元国税大村大次郎さんの記事だそうです:

 

●なぜ経団連は消費税を推進するのか?

次は、日本国内の消費税の話です。

「将来のためには消費税などの増税から逃げてはいけない」
去る9月19日、経団連の戸倉会長がこういう発言をして物議
を醸しました。
今回の発言に限らず、経団連は消費税を推進させてきた張本人
でもあります。
なぜ経団連は、消費税を推進させてきたのでしょうか?
今回は、そのことを掘り下げたいと思います。

「経団連」とは、正式には、日本経済団体連合会といいます。
上場企業の経営者を中心につくられた会合であり、いわば日本
の産業界のトップの集まりです。
経団連には、上場企業を中心に約1500社が加盟しています。

この日本経済団体連合会の会長は、財界の首相とも呼ばれ、日
本経済に大きな影響力を持ちます。
この経団連は、加盟企業が一流企業ばかりで、しかも1500
社もいるということで、それだけでも大きな政治権力を持ちう
るのですが、さらにたちの悪いことに、政党への企業献金も非
常に多いのです。

経団連は政権に対して、通知表ともいえる「政治評価」を発表
し、その評価に応じて加盟企業に寄付を呼び掛けるのです。
特に自民党は、経団連の加盟企業から、毎年数十億円の政治献
金を受けており、収入の大きな柱になっています。
いわば、経団連は自民党のオーナーのような立場なのです。
当然、自民党は経団連の意向に沿った政策を行うことになって
います。

●経団連の罪

経団連は、財務省と歩調を合わせる形で、消費税の導入と、そ
の後の税率アップを推進してきました。
経団連の主張は、「消費税を上げて、その代わりに法人税を下
げよ」ということでした。
この経団連の主張は、別に秘密裏に政治家に働きかけられたわ
けではありません。
公の場で堂々と述べられ、経団連の主張として文書でも発表し
ています。

そして、この主張は通り、そのまま実行されました。
消費税がつくられ、さらに税率アップされ、その代わりに法人
税が大幅に下げられたのです。
法人税率は、1988年までは43,3%だったものが、現在
は23,2%になっています。
約半減です。

この30年間、国民は消費税の創設や増税、社会保険料の値上
げなどの負担増に苦しんできました。
その一方で、法人の税金は急激に下げられてきたのです。
このメルマガで何度も述べたように、この時点ですでに「社会
保障費のために消費税が必要」という国の喧伝は、真っ赤な嘘
なのです。

「消費税を上げて、法人税を下げる」
とはどういうことでしょうか?
法人税というのは、「儲かっている企業」に対して、「儲かっ
ている部分」に課せられる税金です。
一方、消費税というのは、国民全体が負担する税金です。
「消費税を上げて、法人税を下げる」ということは、「儲かっ
ている企業の税負担を減らし、その分を国民に負担させる」と
いうことなのです。

「儲かっている企業」の集まりである経団連にとっては、万々
歳のことです。
自分たちの負担を減らし、それを国民に押し付けるのですから。
経団連が、強硬に消費税の増税を主張してきたのも、ここに
理由があるのです。

しかしこれは、日本経済を窮地に追い詰めるものでした。
「儲かっている企業の税負担を減らし、その分を国民に負担さ
せる」
ということは、決して日本経済の実情に合っていません。
バブル崩壊以降、日本でのサラリーマンの平均賃金は下がりっ
ぱなしです。
そういう中で、消費税を上げるとどうなるでしょうか?
国民の生活は苦しくなります。
当たり前といえば当たり前の話です。

それは数値としても明確に表れています。
総務省の家計調査によると、2002年には一世帯あたりの家
計消費は320万円をこえていましたが、現在は290万円ち
ょっとしかないのです。
国民は消費を10%も削ったということです。
この20年間で、消費が減っているのは、先進国では日本くら
いなのです。
この20年でGDPが30%以上拡大していることを見ても、消費
が減っているというのは絶対におかしい話で、まともに経済活動
をしている国ではあり得ない話なのです。

●日本を投資家天国にした

また経団連は、この20年間、投資家の減税についても働きか
けてきました。
なぜ経団連が投資家の減税を働きかけたか、というと、表向き
は投資を活発化させるためということでした。
が、経団連の連中というのは、ほとんどが自社の大株主であり、
つまりは大投資家なのです。
投資家の減税が行われれば、直接的に大きな利益を得られるわ
けです。

そして、政治側もこの財界の要望にこたえ、投資家の税金を大
幅に下げました。
その結果、日本の株の配当所得の税金は、実は先進国でもっと
も安くなっているのです。

配当所得に対する税金(財務省サイトより)
日本     15%
アメリカ   0〜20%
イギリス   10〜37,5%
ドイツ    26,375%
フランス   15,5〜60,5%

アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスと比べても、日本の税
率15%といのは明らかに安いのです。
イギリスの半分以下であり、ドイツ、フランスよりもかなり安
くなっています。
あの投資家優遇として名高いアメリカと比べても、日本の方が
安いのです。

日本では、本来の所得税の最高税率は45%ですが、配当所得
は分離課税となっているので、どんなに高額の配当があっても
15%で済むのです。
一つの会社の株を個人で3%以上保有している大口株主の場合
は、この分離課税は認められていませんが、上場企業で3%以
上の株を保有するというのは、めったにあるものではありませ
ん。
トヨタ自動車の豊田章男会長でさえ持ち株割合は0,2%なの
です。
もちろん、分離課税の恩恵はしっかり受けており、毎年数億円
の配当所得に対して、15%しか所得税はかかっていないの
です。

また配当所得における「住民税」は、わずか5%です。
サラリーマンの場合、住民税は誰もが10%です(課税最低限
に達しない人は除きます)。
つまり額に汗して働いた人が10%の住民税を払わなければな
らないのに、株を持っているだけでもらえる配当所得には、
その半分の5%しか課せられていない、ということなのです。

現在の日本は、大企業天国、投資家天国なのです。
一般国民にとっては地獄になりつつありますが。

次回はこの経団連の問題をもう少し掘り下げた「日本の法人税
は高いという大嘘」を掲載します。

●編集後記
前回もお話ししましたが、YOUTUBE「大村大次郎チャンネル」を
開設しました。
全部自分でやっている超素人YOUTUBEですが、よかったら見てく
ださい。
    ↓
「イタリアのポルノ税は理想的な税金」
https://youtu.be/gXtrWjeBj90

ではまた2週間後に!