このスペイン風邪は、非常に恐ろしい流感で、従来の各種インフルエンザ・ウイルスの主な感染罹病者である子供や高齢老人に加えて、特に壮年人口 (25~35歳の成人層) に対して高比率で感染罹病させた。当該期間から再構成された数値に基づけば、アメリカ人口の28 % がスペイン風邪に感染し、その内の1.4 % から2.3 % (即ち総人口の0.39 % から0.6 5 %) が死亡したのである。実に、このインフルエンザが突発的に大流行した1918~1920年は、20世紀中にアメリカ合衆国の人口が減少した唯一の時期を示している。
世界中に報道されている今回のA (H1N1)型豚インフルエンザについては不明な情報が多いが、過去5ヶ月間で引き出せる資料からは、このインフルエンザが1918年のスペイン風邪に匹敵するものでないことは明白である。最も注目に値するのは、罹病死亡率であり、より適切には、この死亡率の欠落である。ごく控え目に云って世界的な資料は大雑把であるが、9月4日の時点で、世界保健機関(WHO)は世界中でわずか3,199人の死亡をA (H1N1)に関連づけていた。資料的にはより信頼できる米国では、この流感による国内死亡者数は593人であり、1918年の流感によるアメリカ人死亡者数が402,000人から675,000人の範囲であったこととは比べようもなく少ないのである。
米国内では、当社STRATFORが入手した最も完全な資料は、4月にA (H1N1)が突発した際に最初に感染罹病者が出た地域の一つであるニューヨーク市からのものである。 そこでは、同市保健局が当該インフルエンザ発生の最初の数週間で市人口の10%にあたる80万人がA (H1N1)ウィルスに感染したと推計している。しかし、これまでのところ、わずか930人が入院を必要とし54人が死亡しただけである。つまるところ、A (H1N1)は、従来のインフルエンザと同様に伝染性ではあるが、それよりも致命的であるような特性は示されていない。 事実、ニューヨーク市の資料からは、このインフルエンザによる罹病死亡率が当該ウィルス感染者の0.00675% (同市人口に対する比率では0.00064%)で統計的には無意味な数値に留まっていることが確認できるのである。
米国におけるインフルエンザ
(死亡者数) (全人口に対する死亡率)
1918 年 402,000 ~ 675,000 0.39 ~ 0.65 %
1957年 38,000 0.22 %
1968年 28,140 0.14 %
NewYork市の平均的流感季節 1,100 0.13 %
2009年-NewYork市* 54 0.00064 %
2009年-全国* 593 0.00019 %
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* A (H1N1)以外のインフルエンザ・ウィルス変種による数値は含まれない。
[9月14日までに判明した資料により] 当該通年の数値ではない。
統計資料出所はThe U.S. Centers for Disease Control and Prevention [米国疾病対策センター] 及び
New York City Health Department [ニュ―ヨーク市保健局]。