惑”が続くかぎり、好都合な立場だ。

木原氏とエマニュエル大使のパイプという観点からは、外務大臣が林芳正氏から同じ宏池会の上川陽子氏に交代した人事についても、米側の意向に沿ったニオイがプンプンする。

外から見る限り、林氏はG7外相会合の議長をスマートにこなし、エマニュエル大使とも上手く付き合ってきたと思える。しかし、中国にはっきりモノが言えず、「親中派」と米国サイドで見られている林氏は、要求水準の高いエマニュエル大使にとって、腹の内がつかめず、物足りない存在だったのではないか。

おそらく、エマニュエル大使と木原氏との対話のなかで、そのたぐいの話はしばしば出ていただろうし、そのことを木原氏が岸田首相に伝えていたに違いない。

岸田首相は林外相に交代を告げたさい、「派閥をがんばってほしい」と理由を説明したといわれる。ようやくめぐってきた「宏池会」の時代。岸田首相は来年の総裁選で再選を狙うが、いつかは林氏にバトンタッチして、“宏池会政権”を長続きさせたいという思いがあるはずだ。そのためには、現有勢力46人で第4派閥に甘んじている宏池会をもっと大きくしなければならない。

むろん、「宏池会」ナンバー2の林氏は、会長である岸田首相にとって総裁選のライバルにもなりうる存在だ。その台頭を抑えるためとか、首相外交を際立たせたいためとか諸説あるが、最も重要な外相交代の狙いは、米国政府の納得を得ることではなかっただろうか。

 

岸田のビジョンがまったく見えない内閣改造と党役員人事

それにしても、今回の内閣改造と党役員人事からは、政治に対する岸田首相のビジョンがまったく見えない。

入閣待機組を起用する派閥順送りや、派閥の規模に応じた人事バランスなど、とにもかくにも党内の反発を招かないよう気を配った布陣だから、新鮮味とか独自色などあろうはずがない。

今年6月に亡くなった青木幹雄氏が将来の「総理候補」として期待していた小渕優子氏を、青木氏とは早大弁論会以来の盟友である森喜朗元首相の要請で党四役の一角、選挙対策委員長に起用するなど、人間関係優先の人事も目立った。

多くは木原氏が下描きし、岸田首相が決断した人事であろう。党本部と官邸、そしてエマニュエル米大使の間を自在に動きまわる“自画像”までも木原氏は描いているに違いない。

 

今年1月、ワシントンの大統領迎賓館で取材に応じる岸田首相の傍らで、ポケットに両手を突っ込み、“我が世の春”に浸っていた木原氏の姿が思い出される。文春砲を浴び、その立場が打ち砕かれたように見えたが、自作自演の退任劇によって、世間から姿の見えぬ新手の権力者として生き延びる可能性が出てきた。

警察捜査に公平性を求めるうえで、“疑惑”に対する木原氏の説明はどうしても必要である。そこから逃れることは、木原氏の自己都合であって、国民のためではない。木原氏の官邸脱出を許したことも、岸田首相の自己都合であって、国民のためとは思われない。この国の権力の堕落はどこまで進むのか。

 

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