花巻市の市鳥はふくろうです。街中にふくろうのモニュメントがあふれかえっています。
花巻市のホームページには以下の記述があります。
<市内各地に生息し、柔らかい羽毛に覆われたフクロウ科の鳥です。フクロウは、知恵のある鳥、福を招く鳥として広く市民に親しまれており、安心、安全なまちを目指す花巻市にふさわしい鳥です。>
 
賢治はふくろうが好きでした。市の鳥にした経過には、賢治が深く関わります。
下の絵は賢治が描いたものです。

 

 

 

フクロウの写真
宮沢賢治記念館前
 ベンチにも
 消火栓にも
花巻駅前の林風舎
宮沢賢治記念館下の駐車場


循環バス「ふくろう」号
ふくろう号
この本のことを思いだしました。
 
 
「宮沢賢治  鳥の世界」国松俊英・著/薮内正幸・画(小字館、1996・5月10日初版)
国松さんは、はるか以前、ぼくが前職(児童文学者協会事務局)時代にお世話になった人。
 
この本を読み直してみました。以下はこの本から。
ふくろうが主役になっている作品
賢治のふくろうの登場する作品はいくつかあります。
①「二十六夜」
②「林の底」
脇役をつとめる作品。
③「かしわばやしの夜」
端役の作品。
④「よく利く薬とえらい薬」
⑤「貝の火」
その他。
「セロ弾きのゴーシュ」
詩群
とあります.
 
「二十六夜」という作品から
*<あらすじ>*旧暦6月24日に、北上川の獅子鼻という岬の松林にたくさんのふくろうが集います。そこでのふくろうのお坊さんの説教話です。
ふくろうの子「穂吉」人間の子どもに捕まってしまい、紐で縛られていました。ふくろうたちは穂吉を助け出そうとします。
ふくろうのお坊さんは、この世界を「ここの世界は苦界」「忍土」と話し、せつないことに耐えるよう説教します。
翌日、子ふくろうの穂吉は両足を折られ、萱の原に棄てられていました。それを見つけたふくろうたちは、松林の木の上で看病します。
若いふくろうたちは怒り、仕返しを考えます。家に火をつける、赤子の頭を突こうかと。
そこで、坊さんが諭します。
「それでは血で血を洗う」と。「こなたの胸が霽(は)れるときは、かなたの心は燃えるのぢゃ。いつかはまたもっと手ひどく仇を受けるぢゃ」。
坊さんの講釈の最中、二十六夜の月が静かに昇ってきます。すると月の尖ったへさきから紫の煙が出て、雲になります。その雲に乗って修身菩薩が迎えに現れ、穂吉の息は絶えます。 
 
この作品を書いたのは、1923年頃だとされますから、賢治27歳です。そのとき花巻農学校の教師でした。前年最愛の妹・としを亡くしています。この作品に、そうした思いが投影していると考えていいでしょう。
 
<賢治の生きていた時代の日本には、まだ人間が野生の生きものを保護したり、共に生きるという思想はなかった。>(国松氏)
この時代に「共生」をテーマにした童話群を書いていました。
 
賢治のエピソード
この話の中のふくろうたちの描写、子どものふくろうたちのかわいらしさ、おじいさんのユーモラスな様子はクスッと笑えます。

この描写につながるようなエピソードが残っています。
農学校の教え子だった照井謹二郞が、北上川の獅子鼻の松林へふくろうの雛を捕まえに行った話しをしています。
その話を聴いた賢治はおもしろがり、「一度行ってみたい」と行ったそうです。
夏の初め、賢治は照井の家を訪ね、松林に連れて行ってもらいます。
その後、賢治は、五,六回、獅子鼻に夜に行って、ふくろうの観察をしたそうです。
その話の中で「ふくろうの童話を書きましたから、読んであげましょう」と語ったという記録が残ります。
 
ふくろうの鳴き声
森があれば、賢治はどんどん入って行ったと言います。夜でもかまわずに。
そちらの木の上の方からふくろうの鳴き声がしてくるので、驚いていると、賢治がするすると木から下りてきたと言います。賢治は泣きまねが上手だったそうです。
 
<聞きなし>とは
鳥の鳴き声を聴いて、何か意味のあることばに置き換えることです。
たとえば「ゴロスケ ホッホ」、「グルスク ホーホー」⇒「五郎助奉公」、「ぼろ着て奉公」などと聞くことです。
 
これが賢治になると次のような<聞きなし>です。
<かしわばやしの夜>より
「のろづきおほん、のろづきおほん、
 おほん、おほん、
 ごぎぎのごぎのおほん、
 おほん、おほん」
<貝の日>より
「たった六日だったな。 ホッホ
 たった六日だったな。ホッホ。」
<詩 ローマンス>より
そらがまるっきりばらいろで
そこに1本若いりんごの木が立っている
   Kerolg Kol.  おやふくろうがないてるぞ
山の上から電灯から
市街の寒天質な照明まで
   Kerolg Kol.  わるいでしょうか
 黒いマントの中に二人は
 青い暈環を感じ
少年の唇はセルリーの香
少女の頬はつめくさの花
   Kerolg Kol.  ぼくは永久に
              あなたへ忠節をちかいます
 
<Kerolg Kol.>も賢治の聴き取ったふくろうの鳴き声。
 

 

      グリーンハートグリーンハーツイエローハートイエローハーツブルーハートブルーハーツ

 
イーハトーブの旅からの心の回復がすぐにはできません。
だけれど、明日は白梅、明後日は都留へ行きます。金曜は「教育」編集会議。土曜日は「学びをつくる会」。
早く回復しなくちゃね。