友人に転送してもらったたんぽぽ舎メルマガ より

 

リニア新幹線をはるかに上回るデータセンターの電力需要
 | 今のままではデータセンターの電力需要が際限なく伸び続ける
 | 半導体工場も膨大な電力を使用する
 └──── 上岡直見(環境経済研究所代表)

◎ 電力の問題では発電すなわち供給側に注目しがちであるが、使う
側(需要)の検討が必要である。
 再生可能エネルギーに転換するにしても、使う側が野放図に需要を増
やしていては対応できない。
 ときおり、柏崎刈羽原発の再稼働はJR東海が建設中のリニア新幹線
へ電力を送るためではないかという推測が聞かれる。

◎ たしかに現行の東海道新幹線よりは増加するが、JR東海は大阪ま
で開業してフル運転しても74万kWと報告しており、私もチェックして
みたが同等の値だった。
 現在の商用原発は100万kW級だから、リニア新幹線では原発1基分
にならず、少なくとも3基も4基も必要という話ではない。
 リニア新幹線と原発を結びつける見解は、むしろ「電気が足りない」
キャンペーンと同類の印象操作と考えられる。

◎ ところが、リニア新幹線とは比較にならない需要増加が近い将来に
予想されている。
 IT化の進展によるデータセンターの需要であり、「電力広域的運営
推進機関(OCCTO)」の推定によると、2024年に48万kW、2028年
度に376万kW、2033年度に537万kWの追加需要が発生するとされて
いる。
 これこそ原発が5基も6基も必要な需要になる。

◎ リニア新幹線はお先真っ暗だが、かりに開業したとしても東京〜大
阪で終わりである。
 しかし今のままではデータセンターの電力需要が際限なく伸び続ける。
 しかもデータセンターは、いくつかの技術的な理由から大都市圏に近
い場所に設置することが望ましいとされているため圏外から電力を供給
しなければならない。

◎ 24時間動き続けるデータセンターは、一定出力の連続運転が適して
いる原発と相性が良い。
 これと並行して、半導体工場も膨大な電力を使用する。
 北海道千歳市に建設中の半導体生産の国策会社「ラビダス」の電力供
給のために、北海道電力は泊原発の再稼働を意図している。
 これまでも「大都市圏の電力需要のために地方にリスクを押しつけて
いる」という議論がされてきたが、改めて需要側の問題に注目する必要
がある。

☆関連記事紹介

 データセンター電力需要急増
 集積地の千葉・印西 高圧変電所が始動

 膨大な情報処理のためのサーバーなどを置くデータセンター(DC)
が千葉県印西市に集積し、電力需要が急増している。
 対応のため市内には超高圧変電所が新設され、運転を始めたばかりだ。
 エネルギー基本計画の改定に向け6日に開かれた国の会合では、今後
もDCが増えることを想定した電力確保策の議論が本格化た。
                      (砂本紅年)(中略)

不足

 それでも今後想定される需要には足りず、新たな変電所建設も検討
中だ。
 東電PG(パワーグリッド)の担当者はDCの建設場所として「太陽光
発電量が多く、昼間の電力が余る宇都宮市などをおすすめしているが、
都心からの距離で契約に至らない」と話す。
 電力の需給調整を担う電力広域的運営推進機関によると、需要電力量
は2033年度、DCや半導体工場の新増設に伴う増加分が、現状の11倍の
407億kwに達する見通し。同年度に想定する需要量の5%を占める。

 ネット回線が相互接続する通信施設の多くは、東京・大手町にあり、
DC事業者は通信速度の遅れを防ぐため、大手町から50キロ圏内の立地
を求める。
 国内のデータセンターの8割が関東圏または関西圏に集中しているこ
とも電力や防災の面から課題となっている。

 国際大の橘川武郎学長(エネルギー産業論)は「DCによる電力需要
増加はエネルギー基本計画の見直しでの新しい論点。ただ、省電力とな
る光通信技術により、想定ほど電力需要は伸びない可能性もあり、幅広
い議論が必要だ」と話す。
 6日に開かれた国の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会では、
DC増に伴う電力需要増に懸念を示す意見が相次いだ。
              (6月7日「東京新聞」朝刊3面より抜粋)