ひらがな学習は「文字が読めて、書ければいい」だけにとじこめないというのが、1年生担任を続けているうちに到達したぼくの結論です。「ことばを文字にとじこめない」ということばあそびの実践がそこから生れました。
 
        ピンクハートハートピンクハートハートピンクハートハートピンクハート
 
「あいうえお」は日本語学習の中でもとりわけ大事な文字です。「ボイン」なんて子どもたちの前で言うと、ニヤッとする子どももいたりして…。いないか。(オジサン、考えすぎデス)
漢字で書いておきましょう。
 
「あいうえおは 
 母音(ぼいん)といって
 日本のことばの母さんです」(あらいたけこ『あいうえお』より)
 
その「あいうえお」を使って遊びましょう。
 
 

 

あいうえお語のなぞ 

 

 「おえあいうお」

 

 黒板にこう書き、「これはクラスの子の名前です。さて誰でしょうか」と尋ねました。子どもたち、みんな「?」です。そこでヒントを出します。

 

 〈ヒント①〉男の子

 

 〈ヒント②〉6文字

 

 子どもたちは男の子の名前をかたっぱしから言いました。もちろん「そえだりくと」という正解も出たものの、なぜそうなるのか、釈然としない表情です。

 

 そ~お、え~え、だ~あ、り~い、く~う、と~お。

 

 それぞれの文字を長くのばして発音すると母音〔ぼいん〕があらわれます。

 

 説明を続けました。

 

 「この母音だけで話すのは〈あいうえお語〉とよびます。では、<ああああい>、これは誰かな?」

 

 子どもたちは「5文字の子か」「や~あ、ま~あ、だ~あ、やまだなみちゃんだ!」とすぐに気づきました。

 

   バナナ      バナナ      バナナ

 

 〈あいうえお語〉というのは、日本語の特徴である母音を楽しく学ぶためにぼくが名づけたものです。これによって母音と子音を意識づけ、発音もはっきりしてきます。

 

 この時間、教室では8人の大学生が授業参観をしていました。交流のある大学の先生がゼミ生を連れて来ていたからです。

 

 ここでまた名前を書きました。

 

 「いおうああ◯い」

 

 子どもたちは首をひねるばかりで全くわからないようです。「男の子なの? 女の子?」「ヒント出してよ」の声があがりますが、ぼくはニヤニヤしているだけです。

 

 大学生の吉沢君がサッと手を挙げました。でも当てないでいると、子どもたちは吉沢君に「お兄さん、教えて」とつめよりました。困った吉沢君がつぶやきました。「よ~く見てごらん、目の前に…」「あっ! わかった! しもむらさんに、だ」。数人が同時に声をあげます。「なあんだ、子どもかと思っちゃった」

 

 このあと子どもたちはノートに自分の名前を〈あいうえお語〉で書きました。その名前を大学生のお兄さん、お姉さんがかわいい花まるで飾ってくれました。 

 

子どもたちと楽しく遊んだ思い出はずっとぼくの胸に残っています。

いま、ぼくは、大学の保育科の学生に対して「言語」という授業をしています。

学生たちは、子どもたちのことばについて学びます。

 

ここでも日本語における「母音」の意味について考えましたが、その際に「イケメン6人組」という教材ネタで遊びました。

そのときの大学での授業通信『らぶれたあ』より

 

まずは<あいうえお語>から。(母音を使ったことばあそび)

 

これはだあれ?イケメンです。わかるかな?

*「うあああい」(        )          

*「あああいえ◯お」(         )

*「うういおうあ」(        )

*「ああういえ◯あおう」(           )

*「あえういいおうあ」(         )

*「いおうああ◯い」(        )

 

  <①菅田将暉  ②山﨑賢人  ③福士蒼汰  ④坂口健太郎  ⑤竹内涼真

  じゃあ?⑥は誰でしょう?わっはっは!>

 

母音だけで示す「あいいえお語」で表した6人のイケメン探し。

学生のコメントから。

最初に体験した「あいうえお語」では、あいうえおだけをつかった音だけの状態で誰の名前かを当てるのはとても楽しかった。自分の名前をあいうえお語で書くと、とても面白くなります。(いあいああいあ)

 

問題に出した最後のイケメンの一人が誰か、笑っちゃいましたね。「いおうああ◯い」=「しもむらさんに」。どこがイケメンじゃい、なんていわずに。イケメンかどうかは主観ですから。

 

小学1年生でも、女子大学生でも「学びは遊び」です。

目の前の人たちとどう遊ぶか、デス。