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追記・鈴木書店倒産の真相2
 創業者社長や会長の死は、内部撹乱を狙う連中にとってはまたとない絶好のチャンスです。鈴木会長死去後の鈴木書店は、大作・西武にとっては新たな猟場となりました。口にするのもはばかられますが、このおぞましい犯罪を語るには避けて通れない問題ですので、敢えて触れてみたいと思います。死亡保険金の問題です。小さな地方出版社葦書房の社長の死も、経営者保険に入っていたことが、その後の犯罪を拡大した要因の一つと思われますが、おそらく鈴木会長も、経営者保険のようなものに入っておられたと思います。

 会長死去後は、この保険金が最初の獲物になったはずです。さまざまな口実を使って保険金の大半は、ハンターたちに巻き上げられたのは間違いないでしょう。古参役員を追い出せば、帳簿の操作も簡単でしょうし、どんな口実でも捏造できます。現金を巻き上げると、次の獲物に照準が合わせられます。残った最大の資産である社有地です。2つの社屋が少し離れた場所に建っていましたが、いずれも神田の一等地。もしこのまま神田で倒産すれば、抵当権者である銀行の手に渡ります。あるいは売却益の一部は、取引先の出版社の支払いに回さざるをえない。そこで考え出されたアイディアが、倒産前に土地を売り、売却益を犯罪ハンターどもで山分けすることです。

 岩波書店から役員が送り込まれたのは、この最大の獲物をゲットするためです。保険金を収奪するだけなら岩波の助力は必要ありませんが、抵当権のついた土地の売却となるとそう簡単ではありません。経営権を完全に掌握し、資産を処分する権限も手に入れる必要があります。鈴木書店の最大の取引先であり、最大の債権者である岩波から役員を送りこめば、社長といえどもその意に従わざるをえないという力関係が生まれます。加えて、最高のステータスとしての「岩波書店」の名前。この名前は銀行との交渉で威力を発揮したはずです。土地売却のための銀行の抵当権抹消は、おそらく借金返済によるものではなく、岩波の名前を使っての交渉によるものだっただろうと思われます。

 ただ注意したのは、岩波から鈴木に役員が送り込まれたのは、長年岩波の社長であった安江良介会長の死去後のことだと思われる点です。安江氏存命ならば、まさかそこまではしないだろうと思われるほどの悪辣な手口で、鈴木書店の資産巻き上げ工作が成功したのも、同氏の死を抜きにしてはありえなかったはずです。同氏の死は結果として、明らかに文化犯罪者集団に多大な利益をもたらしました。

 鈴木書店は岩波からの出向役員を看板に立て、土地を売り、経営再建に尽力しているかのような宣伝を繰り返していましたが、単なるポーズにすぎなかったのは明らかです。売った土地の売却代金の大半は、巧妙な帳簿操作で、文化犯罪者集団に吸い上げられたのは間違いないでしょう。最大債権者だったとはいえ、岩波はひそかに最優先で債権回収を果たしたはず。債権の一部放棄と再建協力を要請されていた取引先の出版社は、最終的には協力を拒否したわけですが、賢明な選択だったと思います。