◆米国のアジア太平洋支配を拒否する フィリピン共産党
 2012年2月22日付
 機関紙『アン・バヤン』より 5659号、5660号で上下連載
 アメリカ帝国主義は現在、ひきつづく経済危機のもとで、アジア・太平洋地域にその支配をひろげることに重点をおいている。アメリカ帝国主義は、「アメリカの太平洋時代」の名のもとに、その力をふりまわしてきた。それは、アメリカ帝国主義の支配をこの地域にひろげ、強化し、その支配にたいするあらゆる抵抗や脅威をうちまかすための枠組みである。
 アメリカ帝国主義の頭目であるバラク・オバマは、「この地域におけるわれわれの永続的な利益は、この地域におけるわれわれの永続的なプレゼンスを必要としている。アメリカは太平洋国家であり、われわれは存在感をしめしつづける」と宣言している。
他方で、アメリカ国務長官のヒラリー・クリントンは、「アジア・太平洋地域へのいっそうの投資」は「国内の繁栄と安全にとってのカギである」とのべている。これらの宣言とそれにそったアメリカ帝国主義の行動は、アジア・太平洋諸国の政治的、軍事的、経済的、外交的な諸問題にたいするアメリカの介入をいっそう強化するもの以外ではない。そうした介入を正当化するために、アメリカは、この地域の国国がアメリカの指導権をつよくもとめていると主張している。
 アメリカ帝国主義がアジア・太平洋地域への介入を強化してきたのは、アメリカの経済恐慌からの回復にとってこの地域がいかに重要かを知っているからである。アメリカ帝国主義は、アジアの広大な市場をほしがっている。クリントン自身が「アジアのひらかれた市場は、アメリカの投資と貿易にかつてない機会を提供するだろう。……(アメリカの)経済の回復は、アジアの広大で成長する消費基地への輸出とそれを活用するアメリカ企業の能力にかかっている」とのべている。
 昨年、アメリカはこの地域に三二〇〇億㌦相当の商品を輸出し、アメリカ国内の八五万人の雇用をささえた。オバマ政府は、二〇一五年までにアメリカの輸出額を二倍にするために、この地域の市場へのアメリカ製品の流入にたいする障壁をうちやぶって、さらにすすもうとしている。
 TPPを道具に
 アメリカは、この目的に近づくために、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)とよばれる貿易ブロックをつくろうとしている。アメリカはこのキャンペーンのなかに、いくつかの小国、オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムを参加させている。アメリカはこのTPPをつうじて、アメリカの政策、法律、要求を支持する一つの経済ブロックをつくることを期待している。アメリカは、中国経済をこじあける一つの力としてTPPをつかおうとしている。
 アメリカは現在、このTPPをおしすすめるために、あらゆる機会を利用している。さいきん、ハワイでおこなわれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議やインドネシアのバリでおこなわれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に参加したときも、この問題が主要な議題であった。(中略)
 アメリカ帝国主義は、アジア・太平洋地域でのみずからの支配を維持しつづける唯一の道は、この地域への軍事プレゼンスを強化しつづけることであるということを理解している。アメリカは、巨大な軍事プレゼンスを維持することによって、第二次世界大戦後六〇年間にわたってこの地域を支配することができた。一九九一年まで約二万人のアメリカ軍がフィリピンの米軍基地に駐留し、それらの基地は朝鮮、ベトナム、中東やアジア・太平洋のその他の地域へのアメリカの侵略戦争の出撃基地としてつかわれた。
 アメリカはいまでも五万人以上の兵力を日本と南朝鮮の米軍基地に配備している。日本や朝鮮で米軍の駐留に反対する声がつよまるなかで、オバマ政府は、いわゆるアメリカの太平洋時代のもとでその目的を達成するために、北東アジアにおける軍事協定を維持、手直しすることで、この地域での軍事的影響力を強化することをのぞんでいる。
 アメリカは同時に、東南アジアの他の国国にたいして、軍事演習のさいの参加をもとめている。アメリカは、JSOPTF(フィリピン統合特殊作戦タスクフォース)をつうじてフィリピンに恒常的な軍事駐留を維持し、この地域での反革命戦争に介入できるようにしている。アメリカはまた、東南アジアにおける米軍の緊急展開のための基地としてフィリピンを利用している。
 アメリカはフィリピン、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ブルネイの軍隊との合同軍事演習をおこなうことをつうじて、これら諸国の軍部がとる路線や方針にたいする影響を強化するようつとめてきた。アメリカはまた、ロシアとのながい同盟の歴史をもつインドの軍部にたいして大きな影響力を行使することをのぞんでいる。
 アメリカは同様に、オーストラリアへの軍事プレゼンスと同盟を強化しており、さいきん、オーストラリアの最北に二五〇〇人の米軍部隊を駐留させる協定に調印した。インドネシアと中国はこうした動きに神経をとがらせている。アメリカはインド洋と中国海をむすぶ橋にあたるところに、みずからの軍事プレゼンスを強化している。アメリカは、スプラトリー諸島問題をめぐる外交的政治的緊張をあおり、それを利用して、「シーレーンの自由を維持する」という名目で南中国海でのみずからのプレゼンスを強化している。
 それに関連して、アメリカの軍艦がフィリピンやシンガポールにしばしば寄港することで、アメリカは自己の力とプレゼンスをつよめている。アメリカはまた、フィリピンに軍艦を売っている。