「生活教育」誌のインタビューで語った2回目。
(1回目はここに)
⇒http://ameblo.jp/sanni1132/entry-12244365750.html
2月号なので、もうここでアップしてもいいでしょう。本誌の方にはカットもありますが。
~~霜村三二先生に聞く(2)~~
元埼玉県公立小学校の教員。都留文科大学等非常勤講師。現役時代は、『らぶれたあ』という学級通信を日刊発行し、現在はブログ『さんにゴリラのらぶれたあ』で教育実践や現場支援の声を発信している。
ことばを文字にとじこめない-2
Q:前号では、ことばの学びや詩・言葉を楽しむことを語っていただきました。今号では、具体的なやり方をお話しいただきます。
A:こちらから先に質問です。1年生のひらがなは、どう教えますか。
Q:「どう」と言われると…ノート形式・プリント形式のワークを使って、板書をしながら空書き→なぞり書き→見本を見て、丁寧に書かせます。
A:ひらがなを教える順番は、どうしていますか。
Q:教科書に出てくる順番通りにやるときもあります。ベテランの先生と組んだ時は、画数の少ない簡単な「つ」「く」「し」からやったこともあります。
A:私も以前はその順番でやっていました。かつては、その方法に意味があったと思っています。ですが、今の子どもたちに合っているのだろうかと感じるようになり、「日本語とは何か」を早い時期に学ぶのがよいと考え、<アイウエオ>の母音を先に学びます。ひらがなの習得にとじこめない学びでした。
Q:今の子どもの実態に合っていないということを、具体的にいうと。
A:以前は、「入学前には、自分の名前だけは読めるようにしてください。ひらがなは書ける必要はありません」と新入生説明会でお話ししていました。
Q:先日、そう話してきました。
A:けれど、実際入学してきた子で、ひらがなをこれまで書いていない子はいません。もちろん、家庭的な事情があったり、外国籍だったり障がいを抱えていたりする子の場合は違っていますが。幼稚園や保育園や家庭でほとんどの子はひらがなを読み・書きは経験済みです。漢字までやっている子もいます。状況は変わったのに、書くこと中心の小学校でのひらがな指導が変わっていない。目の前にいる子どもに合わせて、ことばの学びをつくる必要があります。
Q:私の学級の子どもたちは楽しく…なさそうでした。整った字形になるよう、赤ペンを入れて出し直しを何回もさせて…私も、赤ペンマシーンのような気持ちになってきてしまいました。
A:かつては「よく見て、たくさん練習をして文字を習得」というやり方をしていました。それは「指導」とも言えぬレベルでした。子どもにも、教師にも、“苦役”のような練習でした。それを脱け出て、学びの楽しさを体感するためにヒントにしたのは、漢字の学習でした。表音文字でしかないひらがなに、漢字のようなイメージを使った文字遊びをたっぷり考えました。「あいうえお」の遊びだけでも百種類は考えだしました。ことば遊び、たくさんの詩を教材化しました。その全体は『さんにゴリラらぶれたあ』ブログに紹介したので参照してください。ここではそのいくつかだけ。
「スプーンたまご」というイメージでの遊びです。百円ショップの安いスプーンと生卵を用意します。「ワタシはチョーノーリョクがあります。このスプーンを曲げて見せましょう。エイッ!ウームッ」とスプーンを曲げ(拍手がおこったりブーイングが起こったり)、そこに卵を乗っけます。
これで「スプーンたまご」の出来上がりです。ここの役者ぶりが面白い。「このスプーンにはピンポン玉やおにぎり、サイコロなどをのせてはいけません」と語ります。
そのあとプリントで「スプーンたまご」と唱えながら練習します。そうすると、みんながきれいにこの部分を書けるようになるのです。
Q:子どもたちに「視覚」で入っているのでしょうか。
A:イメージトレーニングですね。難しい字が楽に学べます。イメージが持てると「な」「ぬ」「は」「ほ」「ま」「よ」「る」「ぬ」「ね」も「スプーンたまご」があるから楽に書けるのです。、
Q:どれも子どもたちが苦労する字ですね。何回も「見本の通りによく見て書きましょう」とプリントを返して「まただー」「やだー」と言われていました。
A:「よく見て書きましょう」と言われても、子どもたちは何を見ればいいのか分からないのです。「あ」にはアンパンをイメージする物語。「い」のときは四角枠に斜めにいちごの絵をかきます。その外周をなぞりながら「いちごだよっ、いちご!」と言いながら書きます(「いちごだよっ」で一画目をはねて、「いちご!」で二画目を止める)。そうすると、丸みを帯びた「い」が書けます。「ふ」のときは福笑いのイメージです。「ふくわらい」と言いながら書くと、ふっくらした「ふ」が書けます。
「す」は最初にことば遊びから入ります。「らっしゃいらっしゃい!さんちゃんすしだよ」と寿司屋さんになります。お寿司を握る要領で、右手で二本指を握り、左手の手のひらに置きます。「トロ イカ エビ タコ もひとつ おまけに かっぱまき ギュッ!」のうた遊びです。「ト」で自分、「ロ」で相手、というように2拍子で指の“お寿司”を交互に置いていきます。最後の「ギュッ!」で相手の“お寿司”を握れたらOKです。二人でも一重円でもできる遊びです。そのあと「す」のイメージをとらえ、定着をねらいます。①普通に横棒一本、②2の部屋からまっすぐ下に縦棒ではらう。③ ②に丸をつけ足します。こうすると、どの子も形のよい「す」が書けます。でも子どもたちは「なんか反則だからヤダ!」と言います。そこで、「すしすしまぁきずし」と唱えながら、大きく腕を振りながら空がきすると、イメージを残したまま書くことができます。
Q:「イメージ」があると、楽しく書けるんですね。こういうことを、どこかで教わったのですか。
A:『ひらがな遊び』という伊東信夫さんの本は参考にしました。ただ、まねから始めて、次第にオリジナルにしていきました。多様な遊びであること・子どもをお客さんにしない参加・子どもに先を読まれない面白さをポイントに言葉遊びを作ります。「何かないかな」と思っているとアイデアは突然降りてきます。アイデアを思いつかないということは、切実さがないことではないか、それを嘆くべきだと思います。
Q:最後に、霜村先生の教師としての「こだわり」って何ですか。
A:自分の言葉で自分の思いを綴ること面白がる精神です。周りの人に学びの事実・教室の事実で語りたいと思っています。よく分かっていないことを具体的に語ることはとても難しい。抽象的に語ればごまかすことができます。具体的に語ると、自分の浅さが分かってしまいます。でも、それを努力することから居心地のいい教室イメージが共有できます。学級通信『らぶれたあ』がその実践になっていました。
何でも(子どもも人も教材も)面白がる、そして、どうしたら面白くなるかな、と考える。自分は面白くても、他人からはそうでないこともある。「綴る」ということは考えることです。
ありがとうございました。1年生のひらがなの“苦役”からの脱出の必要性がよく分かりました。他の場面でも単なる“苦役”を強いているところを見つけ、悩みながらも新しい楽しいアイデアがひらめくようにしたいと思います。









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(№2092の記事)