Ⅰ≪視写しながら応答する読み≫
板書します。題名と作者名です。子どもたちにはノートに視写してもらいます。
板書という「古典的な」方法、ぼくはだいじにしたいと思っていました。シンプルだけれど学びにとっては「教材との対話」という意味を持ちます。

  みんみん
     谷川俊太郎


「みんみん」と書き写しながら、子どもたちは「セミだね」とつぶやいています。
川」という名前もゆっくりぼくが書くので、「ハ」「合」などと言って写せます。
「にんべんに、ムを書いて、ルをはね、クに、右ばらい」、これで「」です。
「てん(﹅)、ヨに、たてぼうはね、とめ、3みたいに、たてぼう」、これで「」。

ここから一行ずつ板書しながらやり取り(対話)していきます。

みんみん なくのは ○み
「みんみんなくのはな~んだ」「そりゃあ、せみ以外にないでしょ」

そうっと ちかづく ○み
「①はせみなんだから、そうっと、近づいて……手にもつのは」「……あみだ!」

「①と②まで写して気づくことはないかな」
*「①と②はお話のようにつながっているよ」
*「4ー4ー2音 だ。」
*「『○み』となっている」

「じゃあ続けてみよう」

はやしの むこうに ○み
脚韻(行の最後を同じ韻にする)である「○」から考えます。
情景・様子をイメージしてみましょう。
せみの泣いているのは、林。あみを持ってるほく。向うに見えるのは・・・。
ごみだ!」
オイオイです。
うみだよ」です。

きらきら かがやく ○み
見ています、うみを。輝いています。「なみだ!」「きれい」

これで一連は全て。読んでみます。
3・2「みんみん なくのは」 子ども「せみ」 応答しながら音読です。

子どもたちのみで。リズムを打ちます。
「みんみん(1・2・3・4) なくのは(1・2・3・4) せみ(1・2)(休み1・2)」
「そうっと(1・2・3・4) ちかづく
(1・2・3・4) あみ(1・2・)(休み1・2)」
「はやしの(1・2・3・4) むこうに(1・2・3・4) うみ
(1・2・)(休み1・2)」
「きらきら
(1・2・3・4) かがやく(1・2・3・4) なみ(1・2・)(休み1・2)

「二連だよ」
よびごえ きこえる ○み
書き写し終えたら、とつじょ「お~い!」と大声をかけます。
「びっくりしたぁ」「みみがびりびりしてる」
「あっ、みみだ!」

こういうあそびは楽しいなあ。

いちばん なかよし ○み
「三二センセイ、ヒントちょうだいよ」
「イヤだね、きみには教えないよ~だ」

「イジワル!」「??」「あっ、きみだよ」

「この行は、一番のなかよしの子を指さして読んでみよう。サンはい。」
「いちばん なかよし きみ!
メリハリの利いた音読になります。

とこやに いったね ○み
「シンくん、とこやに行ったでしょう?男前になってるよ」
「うん、かみ長かったから切ってもらったんだ」「かみだ」

まっかに みのった ○み
「真っ赤に実るものってなにかなあ」
「りんご?」「ミニトマトじゃない?」「サクランボもある」「かき」
「ざんねんでした。みんなちがいます。サクランボよりちょっと小さくて、少し細長い、オレンジ色よりも濃いいろの木になるものがあります。ぼくは子どものころ食べたよ。ちょっとシブい感じもあったなあ。」
「ふ~ん。」
「そうだ、同じ名前のお菓子がある。ぷにゅぷにゅしてあまいけど」
「ぐみでしょ。壱岐(いき)のおばあちゃんちで食べたことがある」
「ぼく、奄美のおじいちゃんちでたべたよ」

こうして視写と応答で読みました。

Ⅱ≪イメージを深める≫
『みんみん』の詩のイメージを深めたいと思います。そこで用意したのは3つの「問い」です。
①「どんな音がきこえる?」
②「色はどうですか?」
③「季節は?場所は?」


ことばを手がかりにタンテイです。

①「どんな音がきこえていますか」
*せみの鳴き声。みんみん。
*なみの音
*風の音
*林の木の揺れる音
*おーいと呼ぶ声、名前を呼ぶ声
(*犬の鳴き声も聞こえるという子も。犬を連れてきたんだというイメージ)

②「どんな色が見えますか」
*せみの茶色
*あみは白(という子がほとんど)
*木の幹、枝の色
*葉のいろはみどり
*青いそら、白い雲
*海の青、なみの白、銀色
*あかい(朱い)ぐみの実

③「場所はどこ?季節はいつ?」
*海の近くの林
*親友とせみ取りに来ている、
*夏休み
*海がきらきらするの太陽の光が強いからだ、夏だ
*夏、海、せみ、暑い感じのことばがつながっている
*ぐみを食べたのは夏休みだった

Ⅲ≪谷川俊太郎さんはすごい≫
「○み」ということば、ほかにもいろいろ考えられます。
たとえば「いみ」「えみ」「じみ」「すみ」「ふみ」「つみ」「とみ」「たみ」「のみ」「くみ」「もみ」……。
谷川さんも、これらのことばをノートに書き出してみたのかなあ。
その中から8つの「○み」を選び出し、決め、イメージをつくりながら物語のあることばあそびに仕上げたのでしょう。
いつもながら、ホントにすごい人です。ただのことばあそびにとどめず、イメージにストーリイを付与するのだから。

Ⅳ≪最後は暗唱≫
1回目。読みながら少しずつ黒板消しで消していきます。読み終えた時、頭の文字だけが残ります。

み―――
   谷――――
み――― な――― せ―
そ――― ち――― あ―
は—―― む――― う―
き――― かー―― な―

よ――― き――― みー 
い――― な――― きー
と――― い――― かー
ま――― み――― ぐー


2回目。次に読みながら、この頭の字も消します。黒板にはもう文字はいっさいありません。

3回目。黒板には文字が無くても、子どもたちの目の奥にはイメージが残ります。だから黒板を見つめといると。文字が浮かび上がっています。音読には語り合った授業でのイメージもいきています。

わずか3回で暗唱です。黒板を消す必要もありません。ラクチン。授業もオシマイです。
(何年生でもできます。光村の2年生の教科書に載るようになりました。この授業は、掲載される前に考えたものの実際。教科書に載った途端、つまらない授業になってはいないかと、憂えます。工夫して授業するから楽しかったんだけどね)

(№1361の記事)