冷凍食品から検出されたというマラチオン。
 これについて体系的に説明してくれている本

『化学物質過敏症ってどんな病気―からだ
から化学物質(農薬・食品添加物)を除去する健康回復法』

[同書の著者は化学物質過敏症の治療で有名な北里大学教授の石川哲医師、初版1993、合同出版]
を以下に載せます。青字はkatsukoのコメント
  

化学物質過敏症と中毒・アレルギーとの違い
中毒は:1/1,000 gで起こる。
アレルギーは:1/1,000,000 g
化学物質過敏症は:
 1/1,000,000,000,000 gでも起こりうる。

特徴-適応と離脱
繰り返し接しているうちにいったん体が耐えられるようになる(適応)が、

4~7日その物質と接しないで過ごし(離脱)、再び接すると以前にもまして

体がつよく反応する。
 アメリカの雑誌「ニューヨーカー」(1989年1月4日号)に載った例:

ベッチィという名の医師が水曜の午前3時に急に気持ちが悪くなった。ミル

クを飲んでおさまり、眠ることができた。だが、朝また気持ちが悪くなり、

お腹がひきつるように痛み、激しい下痢をした。
 翌週の金曜に別荘に行ったとき、室内の汚れが栂の花粉だとおもい

掃除した。
 また夜中に吐き気・腹痛・下痢に襲われた。
 症状はその後も続き、激しい動悸や視覚障害も出てきた。
 それでも週末は別荘に出かけ続けていた。
 あるとき別荘でベッドに入ってから目が覚めたが、体はけいれんし、

よだれがたれ、冷や汗が出た。
 台所で座り込んだとき、害虫駆除の会社からの手紙が目に入った。
 前年アリの大群を見たので、その会社に殺虫剤散布の回数を増やして

もらっていたことを思い出した。自宅にいるやはり医師である夫に、

電話の向こうで薬物についての本を読んでと頼んだ。
 「呼吸器症状は胸の緊迫感、ゼイゼイいう呼吸。消化器官では、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部がつる痛み、下痢。局所的な発汗、筋肉のひきつれ、

疲れやすさ、全身的な衰弱、筋肉のけいれん・・・」
 まさにベッチィの症状だった。
 月曜に帰宅し、害虫駆除の会社に電話し、アリ駆除剤の内容を聞いた。

それは有機リン剤の「ダーズバン」と、カーバメイト剤「フィーカム」だった。
 ダーズバンは第2次世界大戦前にドイツで開発された神経ガスの成分

の一部とおなじものを使っている。
 栂の花粉と思って掃除したのが、この殺虫剤の粉末だった。
 ベッチィは脚の筋肉の痛み、脚の筋力・知覚の低下にも悩まされるように

なった。
 ベッチィの夫には症状が出なかった、その理由は後からわかった。毎週

別荘に先に行って窓を開け、空気を入れ替えていたのはベッチィ

だったのだ。
 別荘内の有機リン剤を、床材を剥がして貼り直すなどして徹底的に排除した。
 翌年夏の終わりごろ、ベッチィは家の近くでテニスを再開したが、途中で

気持ちがわるくなった。
 休んでいると足元の浅い溝に数十~数百のチャバネゴキブリの死骸が

あった。
 コーチに聞くと、テニスのメンバー全員からゴキブリが多いと苦情があった

のでダイアジノンを使ったというのだった。これも有機リン剤だった。

ベッチィは多発性化学物質過敏症になってしまったのだった。


有機リンの歴史
 リン自体は自然界にある化学物質だが、これを有機化学工業で大量

に作ったのが有機リン。
 第2次世界大戦中にナチスドイツがユダヤ人殺害のために大量に使用

した毒薬が基本になり、そのために製剤化されたもの。サリン、ソマン、

タブンという化学物質からなり、「チクロンエスⅡ型」と呼ばれた神経系を

おかす毒ガスでは、わずか数ミリグラムで死亡したといわれる。
 
有機リンの使用例

 殺虫剤(パラチオン、ダイアジノン、マラソンまたはマラチオン、スミチオン)

 

 有機リンの急性中毒
 誤って、または自殺目的で飲んだり、水田や畑へ大量に散布され、空気が高濃度に汚染されると発症する。
 瞳が縮む、汗・鼻汁・涙が出る、ハーハーと息をする、体がけいれんする、下痢をする、筋肉がピクピクと動く、精神的不安、うつ状態など。末期には気管支がけいれんし、呼吸や血管運動神経がまひすることで苦しみ、
中枢神経系の抑制などが原因で最後は息がとまり死亡する。
体内の酵素(筋肉をゆるめる働きをするコリンエステラーゼ)を破壊するため上記症状が出る。


 安全神話により隠されていた有機リンの慢性毒性
 農薬メーカーが、1968年ごろ「有機リン剤の慢性毒性は存在しない」

という誤った「医学的知識」を流し、それを農林行政がうのみにしていた。

 ※ どこかで聞いたような話ですね。


 日本における有機リン被害
 1955年ごろに使用され始め、1960年以前からすでに被害はあった。
 1971年以前はおもにパラチオンによる自殺や事故で

毎年500人以上が死亡(急性中毒)
 慢性中毒は、長野県佐久地方で認識され始めた有機リン剤マラソンによる

視覚障害。

 佐久で現れた理由は、
佐久は長期間残留して毒性が持続する有機塩素系の農薬(BHCやDDT)

のかわりに、「残留しない」農薬を使おうというキャンペーンがすすめられて

いて、有機リン系農薬マラソンが早期から使われていた。
 
 有機リン慢性中毒の発見
 1965年、東京の石川哲医師のもとに、3人の妙な子どもが

ほぼ同時に送られてきた。3人とも失明するかもしれないと地方の医師に

診断されていた。
 3人には共通点があった。7~8才、家で水をガブ飲みしている、

すぐたくさんの汗をかく、よく転ぶ、ハーハーと息をする、眼鏡をかけても

視力検査表が読めないほど視力が低下、視野狭窄など。
 3人は、静岡、山梨、神奈川の農家の子だった。
 有機リンの殺虫剤パラチオン(ホリドール)を家の周りで

日常的に使っていることがわかった。

 

 有機リンによる視覚障害(近視、目の充血)の理由
 目は神経の束からできているので人体の中でも

化学物質にもっとも敏感な部分。
 虹彩筋に瞳を閉じたりあけたりさせ、

毛様筋に水晶体の厚みの調節をさせる酵素

(アセチルコリンとコリンエステラーゼ)を有機リンは破壊する。
 年齢とともに水晶体が硬化し、水晶体自体の反応がわるくなるので

、有機リンの影響が出にくい年齢が低いほど出やすい)。


 食と化学物質過敏症
 化学物質過敏症の人に顕著な特徴
 体内にマグネシウム、セレニウム、亜鉛、ビタミンC・Eが少ない
 活性酸素に抵抗する酵素(SODやGPX)の活性を示す値が低い


 食についての注意
 農薬・化学肥料を多用した作物は本来の栄養(ビタミンなど)をあまり含有していない。
 コーラ・ハンバーガー等のジャンクフードは添加物(化学物質)が多い。
 輸入作物には、収穫後のカビや虫害を防ぐためのポストハーベスト農薬が残留している。
 

 化学物質過敏症を避けるには:
 食べ物についても、

化粧品や歯磨き剤・洗剤・芳香剤・消臭剤・殺虫剤・防虫剤等々についても
誰が何を使ってどのように生産したのか、そもそもそれは体と地球の健康のためにほんとうに要るのか
ということを常に考えていくことが必要なのではないでしょうか。
 
※ なおネオニコチノイドは、

有機リン系農薬を避けようとして使用され始めたのですが、

ネオニコチノイドもまたなおミツバチの失踪原因である、

あるいは子どもの適応障害との原因であるとの疑いが濃厚だと

指摘されています。