昨日から警察法改正について書いているのは
子どもへの枠接種をやめさせるために
必死で活動してきた方たちが、これまで通りにビラ配りや申し入れをしたり
その打ち合わせをラインなどで続けていると、直ぐにでも逮捕されるのではないかと
恐れて、活動をやめようとしているという話を聞いたからである、
 だが結論から言うよ、それは勘違い。

 今日は自由法曹団の声明を検討します。

警察法改正案の拙速な成立に反対し,廃案を求める声明

1 2022年1月28日,警察法改正案が閣議決定され,国会に提出された。
 本法案は,国家公安委員会の任務及び所掌事務として,「重大サイバー事案」を新たに規定したうえで(5条4項6号ハ),「重大サイバー事案に係る犯罪の捜査その他の重大サイバー事案に対処するための警察の活動に関すること」(同項16号)を規定している。
 さらに,本法案は,これまでの警察庁情報通信局の所掌事務を長官官房に移管し,情報通信局に代えて新たに「サイバー事案に関する警察に関すること」(25条)を所掌事務とするサイバー警察局を新設したうえで(19条),サイバー事案にかかる「警察の活動」を関東管区警察局に分掌させ(30条の2),関東管区警察局におけるサイバー事案の警察活動の管轄区域を全国とし,重大サイバー事案において警察庁と各都道府県警察の共同処理を認め,警察庁長官が任命した者に,その指揮を委ねる(61条の3)としている。
 すなわち,本法案が成立すれば,警察庁所属の警察官が直接,重大サイバー事案に対する犯罪捜査を実施する道が開かれるところ,これは戦後の警察の在り方を大きく変える危険を有している。

2 そもそも,これまでの警察法(昭和29年法162号)のもとにおいては,国家公安委員会及び警察庁が自ら犯罪捜査を行うことは認められていない。現行警察法は,「個人の権利と自由を保護し,公共の安全と秩序を維持するため,民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し,且つ,能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的」(法1条)とし,警察の民主性の確保と地方自治の保障のために自治体警察による犯罪捜査を基軸として,国家機関としての国家公安委員会及び警察庁が自ら犯罪捜査を行うことは否定してきた。これは,「日本ノ民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去」(ポツダム宣言10条)を実現するための戦後改革において,特高警察による人権侵害に代表される内務省管轄下の中央集権的な国家警察を否定し,自治体警察が犯罪捜査を行うこととしたことに由来しており,戦後の警察の在り方において重要な意味を持ってきたのである。

3 ところが,本法案においては,およそ不明確・不十分な理由で上記の戦後の警察の在り方を変更しようとしている。
 すなわち,今回の警察法改正案の概要においては,改正理由として,「コロナ禍はサイバー空間の脅威を増進」しているとし,「重大サイバー事案に対する対処能力の強化」が必要であるとしている。しかしながら,これまでに,既に14都道府県警察(北海道,宮城,警視庁,茨城,埼玉,神奈川,千葉,愛知,京都,大阪,兵庫,広島,香川,福岡)に「サイバー攻撃特別捜査隊」が設けられており,いわゆるサイバー事案に対応しうる組織はすでに存在している。したがって,これに加えてなお,「重大サイバー事案に対する対処能力の強化」が必要な理由はない。また,「サイバー攻撃特別捜査隊」が14都道府県警察に設けられていることで,重大サイバー事案に対する対処の支障があるといった現行制度の問題点も明らかにされているわけでもない。
 さらに,サイバー対策における国際連携の重要性も立法理由とされているが,既に共謀罪創設に関わる国際的組織犯罪条約やサイバー犯罪条約,日米刑事共助条約など国際的な組織犯罪への取組みについて,警察庁が国際協力を行っており,捜査機関の国際連携のためにサイバー事案について警察庁に犯罪捜査の権限を付与する必要はない。

4 また,法案の内容においても,問題がある。「サイバー特別捜査隊」の捜査対象として,「国や地方公共団体の重要な情報の管理」(5条4項6号ハ(1)(ⅰ))や「国民生活及び経済活動の基盤」(同(ⅱ))に対する重大な支障が生じる場合,「高度な技術的手法が用いられる事案その他のその対処に高度な技術を要する事案」(5条4項6号ハ(2))などと規定されているのみである。本法案では,具体的にどのような事案が警察庁直轄の「サイバー特別捜査隊」の捜査対象となるのか,その判断は誰が行うのか明らかにされておらず,都道府県警察に設置されている「サイバー攻撃特別捜査隊」との任務分担に不明確な点が残されたままとなっている。

5 以上の通り,警察庁所属の警察官が直接,重大サイバー事案に対する犯罪捜査を実施する権限を与えなければならない必要性は全く明らかではないうえに,「サイバー特別捜査隊」の捜査対象となる事案が不明確であるなど多くの問題が残されているまま「サイバー特別捜査隊」の設置を強行しようとすることは,戦後の警察の在り方を大きく変え,国家警察の復活を狙うものであると言わざるを得ない。政府与党は,このような戦後の警察の在り方を変えうる重大な本法案について,拙速な審議のみで可決成立を行おうとしているが,それは許されることではない。自由法曹団は,戦後民主改革の中においてできた自治体警察による活動を基軸とする現行警察制度を改悪しようとする今回の警察法改正案の拙速な審理可決に反対し,法案の廃案を求める。

 

2022年3月2日

 自由法曹団 団長 吉田健一

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   昨日書いた山本太郎氏の内閣委員会での質問より、

上記自由法曹団のアピールのほうがポイントを抑えているような気がする。

  わたしがポイントだとおもう語句二つを、上記転載部分で大きくしてある。

 山本氏の質問には、この2つの語が一つも入っていない。

 

 大日本帝国憲法下の“特高”=特別高等警察が、

徹底的に言論を弾圧していた、このことが問題なのだが、

山本氏の質問は、言論弾圧や、民衆の相互監視があったことは指摘しているものの

(というか短い質問時間の中では民衆の相互監視を持ち出す必要は

なかったような気がする)

特高という超重大なキーワードが欠落していた。

  

 とにかく特高を復活させないことが何よりも重要なのである。

言論を弾圧する法的根拠が、言論弾圧を正当化する法律ー大日本帝国憲法下の

治安維持法のような―が制定されてしまったら、

ましてやそれを許すように憲法改定が行なわれてしまっては、

“国家警察”でなく、地方警察であっても“十分に”人権を蹂躙<じゅうりん=踏みにじること>

できてしまうのである!

 

 次に特高を許すようなとんでもない法律がないことを前提に、

では国家警察と地方警察とどちらがいいかという論点はある。

 これが上記自由法曹団アピールで太字にした「地方自治」ということだ。

 地方自治のほうが、統治者と被治者の距離が近く、

統治者は被治者を虐待しにくいし、被治者も統治者に直接

要望を届けやすい。

 住んでいる自治体の役所を訪れてみると実感するのだが、

自治体のほうが、議員にずっと会いやすいのである。

国会議員に会うことはなかなか難しい。(カネ≒集票力がない

一般人には。)これに対して地方自治体のほうが―まあ

東京都のように巨大化し過ぎると事情は異なるが―

議員にとっての、訪問してきた、陳情してきた市民に感じる”脅威”が

ずっと大きいのである。もおかしな言動をしたら

次の選挙で落ちるという可能性は、地方におけるほうがずっと高い。

 以上は地方議会の議員と選挙民の関係についてだが

警察についても似たことが言える。

 警官も、小さい単位の市町村であまり酷い言動をすると

国レベルにおけるよりずっと目立つので、言動を慎むのでは

ないだろうか。

 憲法の教科書には”地方自治は民主主義の学校”という句が

出てくるのだが、詳しくは書いてない、詳しくは書いてないが

およそ上に書いたようなことだろう。

 

 繰り返すと、法律上、さらにその上位の憲法上、

言論弾圧を許す規定を作らないことが

何より大事で、

捜査権が地方警察にしかなくても

そうした規定が存在すれば人権弾圧は容易に行なわれてしまうのである。

 

 次に

「具体的にどのような事案が警察庁直轄の「サイバー特別捜査隊」の捜査対象となるのか」警察法改正案では不明だというのは

確かに問題である。

  この箇所、一見罪刑法定主義関連の問題かと思ったのだが―

  罪刑法定主義というのは どんなことをすると罪になるのかを

 国会が決定したこと

 その行為をした人が、その行為をする前に、その行為が罪になると

知らされていたこと

が必要だ、というもの。

 しかし、やはり罪刑法定主義違反というわけではない、

何かしらのサイバー関連犯罪が、

今回の改正で初めて違法となり処罰されるというわけではなく、

ただそれが今まで都道府県警察しか捜査できなかったのが、

国家警察—警察庁の“特別捜査隊”も捜査できるようになったというだけである。

 捜査を行ないうる主体が、一つから二つになって、

抽象的には人権侵害が起きる可能性が少し高くなったとは言えるだろうが、

それだけで、今までしていた市民運動をやめなければ怖い!というような話ではない。

 

  今すべきことは

 言論の自由を否定することが違憲ではなくなってしまう、

緊急事態条項の憲法への挿入に

反対すること。怖がっているひまはない、怖がって委縮するとほんとうに

客観的に怖い状況を招いてしまう。

 

 ↓ 日本近現代史のショックドクトリンの例