文科省が、教員の働き方、給特法についての中教審答申報告に関しての、NHKの報じ方に対して抗議をしました。ありえない話です。

何故、文科省は抗議文を送ったのか。

先ず、文科省の発した抗議文を見てみましょう。

 

■文部科学省がNHKに出した抗議文(全文)

 去る5月13日(月)の貴放送協会の報道においては、冒頭「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない教員の給与の枠組みはこのように呼ばれています」としたうえで、「定額働かせ放題ともいわれる枠組み自体は残ることになります」と報じられました。

 

 今回のこの貴放送協会の報道は、公立の義務教育学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)について、教師の職務等の特殊性に基づき給与等の勤務条件の特例を定めていることなど、なぜこのような制度になっているのか、現行の仕組みや経緯、背景について触れることなく、一部の方々が用いる 「“定額働かせ放題”の枠組み」と一面的に、教育界で定着しているかのように国民に誤解を与えるような表現で報じるものでした。

 

 また、様々な議論を経て中央教育審議会の「審議のまとめ」が取りまとめられたにもかかわらず、今回、なぜ教職調整額の仕組みを維持するとしたかという中央教育審議会における議論の内容に触れることのない一面的なものでもありました。

 

このような今回の貴放送協会の報道は大変遺憾です。報道に当たっては、国民の皆様の正確な理解につながるよう、丁寧な取材に基づき、多面的に、公平かつ公正に取り扱う報道をするように求めます

 

抗議文は、要するに ①「定額働かせ放題」ではないのに、それを使ったこと

②中教審の給特法仕組みを維持することにしたことの内容に触れていないこと

だから、それは公平、公正な報道ではないとします。そこで、異例のNHKへの抗議文ということになります。

 

あれれ、おかしいぞ

まず、こういう報道をしたのは、NHKだけではないのです。

新聞各紙、放送局などほぼそういう内容の報道でした。なのに、NHKだけに抗議文。

「公共放送」ということで、政府のいうことを聞くのが当たり前。そうした姿勢が見えませんか。お上意識丸出しの愚かしい主張。

 

まず、NHKの報じ方を実際にみてみましょう。下のところにあります。

NHKの報じ方です。

 

丁寧な内容です。この報じ方は、一定、文科省にも配慮する内容です。それなのに「抗議」とは、いったいどうしてなの?それは、文科省の方に全く余裕が無いということでしょう。NHKは自分たち権力者側のものという意識がみえみえです。

 

「定額働かせ放題」―これはかなりうまいコピーです

 

教員の働き方の問題を説明するときにわかってもらうために、長~い説明をすることになります。

 

「え~と、教育現場では、教師たちの勤務時間がトンデモなく長くなっていてね。

それでも教員には教職調整額っていうものがあって、それは、教員の仕事には特殊性があって、残業代を出さなかった代わりになっています。

でも教育改革と言って、学校の教員たちの仕事量が半端なく増えていて、過労死レベルをこえたりしているんだよ。

ずっと以前から、残業代を出さないのは、法律違反じゃないかということになってね、その頃の平均的な残業時間が、1週間あたり1時間48分だったので、給与の約4%になる額を残業代ではなく教職調整額として一律出したんだよ。なんと、昭和40年代だから55年も以前のこと。

 

いくら働いても、4%を出しているから、いいだろう、なんてね。でも、今や、教育現場は月に50時間くらいは当たり前のただ働きをしているんだよ……」

 

こう語らないわけにはいきませんが、聞いている人は、もっと簡単に話してくれよっ!って声が返ってきそうですね。

 

それを「定額働かせ放題になってますっ!いくら働いても手当は変わりません。必要でないと思う仕事が多すぎて、肝心の授業や子どもと関わる時間がありません。そこを変えないと、教員の仕事に未来はありません!」といえば、すっとわかるよね。それが、文科省に堪(こた)えた「定額働かせ放題」という言葉です。


文科省(政府)は「定額働かせ放題」という言い方が気に食わないんです。その言葉が教員現場の矛盾をはっきりとあぶりだしたからです。

教員増をすること。それに意味の見えない仕事の押し付け・拡大止めること。仕事に見合った給料、教職本来の仕事をするための条件整備をすること。

これなんです。

 

おおもとに次のようなことがあったことを抗議文によって隠そうとはしていませんか。

 

東京新聞記事が暴き出します。

 

 

この文科省の抗議に対して、とりわけ現役教員からも批判が殺到しているとも取り上げられていると、教育アドバイザーの妹尾昌俊さんが、紹介していました。

 

●学校現場には次々と仕事が増えてきて、残業も多い。まさに「定額働かせ放題」な実態だ。NHKの報道は間違っていない。
●時間外にたくさん働いているのに、残業代が出ていない。そこを問題視するべきなのに、文科省と中教審は変えようとしない。
●政府の報道機関への不当な介入、圧力ではないか。文科省に忖度、萎縮する報道(NHK以外も含めて)が増えないか、心配だ。
●他のテレビや新聞などでも一部事実関係に疑義のある報道があったのに、なぜNHKの報道だけ槍玉にあげるのか。
●文科省は、こんな抗議文を出すヒマがあるなら、もっと学校現場のためになることをやってくれ。仕事を減らすとか、人(教員)を増やすとか。

 

《さまざまな批判、意見があがっているが、共通点を大きくまとめると、「文科省は、学校の大変さをちっとも分かっていない」ということかと思う。数年前(2021年)に「#教師のバトン」というハッシュタグで文科省が教職の魅力や学校のよさをSNSで集めようとした際にも炎上したが、今回も似ている。「文科省は、学校の大変さや教員の苦労を分かっていない、分かろうとしていない」と。》(妹尾)

 

そもそも、中教審も、文科省も、その心根には政権与党の自民党への忖度があるのが事実です。

もともと、自民党内では次の3つの案をもとに検討されていました。

①給特法廃止②給特法を維持し、教職調整額を引き上げる③教職調整額を引き上げ、学級担任や部活動顧問などへの手当を上積みする――その中で、多数意見であった ②と③の自民党の合併案を尊重した結果、中教審も文科省も、動きをつくったと言ってよいでしょう。

 

こうした情報が事前に記事にされていました。

昨年来、中教審特別部会で検討されていた背景として、処遇改善に向けては、教職調整額のあり方が議論の中心になる。公立学校教員の給料は、教員給与特措法(給特法)に基づき、基本給の4%相当が教職調整額として上乗せされる。1966年の教員の残業時間が月8時間程度だったのが根拠だ。代わりに、残業代に相当するものはない。

 自民党の特命委員会は10日、教職調整額を10%以上にする提言をまとた。増額には給特法改正が必要。自民は、政府が6月にもまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させ、早期に改正したい考え。

 中教審は、この提言の妥当性も含め議論を進める

自民党文教部会―文科省―中教審特別部会、この3者の出来レースだったということなのか。ここには現場の教員、子どもたちのことは抜け落ちています。