朝ドラの『寅に翼』の評判がすこぶるいい。

ブログ記事に、一度もそのことを取り上げないので(『ブギウギ』のときは何度も書いたからね)、「どうしてなんですか」と聞かれました。

 

「いや~、ぼくがここで書くまでもなく、様々な所でとりあげてますからね。深堀して紹介するまでもないと思っています。すばらしいことは間違いなし。寅子たちが立ち向かう戦前社会のおかしさは、今にも残る現在のこととしてつながります。女性への差別、ジェンダー問題、身分社会の封建性の残滓、民族差別、貧富の問題などなど、ね。

その今につながる提起になっている朝ドラです。ぼくは、見て考えているだけで十分です。」

 

などと、語ってしまっていました。

 

 

あらら、しゃべってしまったので、すこしだけ、今週の『寅に翼』の展開のことに触れておきます。

今週はまたまた、劇的な展開でした。

【デイリースポーツのサイトから】

《いよいよ高等試験に臨む寅子(伊藤沙莉)。よね(土居志央梨)、涼子(桜井ユキ)、梅子(平岩紙)、香淑(ハ・ヨンス)、そして優三(仲野太賀)も狭き門に挑むが、結果はそろって不合格となる。女子部の合格者ゼロとなった明律大学は来年から女子部の募集を中止すると発表。女子部の面々は、あと一年だけ待ってくれと学校側に懇願するが、香淑、涼子、梅子はそれぞれの事情で受験を断念することに。》

 

この3人の「事情」が、どれもまたツライものでした。

キラキラ香淑(ハ・ヨンス)は、朝鮮人だということで、特高警察に目をつけられ、祖国に戻ります。(ハ・ヨンスが日本にやってきた際の様々な誹謗中傷のことも、知りました)

キラキラ涼子(桜井ユキ)は、家に縛られ、結婚のために試験をあきらめます。(母を演じた筒井真理子の酒に溺れた姿、すごかった)

 

キラキラ梅子(平岩紙)は、夫の理不尽さによって家を追い出されて、末の子を守って生きることを決心します。(平岩紙の抑えた演技は上手いなあと思う。しかし、芯の強さも感じさせながら。「紙」という芸名、紙みたいに白い肌だからって、劇団代表の松尾スズキがつけたって)

 

【翌年、皆の思いを背負った寅子はようやく合格を果たし、日本初の女性弁護士が誕生する。明律大学女子部の学生たちから、遂に3人の合格者が出ます。

猪爪寅子(伊藤沙莉)と、その1年先輩の久保田聡子(小林涼子)中山千春(安藤輪子)。】

(ぼくは、ここに出て来る俳優たちはどんな役者であるかは、全て当たってみました。いろんなことが分かってみると、楽しみが増えます)

 

【廃部寸前だった明律大学女子部は息を吹き返した。初の女性弁護士誕生と新聞が大々的に報じ、大学で祝賀会が開かれることに。】

 

 

口述試験に落ちた山田よね(土居志央梨)は寅子のもとを訪れます。

その場面でのよねのことば。

《「口述試験は完璧だった。」

最後に試験官から「それで君、弁護士になっても、そのトンチキな格好は続けるのかね。」と男装をなじられます。

そこで、よねは思わず言い返します。

「トンチキなのはどっちだ。あんたらの偏見を、こっちに押しつけるな!」

「私は自分を曲げない。曲げずにいつか必ず合格してみせる」

祝賀会は仕事があり、不参加するといい、別れ際に「言うのが遅くなったが、おめでとう」と祝福し去っていきます。》

この場面は理不尽です。けれど、よねは素敵です。

 

祝賀会では、3人に対してお追従のことばが続きます。寅子はそれを納得できない思いで聞いています。(ここらの表情だけで思いを伝える、ここが伊藤沙莉の演技のうまいところ)

そして、決然と言い切ります。背後にいる仲間たちのことを思いながら。さらに多くの女性たちのことも考えながら。

 

「生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない。男か女かでふるいにかけられない社会になることを私は心から願います。

いや、みんなでしませんか? しましょうよ! 私はそんな社会で何かの一番になりたい。そのためによき弁護士になるよう尽力します。困ってる方を救い続けます。男女関係なく!」

 

今週も素晴らしい展開でした。

あらら、ずいぶんと語ってしまいました。もう止めますね。

 

おまけを一つだけ。韓国で人気だったハ・ヨンスが日本にやってきたのは、絵の学びのため。それはこの写真のショットでわかります。撮影の合間に描いた絵。