zeraniumのブログ さん

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から転載:


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 「麻」「大麻」「ヘンプ」「マリファナ」と聞けば何を連想するだろうか。
   それらはすべて同一の植物を指す呼び名である。麻の英語読みはヘンプで、それは繊維の原材料として連想され、大麻やマリファナといえば法律で禁じられている麻薬のイメージがある。では、この植物の正体は一体何なのだろうか。麻の歴史を調べてみると、これほど人類に幅広く用いられてきた植物はないことがわかる。

   麻は、中央アジア原産の一年生の植物で生育が早く、あらゆる気候に順応できることから、熱帯から寒冷地まで、世界中のほとんどの地域に分布している。麻は古来から人類の暮らしに密着してきた植物で、世界各地で繊維のためだけではなく、食用にも栽培されてきた。種子は、現在でも七味唐辛子に入っているようにそのまま食用にできるし、油は食用にも燃料としても利用できる。その他、麻の花や茎、葉に至るまで捨てるところはなく、さまざまな用途に活用されてきた。

   日本でも麻は古来から自生しており、紀元前から栽培されていたようである。
   その様子は「三国志」などにも記されている。戦国時代になって大陸から綿が渡来するまでは、衣類は主に麻から作られており、また神道でも、神聖な植物として数々の儀式に使用されてきた。戦後になって大麻取締法ができ、大麻の栽培や所持が禁止されるまでは、麻は日本人にとって馴染み深い植物だったのである。

   一方、世界に目を移すと、中国では古来から種の中身は漢方薬として利用され、インドでは、麻の花から採取できる樹脂が鎮痛剤や消化促進剤として古くから用いられてきた。また古代エジプトでは、神殿で麻を焚いた煙を吸い、神と対話できる精神状態を作り出すことにも使用されたことがパピルスに記されている。つまり麻は食料だけでなく衣類、燃料、薬剤のすべてをまかなう驚くべき植物であったのだ。これほどまでに紀元前の古代から世界中の文化で人類に重用されてきた植物が、今では「大麻=麻薬」として忌み嫌われ、法律によって規制されるものになっているのだ。その背景には何があったのだろうか。

   麻が「大麻」「マリファナ」などと呼ばれ、世界的に禁止される麻薬として扱われるようになった始まりは、アメリカである。しかし禁止される前のアメリカ社会においても、麻は広く使用され人々の生活に浸透していた。麻の栽培は、合衆国の歴史を通じて大々的に奨励されており、17世紀と18世紀の植民地時代には、麻の栽培を義務づける法律さえあったのである。初代ワシントン大統領や、第三代ジェファーソン大統領が麻を栽培していたことは有名な話だ。1800年初期のアメリカでは、人々は麻で税金を支払うことができ、それほど多く栽培されていた作物であった。

   大航海時代の帆船の帆やロープの9割は麻から作られていたし、1920年代までの布地や織物、ベッドシーツ、カーテンなどの8割は麻製であった。また聖書や学校の教科書、国旗や地図、合衆国の独立宣言書などのすべてが、麻を原料とした紙で作られていた。そして1916年に米国政府は、麻には樹木の4倍以上の生産効率があることを認め、1940年までには全ての紙を麻から生産する体制を作るとして、森林破壊を食い止めるための政策の実施を決めたのであった。

   また産業界においても麻は大活躍していた。
   ヘンリー・フォードの開発した初期のT型自動車は、麻の種を絞って作られたヘンプオイルが燃料であったし、車のボディも、鉄の10倍の強度を誇る麻製の強化プラスチックで作られていた。つまり車の本体から燃料まで、すべてが麻から作られていたのである。医療の分野でも麻は広く普及していた。1840年代には、医薬品の約半分は大麻が占めており、1850年代のアメリカ薬局方には「睡眠障害、不安神経症、神経痛、痛風、筋肉痙攣、狂犬病、コレラ、痙攣、舞踏病、ヒステリー、うつ病、錯乱、子宮出血」などに効果があるとして、実に数十種類の病気に対する治療薬として記載されている。ちなみに1800年から1900年初頭においてアメリカだけでなく、麻は世界中で同じようにもっとも使用された薬であった。日本でも明治時代には、喘息の治療薬として「大麻たばこ」が販売されていた。

   そして、1937年のことである。
   アメリカで「マリファナ課税法」という法律が作られた。この法律はマリファナの害を防ぐためではなく、膨大な大麻製品に課税することが目的であったが、実際には麻の栽培や販売に厳しい許可を義務づけるものであった。つまりそれは、事実上麻の使用を禁止するものであったのだ。「マリファナ課税法」は、石油産業、つまりそれを所有する国際銀行家のために作られた法律であった。この法律によって麻から作られた薬や紙、布、燃料などすべてに高額の税金がかけられることになり、麻は市場から抹殺されていったのである。

   しかしコストや利便性において非常に優れた麻に、石油産業が打ち勝つことは容易ではなく、そのために高額の税金だけでなく、取り扱いを規制するという二重の圧力がかけられた。その甲斐あって麻製品は衰退し、石油産業だけでなく、製紙、繊維産業も大きな利益を得ることになった。今まで麻で作られていた医薬品や布、紙、燃料などが、石油や木材から作られるようになったからである。

   麻の評判を落とすために用いられた一番強烈なものは、「マリファナを吸うとみんな殺人鬼になる」というプロパガンダ(過剰宣伝)であった。麻が人間の精神に及ぼす影響は本来極めて穏やかなものであるが、凶悪な殺人事件が起きると、殺人者がマリファナを吸っていたと強調され、マリファナは人格を破壊する危険な麻薬として、マスコミで大々的に報道された。しかし当時のアメリカ国民は、マリファナがただの麻に過ぎないことを知っていた。また医療関係者も麻に麻薬のような習慣性がないことを知っていたが、法律が作られてからは徹底的な取り締まりが行なわれ、麻から作られた薬を処方した医師や、麻を研究した科学者も犯罪者として扱われるようになった。麻の薬を服用していた患者や医師ともども刑務所に送られたのであった。

   その結果、数世紀にわたって得られた大麻の研究成果のすべては捨て去られてしまった。大手新聞はわずかに残った麻の研究者の存在さえも、「麻薬を広める詐欺師」と表現し、汚名を着せることで社会から完全に葬り去ってしまった。日本では戦後、アメリカ占領軍の指導のもとに昭和23年に「大麻取締法」が施行され、大麻の栽培が禁止された。しかし日本のこの法律には規定された目的がない。おそらくアメリカの指示に従っただけであろう。

   このようにして、エコで安全で捨てるところのない有用植物である麻は、我々の手から奪い去られてしまった。麻こそが人間の健康を守り、地球環境を守る道であったのだ。それもすべては、お金と石油を支配する国際銀行家の利益のためである。


         「マスコミとお金人の幸せをこうして食べている」 THINKER著
                      5次元文庫徳間書店


                           抜粋