谷川俊太郎さんが『詩ってなんだろう』のなかで、「いみのあそびの詩」として紹介していたのは、自身の詩「いるか」と、この川崎洋さんの「とる」でした。
川崎さんは、1953年の詩誌「櫂」を茨木のり子さんと創刊し、翌年谷川さんや大岡信さんなども加わって以来の誌の仲間でした。
ここでは謎解きのような展開で読みます。連の頭に便宜てきに番号を振っておきます。
とる 川崎洋
①はっけよい
( )とる
②こんにちは
( )とる
③てんどんの
( )とる
④セーターの
( )とる
⑤のらねこの
( )とる
⑥かんごふ(し)さん
( )とる
⑦おはなみの
( )とる
⑧はんにんの
( )とる
⑨コーラスの
( )とる
⑩たんじょうび
( )とる
⑪リリリリリ
( )とる
ことばのリズムを感じよう
黒板に題名の「とる」を書きます。「川崎洋」という作者名も。
子どもたちはノートに視写をします。
「“とる”ってなにをとるんだ?」というつぶやきが聞こえます。
各連の1行を書いては、こどもたちとやりとりします。
「はっけよい、すもうだね」という声。ぼくが行司になって(子どもたちは「審判」といいました)、教室のコの字の机の空いたところで実際にすもうをやってもらいました。ミナモくんとケイタくんの取り組みです。
「ミナモ、がんばれ~!」「ケイタ、がんばれ~!」と周りの声援がすごい。
「はっけよい、はっけよい」
勝負の結果は、足取りでケイタくんの勝ち。
「やせの川~」と勝ち名乗りを受けました。あはは。
「すもうとるんだ!」
① はっけよい
すもうとる
「1連を見て気づくことはないかな?」と尋ねます。
ミユキちゃん「題の“とる”がある」
チサトちゃん「どっちも5文字(5音)になっている」
この5音という気づきは2連以降の展開のヒントになります。
②「こんにちは」ーー「あいさつとる」という子がいましたが、リズムが悪い。紳士のご挨拶は「ぼうしとる」でしょう。
③「もしもし、信濃やさん?天丼、3つ届けてくれます?」「ピザやさん?至急配達お願いします!」 “でまえ”です、「とる」のは。
④「セーターのごみだよ」と。「ごみ とる」じゃねえ。「ごみをとる」だとまだいいけど。。
セーターにつくのは「けだま」でしょう。
⑤「のらねこの」ーー「のみだ!」 「を」をいれて、「のみをとる」
⑥「かんごしさん」--「いのちとる!」とコタローくん。おいおい。「じゃあ、くすりとる、かな?」
「入院したりすると、看護師さんが回ってきて、手を取ってやってくれるんだ。手首のところに指先を当てて、腕時計をみながら・・・」「みゃくをとる、だ」
「みゃくの“みゃ”は1音です。」
「みんなもやってごらん」、「あっ、どくんどくんしてるよ」
「センセイ、ぼく、どうやってもみゃくが無い」
「あら、君はゾンビだね」
「センセイ、ここは5-5になってないよ。6-5だよ」
「そうだねえ。“かんごしが”としたら5音になるけれど、“かんごしさん”っていっちゃうよね。尊敬してるんだろうね。少しはみ出てもいいのかも。ケイタのお母さん、看護師だよね?」
「うん、すげー強くて尊敬してる」
これには一同「????」です。
⑦「おはなみの」ーー「せきをとる」「ばしょをとる」。川崎さんは「ばしょ」です。
⑧「はんにんの」ーー「しもんとる」
⑨「コーラスの」ーーぼくは突然自分の髪の毛をぐしゃぐしゃにして「小澤征爾」になります。
「さあみんなで歌おう!」めちゃくちゃにタクトを振れば、「しきをとる」です。
⑩「たんじょうび」ーー「みんなは嬉しいだろうけれど、大人になればとりたくなくなります。」「ちなみに今度の誕生日でサンニセンセイは32歳です。」こどもたちからの一斉のブーイング。「うそつき~!!」
「としをとる」
⑪「リリリリリ」--着信音は様々です。「でんわとる」
子どもとのやりとりがオモシロくて、止められません。どの子も参加して、結果として、ことばのセンスが身につく(?)授業です。
つまらなく展開してはなりませんぞ。教師の遊び心が問われます。
(No.1720の記事)