ぼくの住む町のお隣の地域の小学校に授業参加のことを書いた記事に対して、同じ名前tomokoさん(アメリカ在住の方、現地の小学生に日本語学校で「国語」の授業をしている方です)から、「とかげ」の詳細なイメージを知りたいと連絡が来ました。

14時間の時差があるそうな。でも(当然なんだろうけれど)メールは瞬時に届いているそうです。ヘンな時間に送らないように、時差のことも考慮しないとね。

国際的なブログ?でもないか、日本人の方ですから。

 

ということで、さつまただし「とかげ」の授業について、2回にわたってのブログ記事。

 

      鉛筆 鉛筆 鉛筆

 

「とかげ」(さつまただし)のイメージと音声を、教材研究として書いてみました。

 

(      )さつまただし

「とかげ」の授業は、これまで授業参観などで数多くおこないました。大学生への授業でも、講座などでも。

授業をご覧になった方はよく分かったと思いますが、敢えて題名を伏せたことによって、子ども(読み手)たちは、一層「ことば」(「おっ!!」、その繰り返し)に引き寄せられていきます。

<メロンパン><フランスパン>というクラスだけの記号に、興味と面白味も感じられたでしょう。この記号の示した空白も、意識してみると、「とかげ」の動きがイメージ出来て来るようです。

 

ことばを手がかりに動きまでイメージする面白さ

ここでは黒板に書いた詩を視写するという方法を取りましたが、この方法は古さを感じさせません。(ICT流行りの中でも)

自分で視て、書き写すことによって、イメージはより確かなものになると考えるからです。

 題名を伏せておいて、1行ずつ板書し、書き写させます。子どもたちの「なに?」「これ?」という疑問、戸惑いが伝わります。「これだけ?」といういぶかしさを感じている顔。顔。顔。

 

子どもたちは、「おっ!!」から「おどろき」「びっくり」という作者の心の動きをタンテイし、それはいったい何だろう、と考えました。これは子どもたちが「おっ!!」と思うものだから、たくさんのものがありました。この「自分はこう思う」ということが大事です。

 

題名を考えてみます。根拠は「ことば」にしかありません。教材詩をじっと見つめ、想像するしかないのです。

先生のことば、友だちの発言に対しても耳を澄まさざるを得ません。

 

「おっ!!」、「びっくり」、「おどろき」という題名予想です。

ここでは方向を変えました。

 

作者は何を見ていたのか

「びっくり、おどろき、作者がそう思って見ているものは何だろうか」という問いかけをしました。

 

子どもたちは自由に発言します。この自由さこそ必要だと思い、ぼくは聴きます。たくさんのもの、ことを子どもたちは出します。時折のヒントも入れます。

さつまさんが目の前で見ているのは、動物、生きものだよ、と。

 

子どもたちの自由な発言を受けた後、「さつまただしさんは、庭にいる生きもの、その動きを見ていました。それは……実は『とかげ』を見ていたんです」と明かします。

 

目の前の『とかげ』をイメージしてみます。動きを想像します。「おっ!!」ということば、ことばの「アキ」や改行に目をとめていくとき、あたかも目の前にとかげがちょろりっと動き、一瞬止まるイメージが重なります。詩の表現、空白などに目を止めて考えてみました。

 

音読でそれを確かめました。

 

『とかげ』ならば、どう動くかな?そういう自分の知っている体験をここで生かします。

それをより直接に感じるために、とかげの動きをイメージし、それに合わせて、「おっ!!」を音読表現します。

ことばからイメージを作って楽しむ、この経験はことばを豊かで深いものにしていきます。

私の役割りは、子どもたちのイメージと自由な発言を引き出すための、小さなパフォーマンス(指先でとかげの動きを見せる、「ちょろちょろっ」などとことばで表現する)をすることでした。子どもたちはすごく集中していました。

 

さまざまな動物でも遊べるよ

さつまただしさんは、庭などで(とかげ)を見て、その素早い動きと瞬間止まる間(ま)を文字化したのでしょう。

子どもたちとは、「とかげ」で遊びますが、「ライオン」「ミミズ」などほかの動物をイメージして遊ぶことも楽しめます。

でも最後は、作者が書くように「とかげ」の音読イメージで締めます。

 

実際の授業のイメージ(3・2の場合)

(子どもたちはノートを出している。)

3・2「今日は詩を読みます。不思議な詩だよ。」

3・2「黒板に、詩を書いていくから写してください。」

(そう言って、題名を示す。)

「     」

3・2「この題名は、あとで考えるから、「 」(カギかっこ)だけを書いてね。適当にあければいいよ。作者はね……」

(と言いながら、「さつま」と書くと、「さつまいも」という声があり。)

3・2「あはは、ザンネン、さつま ただしさんでした。」

 

3・2「詩の中身、1行目はこれです。」

(と言いながら おっ!! と書く。)

子「なにそれ?」「なんかびっくりしてる?」

3・2「次にこの下にメロンパンを書きます。」

(と言って、1マスぶんのメロンパンのイラスト(〇になかに#)を書く。)

子「なんでメロンパンなの?」

3・2「1マスあきっていうより楽しいでしょ。ぼくは、メロンパンが大好きなんだしね。」

 

(更にその行の下にまた おっ!! を書く。)

3・2「ノートの行<ぎょう>、変えてね。次にどんなことばが来るだろう?」

子「わかんないよ。」「ひょっとして おっ!! だったりして。」

3・2「そうなんだよ。2行目も おっ!! です。」

3・2「じゃあ、3行目。今度はどうかな。」

子「おっ!! なの?」「さつまさん、変なの。」

3・2「ここも おっ!! でした。」

子「え~っ?」「わ~い!!」

(とあいなかばする子どもたち。私は内心シメシメとにんまりしている。この詩にもう取り込まれているから。)

 

次の行は、これ。(長い細長いまるを書く。)

3・2「これってなあに?」

子「あっ、フランスパンだ!」

 

(そして、最後の行。)

3・2「これが最後の行です。 おっ!!」

子「この詩 おっ!! しか、ないんだね。」

 

3・2「さあみんな、この詩の題は何だろう?」

子「びっくり」「おどろき」「おっ!!」(などが出て来る。)

3・2「さつまさんは、あるものを見て、 おっ!! と驚いているんだよ。」

子「新幹線」「大谷選手のホームラン」「ほしかったゲーム」「海」

3・2「さつまさんが見たのは、動物、生きものなんだよ。」

子「デッカイぞう!」「キリンはどう」「ライオンの方がすごいよ」「海にいる一番大きい生き物かなあ」

3・2「それはシロナガスクジラです。地球で一番大きな生きものだね。」

(子どもたちがそれぞれに生きものの名前を出した。黒板いっぱいにそれらを全部書いたこともある。端折ってもかまわない。)

3・2「でも、さつまさんは自分の住む家の庭でその生きものをみている。その動きもね。」

子「ふ~ん」「あっ、とかげじゃない?」

3・2「そう、とかげが草かげから、出て来る。ちょろっと動いて止まる。」

(ちょろっとという動きを手の指先でパフォーマンスをする。)

3・2「見ていて、ちょろっと動いて止まった時に『おっ!!』と声を出してごらん。」

 

詩のことばに戻って、音声表現する

3・2「とかげ さつまだだし」

3・2「ちょろっちょろっ」

「おっ!!」

3・2「ちょろっ!!」(メロンパン)

「おっ!!」

3・2「ちょろっちょろっ」

「おっ!!」

3・2「ちょろっちょろっ」

「おっ!!」

3・2「ちょろっちょろっ、ちょろっちょろっ」(フランスパンの分)

「おっ!!」

 

何度やっても不思議で、面白い詩です。