小学校1年生を初めて担任し、学年担任間の同調を強く求められ苦しむ若い人に会いました。
「初めての1年生だから、学年で揃えないと、保護者が不安になる」と春先からずっと言われ続けてきたと言います。
自分なりに考えたことも、頭から否定され、ただでさえ自信がないのに、先輩教員からの指導を恐れて、職員室で「その先生と顔を合わせることもためらう」と怯えていました。
学主任任他からの、それらの指導の実際を聴いてみると、「きちんと、ちゃんと」という型通りのもので、ではそのために必要な前提である丁寧な教材研究などなく、指導書通り。すべて「丁寧に」が指導の中心。それも口調厳しく。
更に、文字指導や音読は家庭学習に頼るものになっていました。
初めての1年生の担任での生活指導、学習指導だから、そんなに上手くいかないのは当然です。だからこそ、先輩・ベテランの人は、はげまし、ミスをカバーして見守ることが大事なのになあ。怯えさせてどうするのでしょう。こういうのをパワハラだと思います。
ぼくは、「先ずは授業を楽しくしよう。そのために、これからの授業のための教材研究と授業の実際に痞える実践データを送るよ」と伝え、いくつかのデータをパソコンに送りました。
ことばのあそびを取り入れた文字指導の実践、『大きなかぶ』のデータ、そしてこれから授業をするという『おむすびころりん』のデータを送りました。それへの返信。
今日はありがとうございました!お話して、貴重な体験になりました😌
また是非ご一緒させてください!
「おむすびころりん」の教材データ、ありがとうございます。
音読が楽しくなる秘訣、イメージをしながら読むことでその音読が格段とおもしろくなるのだなと思います。
名タンテイというのはとても面白いですね(笑)ひとつ自分もやってみようと思います。
教材研究って自分が思っているより面白いものなのだと思いました。
楽しくできるやり方を考えながら頑張っていきたいと思います!
これら教材を見ただけで、楽しみ方って色とりどりなのだなと思いました。また何かあった時に、ご迷惑でなければご相談してもよろしいでしょうか?
ぼくは外から見守ることしかできないけれど、授業のための教材研究提供は、続けます。
もう一人、その場にいた4年生の担任の人には、『ごんぎつね』データ、それに9月の詩教材「ぼくは川」(阪田寛夫)、「忘れもの」(高田敏子)の教材関連データを送りました。阪田寛夫さんの『組詩・少年と川』の一連の詩、『かわとノリオ』(いぬいとみこ)、「ぼくは き です」(阪田寛夫)など関連しています。
これらは、リクエストあれば送ります。どうぞ。
shimomura-sanni@jcom.home.ne.jp (しもむら・さんにまで)。
長いですが、『おむすびころりん』教材分析・実践データです。(1)、(2)、(3)とあります。
「おむすびころりん」(1)
リズムにのって読む
光村国語教科書の一年生にある教材『おむすびころりん』。
これは七五調の文体で書かれています。実際に読んでみると、自然にリズムが生まれます。
ぼくは、その七五調を利用して、いい調子の音読にしていきます。
一年生のこの時期、子どもたちの中には、少し長めの文章を音読することが苦手な子がいますので、その子たちも「楽しい」と思えるような“歌うような音読”を目指します。そうして楽しいだけでなく、自信も持たせたいと思います。
ウッドブロックを手に持ちます。(これって、なんだか打ちでの小づちみたいだなあ)
リズム打ちをするぼくに合わせての音読です。
時々、掛け合いのことばをいれます。「それっ!!」「どうした!!」
おむすびころりん(トントントントン)
むかし むかしの はなしだよ(それっ)
(トントン トントン トトトトト)
やまの はたけを たがやして(どうした)
(トントン トントン トトトトト)
身体がゆれだした
リズムに乗って読んでいると、モモちゃんが身体をゆらし始めました。
ぼくはこれを待っていました。じっと直立不動で声を出す方が不自然です。
おどった おどった スットントン
こづちを フリフリ スットントン
おじいさん、おばあさんになって声をだすのだから、ここは動き回って、踊って結構です。狂喜乱舞、大歓迎です。普段からの学びがこんな時にいきます。ことばを文字にとじこめないんだからね。ことばと身体は一体だけです。口先だけの音読にはしません。
イメージをつくる
弾むような音読だけでなく、ことばを手がかりにして、イメージを広げていく読みにも挑戦です。
つつみを ひろげた そのとたん
おむすび ひとつ ころがって
ころころ ころりん かけだした
「どうして おむすびは ころがったの?」
この問いは、この場面の様子、おじいさんの様子、さらに気持ちを明らかにしていきます。
「まるいおむすびだったから 手がすべった」(ミユさん)
「つつみのはじっこのが、ころがった」(タマちゃん)
「手がはんたいの おむすびを取ろうとしてる」とタクマくんは、挿し絵を見て応えます。
「つかれて、バランス崩したんじゃないの?」とケイタくん。
「絵を見ると、つつみのわきの方が低い」とコウヘイくん。
「横にして持ってるしね」とレイナちゃん。
「手をひら(開)いてるし、ゆだん(油断」したね」とオトナっぽい答えのヒロトくん。
「山でしょ、ななめにかたむ(傾)いている」とコモモちゃん。
「ひざの上にのせたら、丸くて、ころがりやすいよ」とタクくん。
ぼくは、こどもたちの声をにこにこしながら聴きました。そして語ります。
「午前中、目いっぱいはたらいて疲れる、おまけにお腹がすいてれば、急いで、慌てちゃうよね」
子どもたちが、うんうんと頷いています。
ことばを手がかりに、物語をタンテイする--ぼくは「読む」ことをこうイメージしています。子どもたちにも名探偵コナンのように「おむすびころりん」をタンテイするんだよ、と語ります。
この場合のタンテイは、「オモシロさ」や「読みやすさ(音読のしやすさ)」の理由さがしです。
「難問」(?)解決には、アイテムが必要です。
ずっと以前、シャーロック・ホームズの時代、探偵たちは大きな虫メガネを持っていました。ぼくはそれに倣って、「心の虫メガネを持とう」と呼びかけています。
これって、何のことはない、ことばを注意深く読むということです。子どもたちに「心の虫ネガネでタンケンだ!」と呼びかけるだけで、ウキウキの子どもたち。物語とことばに集中してます。
小林少年って知ってますか?ここはコナンのように
名探偵・明智小五郎を助けて、活躍する少年です。少年探偵団です。その小林少年のように、ぼくを助け大活躍してくれるはず。(なんのことだかわからないって?江戸川乱歩のシリーズなんだけどな)
子どもたちはコナンなら知ってるかな。
ねずみたちのうたごえ
黒板にタイルを次のようにはります。
「お話の文の中で、こんなふうになってるところを見つけよう」と呼びかけました。
子どもたちは早速「心の虫メガネ」を使って、文章をタンテイします。
「見つけたヨ」と言った子を呼んで、声をかけました。
ある子には「君を名タンテイに任命します」と。
またある子には「ウ~ン。まだまだ修業が足りないねえ」と。
こうして、子どもたちの中に名タンテイが増えてきました。
こういう「だん(段)下がり」のところが5ケ所ありました。この下がったところは全部、ねずみたちの歌声です。「だん下がり」ということばは、階段をイメージして教えます。
これに気づいた子どもたちのだん下がりの音読は、ねずみたちになって歌うようになりました。
七音のリズムで読む
トン トン トン トン トン トン トン
ウッドブロックを叩きます。
この音に合わせてことばを音読します。
次に「 l 2 3 4 5 6 7 」と数を唱えてもらいました。
ぼくはそれに合わせて、本文を読みました。
(子) 1 2 3 4 5 6 7
(32) むか し むか しの はな しだ よ
子どもたちは、この文はどれも7っの音のリズムに合っていることを発見しました。タンテイして発見した7音のリズムをより意識して「おむすびころりん」を音読します。
「おむすびころりん」を読む(3)
ころころ ころりん かけだした
「かけだした」をタンテイしてみました。
「かけだしたのは何だろう? 」
そう、おむすびですね。
子どもたちは、そのことはすぐに分かったけれど、ここで新たな謎の発見をしました。
「おむすびは、かけたりするものなの?」
しばらく考えあっての結論は「かけているみたいに、いきおいよくころがりだした」ということでした。まるで「生きてるみたい」(発言より)なのです。
ここで更に謎です。
では「生きてるみたい」と思って「かけだした」と、おむすびを見ているのは誰なんだろうう?
子どもたちは「おじいさんがそう思って、おいかけるんだ」と発言しました。
「かけだした」をタンテイしていくと、おじいさんの気もちもここにあるんだと気づきます。
「すっとんとんと とびこんだ」
このあとの「すっとんとんと とびこんだ」という表現でもでも、同じようにおじいさんの気持ちに気づきました。
「あ~あ、おいかけていたのに」、「いきおいよく、あなにとびこんじゃった」、「ざんねんだなあ」
くやしさやざんねんさもタンテイの中で感じました。
音読が一変したョ
子どもたちは調子よく、つまり元気いっぱいにこの部分を音読しました。
「ちょっと待った!」
元祖(ちょっとくたびれてはいるけれど)名探偵サンニは、子どもたちに、その音読をタンテイすることを命じました。
「おむすびは見えたの?」
子どもたちは「まっくら」ということばに目を向けました。
「まっくらで見えないから、しかたなく耳をあてたんだ」
「よ~く聞いていたら、何かうたが聞こえてきたんだよ」
「遠くから聞こえた」
「小さな音だった」
子どもたちの夕ンテイ後の発見を聞いてから、次のように声をかけました。
「じゃあ、もう一度ここのところを声に出して読んでみてごらん」
子どもたちの音読は一変しました。
ことばを手がかりにタンテイする--「読解」をこう言い換えるだけで、読みはずいぶんと軽やかになります。
絵本の場合は、絵も当然タンテイします。
♪おどった おどった すっとんとん
最後の場面、おじいさんとおばあさんは喜びのあまり二人して狂喜乱舞します。
クラスの小さな「おじいさん」たちと「おばあさん」たちも歌い踊りだします。そのメチャクチャさの面白いこと。教室から飛び出て、廊下でも踊りました。
事情のわからぬ人がこの場を見たら、「???」、アブナイ集団と思うかもね。
ても、恥ずかしがらず声を出し、歌い踊るなんてすばらしいことです。シラ一っとしている方が子どもとしてはオソロシイ。
もちろんぼくも子どもといっしょに踊っていましたよ。
この実践をよんで、授業イメージがぱあっと湧いてくれたらうれしい。
もちろん、この授業は、ぼくとクラスの子どもたちの展開です。このデータは一つの参考にして、授業を楽しんでください。
これらのデータ(1年生、4年生)の他にも、2年生の『ミリーのすてきなぼうし』の実践データも取り上げてみようと準備中。
今週、小金井市での子どもたちの授業をしに行きます。小金井学習センター。木曜日(11日)夕方。
来週、この間ボランテイアで入っている支援級に、ギターを担いでいきます。4回目。金曜日(18日)の午後13:15~14:05。
どちらも、わくわくします。