友人から聞いた話。彼女が韓国に旅行にいったときのこと。青磁を見たくて街を歩いていたら、こじんまりした、よさそうな店が見つかったので入ってみた。

 奥からお年を召した方が出てきた。こんばんはと日本語で挨拶したら、そのひと は日本語が流暢で驚いた。

 お上手ですね、日本に住んでいらしたことがあるのですかとほめると、その方は優しく理由を話してくれた。

 ―日本に行ったことはない。私が小さいとき、韓国は日本の植民地にされていたので、学校で教わったのですよ。

 友人はそれを聞いて恥じた。

 友人は、日本が過去に何をしたか、抽象的には知っていた。だがそのとき、日本語の強制という事実は思い浮かばなかったのだという。