アメリカ虎の威を借りてきた自民党とその支持者たちさん、

目を覚ましてください。

 田中宇さんの国際ニュース解説

http://tanakanews.com/131202japan.htm

から転載↓

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この記事は「米国が中国を怒らせるほどドルが危なくなる」の続きです。
http://tanakanews.com/131128china.php

 11月23日に中国が、尖閣諸島を含む東シナ海の空域を、進入前に中国へ
の事前通告を必要とする「防衛識別圏」に設定した。日本政府は強く抗議し、
米国も中国を批判しつつ、日本の実効支配下にある尖閣諸島が日米安保条約の
対象地であると、あらためて表明した。11月25日には、米軍の戦闘機2機
が、中国をあなどるかのように、事前通告なしに、中国が新設した識別圏のな
かを飛行した。中国は、これに対する戦闘機の緊急発進をしなかった。けしか
らん中国に米国が一発かましてやったと、喜んだ人が多かったかもしない。尖
閣問題で中国と対立することで日米同盟(対米従属)を強化するという、尖閣
国有化以来の日本政府の策略が結実した(ように見えた)瞬間だった。

http://www.commondreams.org/view/2013/11/28-4
Playing Chicken in the East China Sea

 しかし、日本にとって有利な状況は一週間も持たなかった。米国務省は
11月29日「米国の民間航空会社が、中国の防空識別圏の設定に従うことを
望む」という趣旨の発表をおこなった。米国務省は、この表明によって中国の
識別圏が尖閣諸島を含んでいることを容認したわけでなく、中国が尖閣を含む
識別圏を設定したことは問題だと言いつつも、米国の民間航空機が中国の識別
圏の設定を遵守して、進入前に中国に飛行計画を提出するよう求めた。

http://www.ft.com/cms/s/0/41e02002-58e7-11e3-a7cb-00144feabdc0.html
US urges airlines to comply with China air rules

 すでにシンガポール航空や、オーストラリアのカンタス航空は、中国の識別
圏設定を守ることを表明している。韓国は、中国の識別圏設定に弱々しいなが
ら反対を表明したが、大韓航空は、中国の設定を遵守することを決めたと報じ
られている。遵守しないと宣言しているのは、日本政府の要請を受けた日本航
空と全日空だけになっている。

http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-25165503
US carriers urged to comply with China air zone rules

 日米など景気が悪い先進国の航空市場がふるわないのと対照的に、

中国は、
空港や国内線・国際線の航空路を増やしている。日米豪韓などの、アジアを重
視する航空会社にとって、中国市場でうまくやっていくこと、中国当局と関係
を良くしておくことは、利益の増減に直結する重要事項だ。中国の識別圏設定
をけしからん、容認できない、と非難・威嚇するのが策である政府間の防衛・
外交の関係と対照的に、航空業界から見た経済関係では、中国が設定した新規
則に喜んで従うのが良いことになる。

http://www.ft.com/cms/s/0/d4be05c6-5a61-11e3-942a-00144feabdc0.html
Japan to take up spat over China air zone with US

 米政府は近年、米国の大企業からの圧力・要請にとても弱くなっている。

米大企業群の言いなりで、米議会も知らない秘密会議で貿易協定の内容が

決まるTPPがその象徴だ。米国の連銀や財務省が金融界を救済するために

ドルや米国債の過剰発行をやめられない量的緩和策(QE)もその一つだ。

中国路線の拡大に積極的なアメリカン、デルタ、ユナイテッドなどの経営者が、オバマ政権の中枢に電話して、中国が米航空界に意地悪したくなる事態に

しないでくれと要請したのでないか。連邦航空局(FAA)は、

日本外務省からの問い合わせに対し、中国の識別圏を守れと米航空界に

要請していないと答えたそうだが、
中国の規則を守りたい(中国を怒らせたくない)のはFAAなど米当局より、
米航空業界の方である。

http://tanakanews.com/130812trade.htm
貿易協定と国家統合

 日本航空と全日空も、中国路線の拡充に力を入れてきた。だから、中国が識
別圏を設定したら2社はすぐ遵守することを決めた。しかしその後、日本政府
が2社に要請(事実上命令)して、2社は中国の識別圏を無視することになっ
た。米国は政府より大企業が強いが、日本は官僚独裁だから、大企業より政府が強い。米政府は日本政府より強いから、強い順に並べると、

米企業、米政府、日本政府、日本企業の順番になる。

今後、日本の日航と全日空は、中国でのビジネスがやりにくくなる。

中国に連絡せずに中国に向かって飛ぶ2社の旅客機が、

中国の戦闘機に追尾されるかもしれない。乗客は恐怖を味わい、

2社の中国線に乗る人が減るかもしれない。

その穴を埋めるのは、米国や豪韓など、さっさと中国の識別圏設定を

遵守した航空会社だろう。

中国との戦いは、軍事や政治でなく、経済で勝敗が決まる。

 米政府は、中国の識別圏を無視する威嚇的な戦闘機の飛行をやったのに、その後、自国の航空界に識別圏を遵守させるところまで腰が引け、

譲歩してしまった。今夏のシリア空爆問題などと同様、米オバマ政権は、

当初の強硬姿勢を後から崩す優柔不断さを世界に露呈している。

地元の同盟国が、米国の当初の強硬姿勢に迎合して

自国も強硬姿勢をとると、あとで米国にはしごを外されて
ひどい目に遭い、米国を信用できなくなる。シリアやイランの問題では、サウ
ジアラビアとイスラエルがそのような目にあった。サウジ王政は対米従属戦略
の見直しを表明し、イスラエルも裏で方向転換しているふしがある。

http://tanakanews.com/131024saudi.php
米国を見限ったサウジアラビア

http://tanakanews.com/130823egypt.php
サウジとイスラエルの米国離れで起きたエジプト政変

 尖閣問題では、日本が、サウジやイスラエルの位置にいる。

今回、日本の右派からは、日本政府がせっかく自国の航空会社に

識別圏無視のリスクをとらせたのに、

その数日後に米政府が自国の航空会社に識別圏遵守を求めたので、

中国に対する国際的な厳しい態度が崩れてしまったと

米国の優柔不断さ、態度のゆらぎを批判する声が出ている。

対中関係での米国の優柔不断は、

経済面で親中国が良いが、軍事政治面で反中国が良いという矛盾から

発している。

中国が内需拡大策に転じて成長し、

米国の実体経済の悪化が進むほど、

経政の矛盾がひどくなり、米国は優柔不断を増すだろう。

 

 このまま日本は米国が右を向けと言えば右を向き、

下に下がれといえば下に下がることを続けるのか。

 日本は地政学的位置を活かせ。ロシアと中国に

はさまれていると考えるのではなく、

ロシアとも中国とも近いと考えるべき。

 米国と対立まではしなくていいが、親ロ、親中というカードも

米国に対する関係でもつべき。 この青字部分のみ=katsuko

  

 サウジやイスラエルの先例が示すように、対米従属(あるいは逆に、イスラ
エルのように米国の戦略を牛耳って自国の力にする策)は、国家戦略としてリ
スクが高くなっている。リスクを軽減するには、対米従属を国是から外してい
くしかない。「米国はけしからん」という主張は「対米従属をやめよう」とい
う主張と紙一重の差に見える。しかし今の日本では、対米従属をやめようとい
う主張が大きな声にならない。右からの米国批判が出てもすぐ消される(左か
らの主張は誰も聞かない)。日本の右派は戦後ずっと米国の傘下の反共産主義
の道具であり、世論の拡声器機能であるマスコミも、対米従属を固持する官僚
機構の配下にある。米国が「お上」の地位にある限り、官僚は「米国の意を受
けて動く人々」として政治家(国会)より上位にあり、隠然とした官僚独裁体
制を維持できる。

 今後、米国の覇権が低下して中国などBRICSの多極型覇権が台頭する傾
向がさらに進むだろうから、米国と連携して動く外交軍事戦略を持つことのリ
スクはますます高まる。日本は、いつまで対米従属を続けるか。中国が日本に
対して強硬姿勢に出たら、米国は弱体化する中で、どう対応するのか。中国は、
そのあたりを見極めようとして、尖閣問題で日本に売られた喧嘩を倍返しに
するようなことを連発している。

http://m.yna.co.kr/mob2/en/contents_en.jsp?domain=3&ctype=A&site=0100000000&cid=AEN20131129003800315
China media identifies Japan as 'prime target' of Beijing's air zone

 欧州では、EUがウクライナ、アルメニア、グルジア、モルドバといったロ
シア近傍の国々と経済協力関係を強化して取り込もうとした矢先、ロシアが各
国に圧力をかけてEUとの関係強化を阻み、逆にロシアを中心とする関税同盟
に入れと圧力をかけている。アルメニアは、すでに9月にEUとの関係強化を
やめてロシアとの関税同盟に入ると表明した。最近では、ウクライナも同様の
決定をしている。これらの動きの背景にあるのも、米国の覇権の衰退だ。

http://www.ft.com/cms/s/0/681d7b48-52d9-11e3-8586-00144feabdc0.html
Ukraine serves Putin a foreign policy triumph

 EUは東欧諸国に対し、経済発展を加速できるEUとの関係強化の見返りに、
民主化や人権重視、欧米型の経済規範を取り入れよという条件を出してきた。
これらの条件は、いずれも米国の覇権体制が重視してきたもので、EUは米
覇権の一部として、東欧を取り込もうとしてきた。しかし今、EUの後ろ盾と
しての米国の覇権力が弱まり、経済の面でも、米欧とつき合うより中露など
BRICSとつき合った方が儲かる事態になっている。米国の後ろ盾を失うと、
東欧から見たEUの魅力は半減する。ロシアは、中東で米国の影響力が弱くな
り、自国の政治力が強まった流れに乗って自信をつけ、EUを妨害して近傍諸
国を自国に取り込む動きを強めている。ロシアがウクライナなどを取り込もう
とする動きと、中国が尖閣問題の強硬姿勢で日米同盟の強さを試す動きは、米
国の覇権弱体化を受けた動きとして同根だ。


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◆米国が中国を怒らせるほどドルが危なくなる
http://tanakanews.com/131128china.php
【2013年11月28日】米国債の観点で見ると、米国が一線を越えて中国
を敵視するのは米国の国益に反する。米国が、日本のために自国の覇権を崩し
ても、中国敵視を続けるとは考えられない。日米と中国の対立は、軍事問題と
してのみ語られているが、その行方にとって決定的なのは軍事でなく、米国債
や金融相場、経常収支などに象徴される経済だ。

◆見えてきた中東の新秩序
http://tanakanews.com/131119mideast.php
【2013年11月19日】独裁と混乱が続いたエジプトが、米国の傘下を離
れ、ロシア外相が訪問したとたん、安定化に向けて動き出した。パレスチナ和
平も、米国が何十年も仲介してうまくいかなかったが、フランスが仲介しにき
たとたん、ネタニヤフがこれまで考えられなかった首脳の相互訪問を提案した。
ロシアやフランスが、特に外交上手なわけではない。米国が下手糞すぎた。米
国の中枢が、自国の覇権をこっそり自滅させたい隠れ多極主義であると思われ
るゆえんだ。これまでの米国の覇権体制下より、きたるべき多極型の世界体制
の方が、世界は安定すると予測できる。

◆イラン核交渉の進展
http://tanakanews.com/131118iran.php
【2013年11月18日】イランと米国の協約を妨害したフランスは、イス
ラエルが孤立して米欧を巻き込んでイランに自滅的な戦争を仕掛けるのを防ぎ、
イスラエルとイランとの和解や、イスラエルの側に立ってパレスチナ和平を仲
裁する役割をやろうとしている。これまでイスラエルの庇護者だった米国は、
今回のイランと協約の流れの中で、イスラエルと対立するようになっている。
米国から外されたイスラエルは、孤立して何をやり出すかわからない。ロシア
や中国はイランの側に立っているので、イランを敵視するイスラエルの側に立
てない。だからフランスがあえてイスラエルの側に立ち、なだめる役を始めた
のだろう。