光村「国語」の4年生の最初の教材『春のうた』(草野心平)についての相談があったので、アップする実践データです。
実際の授業をイメージして書いています。
 
①「春のうた」のみに限定してのデータです。本日紹介するのはこれです。
②別に、「蛙の詩人」とも呼ばれた草野心平の蛙の詩”春夏秋冬”を学ぶシリーズとして実践したデータも別にあります。これは、5年生や6年生(中には中学校以降でも)学ぶことができるのではないかと考えて実践したデータです。こうした教材研究が、4年の「春のうた」の授業を分厚いものにすると思います。
③草野心平という詩人の更に様々な詩を紹介するデータもあります。
 
    鉛筆  鉛筆  鉛筆

 

~「春のうた」 の授業をこんな風に~

 

    春のうた

         草野心平

       かえるは冬のあいだは土の中にいて

       春になると地上に出てきます

       そのはじめての日のうた

 

  ほっ  まぶしいな。

  ほっ  うれしいな。

 

  みずは  つるつる。

  かぜは  そよそよ。

  ケルルン  クック。

  ああいいにおいだ。

  ケルルン  クック。

 

  ほっ  いぬのふぐりがさいている。

  ほっ  おおきなくもがうごいてくる。

 

  ケルルン  クック。

  ケルルン  クック。

  

1.かえるの視点

春、冬眠から目覚めたかえるの喜びのうた。かえるの視点で書かれています。

だから、この詩は自分があたかもかえるになったように読みます。このかえるになったつもりで…というところで、ぼくは子どもたちにこう語り始めます。

【 サンニの語り】

「さあ、今この瞬間からみんなかえるだ。チチンプイプイッ!。ぼくがみんなをかえるにしたのだ。強力マジックだよ。」(サンニマジックは強力なのだ~)

 (ナンダヨー、トツゼン、などという声があっても、ここはいい意味で無視します。語りはゆっくり、穏やかに。脳内には静かな音楽が流れているイメージ)

 

「みんなは、ことばも蛙(かえる)語しかしゃべれないんだ。

時はだんだん涼しくなる秋。食べ物もなくなってお腹(なか)がすいてるけれど、からだは次第に動かなくなってきた。

冬を前にみんなは土の中が、何故か恋しくなる。土の中に潜ろう。机の下が土のなかです。机の下にもぐって、もぐって。(ケロケロ、嫌だなあという子もいるけれど、まあそうは言わずに…)

ほらほら、のんびりしてると霜がおり、氷も張る。雪も降りだすよ。そのままじゃあ、死んじゃうぞ。 

そう、みんな土の中に入ったね。」

 

「何だかみんな、うつらうつら、夢を見ているようだ。ねむい、ねむい。

土のなかは、外に比べて暖かいなあ。冬眠(とうみん)っていうけれど、かえるは完全に眠っているんじゃないんだよ。半分眠っているんだ。」

 

「もうどの位、夢見ていたんだろうか。

(ここでジングルベルの音楽を♪ハミングでうたう)

きっと今ごろは、人間の子どもたちはクリスマスのプレゼントをもらってるかもね。お正月もなくて、かえるのぼくらは土の中に。悲しいなあ、かえるは。」

 

ここらで、子どもたちはブーブー文句を言いだします。

「苦しいよ~」、「もうかえるやめたい~」

ぼくは、あえて無視して語りを続けます。この‟もうイヤだ”という感情を引きだしたいからです。こんな状況を脱け出したいという思いが、かえると自分を一体化させます。

語りを続けます。

 

2.外に出たいよ

「外はまだ雪がたくさん積もっています。

まだかなあ、まだかなあ。外に出たいよ~。」

 

「あれっ?何だか、土が少し暖かくなってきたような気がする。出たいなあ、外に。みんなもそう思うだろう?(「思う!」と子どもたち。)

みんな、外に急に出ると、何があるかわからないぞ。雪がいっぱいで凍え死んでしまうかもよ。」

 

3.土の中から出てきたかえる

「そうだ、そおっとちょっとだけ、頭を出してごらん。そう目玉だけだすような感じで…。ほら、何が見える?何を感じる?」

「どう思う?」

「見えるものは——?」

「おひさま」「太陽」という子どもたち。

「だってまぶしいんだもん」

 「青空が見える」「雲も浮かんでる」

「感じることはないかな?」

「あったかいなあ~」「風が気持ちいいよ」

ここらで子どもたちは、座席についてもらいます。

 

4.人間語で表現

こう語りかけたあと、子どもたちにかえるになって、「春のうた」の冒頭の二行を表現してもらいます。ここは人間語だけど。あくまでかえるになって、ね。表現の面白さを感じましょう。

「ほっ まぶしいな。」

「ほっ うれしいな。」

 

5.かえる語で表現

「うんうん、いいね。じゃあ、それをかえる語で言ってくれますか」

「お日さまが、ああ、まぶしいなあ」(→これを「ケルルン クック」というかえる語でやってもらいます)

「長い、長い闇の中から出てこれた」「生きていてよかった」「友だちにもあえた」(→さまざまな「ケルルン クック」)

「みずはつるつる、ながれてる」(→「ケルルン クック」)

「かぜがやさしくそよそよふいている」(→「ケルルン クック」)

かえるになりきることによって、深い、感動の「ほっ」が音声表現されます。かえる語で表現すれば、更に、何を見ているか目線を意識し、空気の暖かさ、においも感じ、生きていた喜びに浸って音読できるでしょう。何よりたのしい。

 

7.「いぬのふぐりってこんな花だよ。」

写真を見せる。

<いぬのふぐり>     <おおいぬのふぐり>

 

お上品なぼくは、「犬のふぐり」の「ふぐり」の意味について、さらっと説明します。さらっとでも、子どもたちは“ギョエ~ッ”と大騒ぎでしたが。

 

8.「くも」って、雲? 蜘蛛?

~「おおきなくもがうごいてくる」とは

「この“くも”は、空に浮かぶ雲(くも)かな?それとも、お腹すかせた蛙の大好物のえさの蜘蛛(くも)かな。どっちだと思う?」(手をあげてもらったら、空の雲派がやや多かったけれど、餌になる蜘蛛という子たちもいます。)

 

空の雲だと、目線は上を向いて、「おおきなくもがうごいてくる」という大らかな音声表現になりました。

それに対して、蜘蛛だと、目線は下です。かえるは腰を落とし、蜘蛛に気づかれないようにかくれて、しめしめ、うまそうだなあという思いで、声も潜めて「おおきなくもがうごいてくる」と待ち伏せする感じになりました。

 

どちらが「正しい」と決めつけず、自分の読みの解釈で表現を工夫します。

 

      💛💛💛💛💛

 

9.「えぼ」をよむ 

もう一つ、かえるの視点で一人つぶやく詩『えぼ(かえる)』(草野心平)を読むことによって、また表現が多様になります。教師が読んで、聞いてもらいました。

「春君。」とあるから、呼びかけるように。(事前にちょっと練習しましょう)

 

えぼがえる(いぼがえる)の独り言です。

 

      えぼ

           草野心平

  いよう。ぼくだよ。

  出てきたよ。

  えぼがえるだよ。

  ぼくだよ。

 

  びっくりしなくてもいいよ。

  光がこんなに流れたり崩れたりするのは。

  ぼくがぐるぐる見廻してゐるせゐではないだろ。

  やりきれんな。

  真っ青だな。

  匂ひがきんきんするな。

  ほっ雲だな。

 

  それでもこっちでもぶつぶつなんか鳴きだしたな。

  けっとばされろ冬。

  まぶしいな。

  青いな。

  やりきれんな。

  春君。

  ぼくだよ。

  いつものえぼだよ。

 

ここでは、「雲」とあります。

でも、「春のうた」での「くも」の解釈で「蜘蛛」と考えた人がその考えを変えることはありません。表現を楽しんだのだから。

 

   鉛筆  鉛筆  鉛筆

 

①、②、③のデータをリクエストください。

教材研究のお手伝いをしますよ。

→  shimomura-sanni@jcom.home.ne.jp  

さんにゴリラ(霜村三二) まで

 

パソコンにリクエスト(ほかのデータ)なども来ています。

本日まで札幌です。夕方には東京です。