おかみさんの側からタンテイする
タンテイする読みの続きです。

 

<本文より>
 すると、
 キーカラカラ キーカラカラ
 キークルクル キークルクル
と、糸車の回る音が、きこえてきました。びっくりしてふりむくと、いたどのかげからちゃいろのしっぽが見えました
 土間でごはんをたきはじめたおかみさんの耳に「キーカラカラ…」という音がきこえてきます。


この部分を、音読の際、子どもたちは調子に乗って元気よく読みました。「キーカラカラ…」の音量も普通でした。
ぼくは、ここで音読にストップをかけました。
「そういう読みでいいのかな?」こう問われて、子どもたちは一瞬戸惑いました。

ここはおかみさんの方からタンテイして、考えてみようと呼びかけます。

おかみさんのいるところは、土間の奥の炊事場です。音のする回っている糸車のところとは少しだけ離れています。前の図で確認します。


この回す音はそんなに大きなものとして聞こえるものではないでしょう。

おかみさん、気がつきます。あらっ、なんで音がするの?そこで「びっくりしてふりむく」「いたど(板戸)のかげ」見えたのは「ちゃいろのしっぽ」(「しっぽだけが見えた」)でした。
そのあと「ごはんをたきはじめた」のだから、しばらくは聴いていたのです。「きこえてきますと今目の前のことの様に書いてあります。過去形表現ではなく現在形で書いてあるのだから、そこで聴いているのでしょう。

 


<本文より>
 そっとのぞくと、いつかのたぬきが、じょうずな手つきで、糸をつむいでいるのでした。たぬきは、つむぎおわると、こんどは、いつもおかみさんがしていたとおりに、たばねてわきにつみかさねました。


そっとのぞく・・・たぬきに気づかれないように
じょうずな手つき・・・「じょうずな手つき」のタンテイです。
・たぬきはおかみさんがやっていたことをよく見ていて、学んだんだ(チサト)
・おかみさんのまねがしっかりできた(タイガ)
・きこりふうふがいなくなったあとも、まいばんやってきてれんしゅうしていた(モモ)
・おかみさんがじょうずだなあとびっくりしている(シン)

つむぐ・・・つむぐ(紡ぐ)ことの難しさについては、以前に書きました(ぼくの大失敗も)。右手で糸車をまわし、左手では綿をねじって撚(よ)らなければなりません。これはすごく難しい。「じょうず」になるには、かなりの練習が要ります。
ということは、たぬきは冬の間、雪のなかをやってきて、たくさん練習したのでしょう。子どもたちはそれもタンテイしました。


たばねる・・・「束ねる」と漢字で書いてみました。成り立ちからです。


成り立ちは、木、枝をひもなどで丸く集めた形です。
束(たば)ねるとは、細長いものをまとめて、一塊(かたまり)にすることです。

この場面では、紡いだ糸を束にしてまとめていました。
それをこれまでのつむいだ糸の束の上に積み重ねていたのでしょう。

 

おかみさんは、このたぬきの様子をそっと(気づかれないように)「のぞいて」いました。
どんな気持ちで黙ってのぞいていたのか、子どもたちはおかみさんの気持ちとしていろいろと語りました。

 

おかみさんは、じっと見ている
糸車をまわすつむぐたばねるつみかさねる――たぬきがしていることを脇の方からじっと見ているおかみさんです。この時間も意識するために、おかみさんの「内言」(心のことば)をノートなどに書いてみます。おかみさんのカットも自分で描き、吹き出しの中に書くといいでしょう。